『400年前、地上で大きな戦争がありました。星はボロボロになり、すべての環境が汚染されました。地上での生存は不可能になり、生き残った人々は地下のシェルターに引き篭もりました。
多くの地域の通信が途絶えていく中、東京だけは200年間も生活できました。その間に、また地上で生活するために、研究者達がたくさん頑張りました。
今我々がここで生活できるのは、先人の尽力の結果なのです。』
これが、この地球の歴史とされているものです。
少女⋯⋯一葉もそう学習しました。多くのクラスメイトと一緒に。
しかし、とあるきっかけがあり、彼女はみんなから仲間として外されます。彼女の首元にある焼印は、彼女が『実験体』であることをしめすもの。
東京に『居場所』をなくした彼女はやがて、『東京の外』に逃げます。
そこで、キツイ態度の青年⋯⋯終希と出会ったことをきっかけに、『もう一つの歴史』の存在を知ります。
東京のそれとは違うこの歴史が示すものは、東京が背負う闇の一幕でした。
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こちらのSF作品は素敵だと思う点がいくつもあります。
繊細で多彩な表現の文体が織りなす雰囲気の魅力
地球の命を壊す“灰”を巡る謎
青年が持つ研究施設関係者への憎悪の描写
少女が背負う命の数々と持っている願い
開示されていく隠蔽や嘘
そして明かされる『真実』の衝撃
ぜひ、アナタの目で確かめてください。
四百年前に大きな戦争があり、一度全てが滅びた世界。
荒れ果てた大地を捨て、巨大なシェルターに引きこもった人類でしたが、今は再び地上で復興を果たした「東京」で平和に暮らしています。
主人公、一葉もその一人でした。
小学校の先生からみんなに、自分が「壁の内側から来たこと」を暴露されるまでは。
退廃的な雰囲気と登場人物たちの綿密な心理描写、隠された歴史に「東京」に残る様々な謎。
作り込みが丁寧で世界観にどっぷり浸かることができます。
主人公一葉や彼女が東京の外で出会った青年終希。彼女たちの胸に抱えた想いや過去は、切ないやら苦しいやら腹立たしいやら。
特に外の世界で生きてきた終希さんの過去は……必読です!
また、終希と一葉の利害が一致しているようで異なる「目的」が、今後の物語にどう作用していくのか楽しみです。
彼女たちは袂を別つのか、それとも分かり合えるのか。
現在四章を拝読中ですが、色々な意味で気になる登場人物も増えて益々目が離せません!
ポストアポカリプスの雰囲気を存分に味わいたい方、重厚でダークな世界観をお求めの方におすすめです。