お爺さんとお婆さん大晦日の風景~緑のたぬき~

冬樹海斗

大晦日

 「婆さんや年越しの準備は出来たかね?」

お爺さんの声が聞こえます。


 そう、今日は大晦日です。

息子達は独り立ちし、今はお爺さんとの二人暮らし。


 「はいはい、お湯の用意は出来てますよお爺さん」こたつの上に2人分の緑のたぬきが用意されてます。


 じゅわぁぁぁぁ…

 お爺さんが夫々のカップ麺にお湯を注ぎました。

 

 「よっこらしょ…」

そう言いお爺さんはこたつに足を入れました。

「なんとか大掃除が今年中に終わって良かったな」「えぇそうですねお爺さん。お爺さんが換気扇を掃除してくれて助かりましたよ」

「へっ…そんなもん屁でもねぇや」


 話している内にぴぴぴぴっと2分30秒でセットしておいたアラームが鳴り響きます。

ぺりぺりっと蓋を剥がし

 

 「やっぱ少し硬めが良いやね」

「そうですね、お爺さん蕎麦は硬めが美味しいですからね」

 

 そう言い二人は後乗せ天ぷらと七味を入れてずずずっとスープを啜ります

 

 「はぁ…やっぱ寒い日には温かいスープが染み入らぁな」

 「ほっとしますよねぇお爺さん」

 

 ざくっもぐもぐ…ずるっずる…ずずずずぅ…


 「ふぅ~やっぱりこのさっくりとした天ぷらが小気味よい食感だわなぁ」

「えぇえぇ、後乗せで入れるのでふやけ過ぎず天ぷらの食感が楽しめますねぇ」

「こうして婆さんと2人で大晦日を過ごすのも後どんくらいかねぇ……」

「ふふふっ嫌ですねぇお爺さん。まだまだこれから何年もありますよ」

「ふっそうだと良いわなぁ」


 2人はそう言いまた蕎麦を啜ります。

 

 ずるっずるっずずずずずっ…はぁ

 

 「昔は俺が蕎麦を打って、婆さんに天ぷらを揚げてもらっていたが、お互い無理が効かなくなってきたが、どうしてどうしてこうして楽に美味いものが食えて便利になったもんだな」

「そうですねぇ、お爺さんの打ったお蕎麦も好きでしたけれど、こうして互いにゆっくりとした時間を過ごしながら食べるお蕎麦も私は好きですよ。昔はお爺さん作るのに夢中であまり話してくれませんでしたから」

「そっ…そりゃぁおめぇ仕方ねぇだろう。蕎麦打つときは真剣勝負なんだ、ぺちゃくちゃと喋ってちゃあ蕎麦が不味くならぁ」

「ふふふっそう照れなくて良いじゃぁありませんか」


 ゴーンゴーン……

遠くから除夜の鐘の音が聞こえます。

「もう今年も後僅かか…婆さん今年は疲れ様だったな」

「えぇもう少しで新年ですね。今年もお疲れさまでしたお爺さん」


 そう2人は言って夜が更けてゆきます。

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お爺さんとお婆さん大晦日の風景~緑のたぬき~ 冬樹海斗 @ponta_konnkonn31

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