第18話 想い出の中の記憶


彼と別れてから

二度と会うこともなく

幾つも季節を繰り返し

長い月日が過ぎていった

いつだったか

風の噂で地元に帰ってると

聞いたことがあったけれど

彼女と一緒に帰ってきたのか

結婚したのか

それすら分からない


私の記憶の中の彼は

別れた時のまま

二人で写した写真も

メールアドレスも電話番号も

全て削除してしまったから

長い月日に

どんな顔だったのか

思い出せない

シルエットは

ぼんやりと浮かぶのだけど

目の大きな人だったって

覚えているのだけど


だけど

彼との恋は

私にとってただひとつの

大恋愛だった

あんなに直向きに恋をして

苦しんで

一人の男性を心から愛したこと

思いやる気持ち

気遣う気持ち

そこにいてくれるだけで

支えられて

癒されること

全て彼が教えてくれた

私の中であの四年という月日は

一番幸せで大切な宝物

誰かを愛して

誰かに愛される喜びを

私は知ったから

その想いを抱きしめている


あの時のような

直向きで一心な恋には

出会えないでいるけれど

静かに

優しく

人を愛せてるのは

それだけ

私がずる賢い大人になったからかな


あの待ち合わせた喫茶店も

最初に行った映画館も

今は無くなってしまって

街並みも変わったけれど

記憶の中の二人は

あの時のまま

あの若さの時のまま


彼に出会えて良かった

愛して良かった

私の人生の中に

素敵な想い出の記憶を

残すことが出来て良かった


心に

想い出をありがとうと

呟いた





        おわり

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想い出 千恵花 @caorinhana

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