アオリング~煽り捜査官アオ

スヒロン

第1話 煽り捜査官のアオ

『・・・ブッブブー、今回も俺様の爆弾は見抜けませんでしたあ★ ガッハハハハ! じゃあ、抽選でドンドコドンドコしちゃって、まーた無能警察のせいで、一個爆破しちゃおっかなあ』


 画面いっぱいに、クマに棘の刺さったぬいぐるみが、手をくねくねと動かしてリモコンボタンに指を近づけている。


「待ってくれ、ボマーズ!」

 真中春人は、叫んでいた。

 隣にいる交渉人、田井中蘭も涙ぐんでいる。


『ざーねん、一発ボーム』


 どどん、と振動音があった。


 警視庁の夜景の中で、遠くの方でビルの一角から爆発が生じている。


「被害甚大! おい、真中、一体どうする気なんだね!? そっちの交渉人とやらも、ボマーズにやられたい放題じゃないか!?」


 警視総監はご立腹だ。


 愉快犯の”ボマーズ”が、予告状と同時に都内のビルを爆破してから三日。


『一日一個ずつ、爆破していくよーん。場所が分かったヤツに関しては解除するけど、外れたら無作為に爆破していくからねーん』


 VTUBERのようなクマのぬいぐるみは、くねくねと嫌らしく動き回る。


「申し訳ありません・・・ヤツはIPアドレスを一秒ごとに変えており、逆探知もできないので・・・」

 真中は苦渋の声を漏らした。


「そんな言い訳が利くか!? 交渉人として君らを招いているんだぞ!?」


「・・・申し訳、ありません」

 交渉人の欄も、やつれきった様子で髪を整えている。


「ここから先は、私も命を賭ける覚悟です・・・!」

「欄さん・・・」


「・・・いいや、この先は君らでは難しい!」

 警視総監はそう言った。


「・・・公安七課からの交渉人が来るそうだ」

 警視総監がそう言うと、


「公安七課!? それは、最悪の手です!」

 欄は叫んでいた。

「何をバカな・・・公安に七課なんて、あるはずがない・・・」

「いいえ、警察庁公安第七課・・・通称・・・」


 エレベーターが開いた。


「ちーん。誰も出迎えがなくて、草ア! ボンボン、何発も爆破されてるお間抜け警官どもに草ア!」

 

 パンク風に黒髪をあちこちに伸ばし、歯や目にいくつもピアスを開けている少女が歩いてきた。

 欄は呻くように、

「サイバー捜査官の・・・煽り坂アオ! 公安の切り札・・・煽られた相手は、絶対に尻尾を踏みつけられるという・・・」


「なんだ、君は!? 入ってこられたら困る・・・!」

 真中は、づかづかと入ってくるアオの肩に手をかけた。

 どう見ても、まだ女子高生か女子中学生くらいの年齢だ。間違って入ってきてしまったのか?


「隙あらば、JKにタッチしようとしてて受けるウww」

 アオはにやりと笑った。

 からかうようにしなを作って、自分の体を抱きしめる。


「ドーテイっぽい真中警部、JKの上目使いならイチコロ?」

「な、何をバカな・・・」

「けど、あたし、オジサン趣味じゃないしい。真中警部のゴン太イチモツ、狙ってる欄さんから恨まれるしい」

「わ、私はそんなことしません!」

 欄は怒っていた。

「婦警のイチオツ、私のパイオツ、煮えたオムレツ、たくさん食べたいしいww」

 アオは、韻を踏みながらつかつかと中央まで入ってきた。


「ま、ともかく、ここの捜査権はあたしに委ねられた。ほい、サッチョウからの委任状」

 アオは「警察庁より、これよりボマーズ事件の全権を、煽り坂アオに委ねる」と書かれた委任状を見せた。


「バカな・・・どうかしているぞ!?」

 真中は呻いていた。


「さあ、言うこと聞かないと、クビにするよ~? さて、ボマーズとまず第一声をかわそうかな」


 早速、アオは手動で

 アオは、画面いっぱいに映っているボマーズのVーTUBERの中に、いきなり自分のアイコンを放り込んだ。すぐにチャットを始めている。


ボマーズ『なんだあ? 可愛い子じゃねえか。君が俺の相手してくれるのかい? 今日の仕事はもう済んだのに』


アオ『はあーい、新人婦警VーTUBERのアオでえす。みなさん、こんにーちはー!』


 アオのアイコンは、耳に手をかざす。


アオ『あれあれれ? こんにーちはー! せーのっ』


ボマーズ『ククク、こいつはいいぜ。無能な警官に飽きてた所だ』


アオ『無能なんて、ほんとの事言っちゃ可哀そうでーすw』


(一体、何を始めようっていうんだ・・・?)


アオ『けど、ボマーズさん。。ちょっとヒントが無さすぎてこれじゃあ、警察もぴえんです。せめて、ボマーズさんの住所と氏名だけでも教えてくれれば、助かります』


ボマーズ「ククク、オモシレエなああんた。だが、言うかよ。もうちっとマシな・・・」


アオ『ええー? 作戦大失敗!? ぴえーん。じゃあじゃあ、ボマーズさんの犯行動機はあ? それくらいあるんでしょお?」


ボマーズ『・・・・』


アオ『ちなみに、私が府警になった理由はあ・・・隣にいる真中警部みたいな、高収入で高身長のオトコと結婚するためでえす! キャハハハ!』


ボマーズ『・・・まあ、いいだろう。俺の狙いはな・・・・俺の本当の目的‥‥』


(そうだ、ここまで動機らしい動機もない、”ボマーズ”の動機は・・・?)


 真中は拳を握りしめていた。

 しかし、アオのアイコンは急に背中を向けて、


アオ『やっぱりいいや! いい年して子供部屋おじさんの愚痴なんか、聞きたくないし! あーあ、飽きちゃったあ。寝よっかな』


 アオはごろんと転がった。

「馬鹿な・・・!? 一体、何を考えてるんだ!?」

真中は呆然としていた。

(怒らせて、情報を聞き出す作戦じゃないのか?)


ボマーズ『てめえ・・・いい加減にしろよ、この女ア! さっきからどういうつもりだ!?」


アオ『ええー!? 自分に興味持たれてると思っちゃった?! ウッソ、マージでえ!? こーんな年下少女が、こーんな”コドオジ”に興味あるワケねえだろw 

大草原wwww 大草原wwww 天まで届け、大草原wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

キャーハハハハハwwwwwwww 

どーせ、しなびた中年の妄想を聞かされるだけなんだからサアwwww ハイ、大草原wwwwwwwwwwwww」


ボマーズ『てめえ、次言ったら爆破だぞ!? このアマあ・・・!」


アオ「あれあれ?w 『一日一個の爆破』って、あんだけ脅してなかったっけえ?w 草生やしすぎで、牛さんになっちゃいますうw

モウーモウーで、牛牛牛wwww

草草草wwwwwwwwww

みんなに公開しちゃいましょうか?w 言ったことも守れない

クソみてえな予告犯がいるぞおおおwww ってねw

おめーに鶏並の脳みそを期待した、あたしがバカだったよw

この低身長、低能、低収入の3Tのポンコツがよw

ワロス、受けるww」


ボマーズ「・・・クソが。できねえとでも思ってるのか!?」


アオ『ハイ、できませんねえ。やれるもんなら、やってみろチンカス芸人w』

 

「いい加減にしろ! 情報を聞き出すんじゃないのか!?」

真中は怒鳴っていた。


「ハア? ウゼエんだよ。情報オ? こんなカス犯人の動機なんぞ、知れてるだろうが」

「な・・・・」

「あたしは、ただ煽ってるだけなんだよ。邪魔すると、クビだぞ?」


 アオはさらに書き込む。


アオ『ま、お前のいう爆弾をニ十個も仕掛けたってのも、疑わしいけどナ。

そんなに仕掛けたんなら、爆破してみろヨオ?

それと、作品作ってばっかでなく、たまには★でもつけたらどうだい、あんた』

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アオリング~煽り捜査官アオ スヒロン @yaheikun333

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ