記録情報No.7
「来てくれたか、〈
一体、それはいつだったのか。
誰にも、世界にも気づかれることなく、【
整った顔立ちではあるものの、先程まで戦っていた少女や女性と比べれば、やはり少し見劣りする。それに、派手さのない私服とその上に身に付ける水色のエプロンが、余計に女性の華を潜めさせていた。
「やめてよ、私はしがない保育士だよ? その名前で私を呼ぶの、【
「其方の前に【
「〈
「単体で戦えたのはな。単独じゃなければ、【
「じゃあ、今度は私が闇落ちしないように、ちゃんと見張っててね?」
「ようやく千年以上〈
少々昔話に興じ過ぎたと思ったか、その女性は、はっ、と息を吐いて話題を断ち切った。それから、周りに広がる惨状を見渡す。先程の【
「前回の襲撃は二週間前だったのにね。なんだか、どんどん増えていくね、ここ数年」
「今日はとうとう【
「しかも、下手したら、私の言能をすり抜けて、ね」
「そうだ。それも、其方に気付かれずだ。相当強力な言能の持ち主だろう。〈違言〉の可能性もある」
「私がいくら探しても、見つからないからね~…。私にだけピンポイントで言能を叶えてるのかも」
「あり得るな。だが、目的が見えない。こんな無駄なことをする理由が……」
「まぁ、警戒して、探索する以外に出来ることないでしょ。変に悩まない方が良いよ」
「…そうか。其方が言うなら、そうなのかもな」
「ちょっとー、そんな大層なことじゃないって!」
その女性は、ふふっと優しい笑顔を、とても当たり前に浮かべた。子供が見れば泣いて逃げそうな【
それから女性は左手を右肩に当てながらぐるぐると右手を回すと、両手で頬を叩いて気合を入れた。
「よっしゃ! じゃあ、始めよっか」
「よろしく頼む」
「任せて~。流石にこんな作業、【
「不甲斐ないな」
「いーのいーの! 私が表舞台に出ないように色々図ってもらってるのに比べたら、こんなの小っちゃいお返しだよ」
今度はにっこりと、無邪気で明るい笑顔で、その女性は言う。
「たかだか
女性の明るい声が、乾いた風の駆け抜ける大通りに響き渡った。
そして彼女は、
「【
抉れたアスファルトに土が戻り、割れた窓に破片が戻り、大通りがみるみるうちに回復していく。それが終わりに差し掛かった時、女性は次の言能を叶えた。
「【
衝撃波で跡形もなく吹き飛ばされた草木が路上に生え始め、死に絶えていた
「【
【
「【
人々の記憶は無論、世界の記憶からも、この出来事を忘れさせる。これで、如何なる言能者も、この記憶を辿ることは出来ない。
もう大通りには、その二人の姿さえもなかった。
「言能」 〜全世界データベース オールパーパス・インターフェース〜 萩原稀有 @4-42_48
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