第5話 事前情報の提示
西暦2021年12月26日00時30分。
仮想世界EWO2の始まりの街『ライデン』、ギルド中央広場。
エナジードリンクをキメ込んで、Hとの理不尽すぎるゲームに挑む事となったWとサキ。
時間は深夜、人混みも嘘のように無くなっていた。当たり前だ、夜なのだから普通の人は就寝している。もしくは、外国の時差が発生してる人か。そもそも体内時間が狂っている人しか居ないわけだが……。
「しかし、順応性が高いフレンドが居てもらって助かったぜ……」
「何いってんの、これからでしょ? 何せ〈クリア者ゼロのゲーム〉なんだから。下手を打てば永遠に終わらないわよこのゲーム、私は舐めてない」
「ソレは俺も同じさ、……絶対に勝つぞこのゲーム」
とりあえず、夕方の5時。17時からガチ眠をキメ込んだので〈寝落ちをする〉という愚行だけは2人とも避けられそうだ。これで0時から朝の7時くらいまではフル活動出来るだろう。
「7時間でケリをつける……!」
「あぁ、俺だってそのつもりだ!」
とは言えさて、こんな誰も人が居ない状況でどうやって情報を得ればいいのか……。
まだ、〈ギルド中央広場〉なので安全圏に居る2人は。バトル可能エリアの手前まで来ていた。
「サキ今さらで悪いがお前のゲームのスペックは……」
と、そこへ現れたのがHだった。
「ドう? 捗ってる?」
「お前か、じゃあ確認するがお前は何も悪いことはしないんだよな? まさか実は憑いてくるだけで疫病神にんあるとか、そんな罰ゲーム持ってないよな?」
「ウんや? 持ってないよ、私はただ。鑑賞するだけ。無害故に無敵みたいな? ま、それもループとかすればおいおいわかってくるよ。キミの理解者が僕だけだって事もね」
頭では解っていてもやりずらいのは確かだ、だが聞いておきたいことはまだある。
「聞くが、お前は味方陣営の駒としてカウントしていいのか? 竜騎士の様子を見張るだけでもいいから手伝ってくれ、とかそういうお願いは出来るのか?」
「ン~……、気分次第かなあ~、僕はデイライフのメンテナンス係用の魔女だから。神様では無いってことぐらいだし」
神様では無いと言うことから、サキが別方向の質問が飛んで来る。
「初めましてH(イータ)さん、話をぶった切って悪いけど。あなたはお姉ちゃんの手駒なの?」
何の事かさっぱり解らない上に、サキの姉の話がいきなり出てきて困惑するW……置いて行かれないようにしよう。
「そう、私は〈自由の悪神〉さんの手駒。神様の下位互換のただのデイライフの魔女……。でもあなたのお姉ちゃんの命令で動いてる訳じゃ無いから。そこはご安心を」
いきなりサキに対して敬語になったH。
サキがWに対して言う。
「あぁ、先に言っておくねW君。私は別名『家族の善神サキ』って別のところで呼ばれてるの。つまり、そこのH魔女さんの上司の姉妹って事になる」
「……、親戚ってことか? 間接的に」
「面識は無いけどね。WがHに命令しても聞く耳持たないけど。私がお姉ちゃんにHちゃんを何とかしろって言ったら聞き入れてくれる……。そういう関係」
「なるほどね、……お前の姉って。確か同級生の天上院姫だっけ? あの有名な、どっかの社長さんとか噂の」
「そう、姫お姉ちゃん」
Hが口を挟む。
「姫様は今回何も関わってませんシ、関わらせる気もありません。そこはご安心を、今頃知ってか知らずか。スヤスヤ眠ってると思います、0時なので。何より彼女は忙しい身ですし?」
何でここに来てサキの姉の話題が入ってくるのか疑問だったが。Wは思考を回転させて答えを導き出す。
「姫に頼めば、デイライフのルールは変えられるってことなのか?」
「コこで嘘を言っても仕方が無いですし……、ええ可能です。しかしそれは〈同じゲームの破綻を意味します〉、じゃんけんでグーチョキパーのルールを、数を増やしたり減らしたりしたら。同じゲームでは無いでしょ? つまり、最初にW君が言った通り……」
「同じゲームじゃ無くなる、ってことか。わかった、俺が咲に頼んで、姫に頼んで、Hにああしろこう変えろって言うことは。俺とHのゲーム盤上にとっては逆効果でしか無いって事か」
Hは微笑みをそえて返した。
「ソういうことです。前置きが長くなりましたが、ではどうぞゲームをお楽しみ下さい。W君、咲様」
咲に対しては一応敬語なのな、と思うWだった。
(……、それにしても小熊に対しての事前情報が全く無いな……、困った……)
わかっていることは、ここがVRゲームとい言うこと。
つまり、この世界で死んでもリスポーンするだけで。このギルド中央広場に戻ってくる。何度死んでも本当の意味で死にはしない。現実世界の肉体が死ななければ、Wのループは成立する。
(まあ、一発でクリア出来たら誰も苦労しないんだけどな。一応聞いてみるか)
「小熊についての事前情報は?」
「ソれはノーコメントで」
「私も会ったことない」
Hとサキが交互に言葉をドミノ倒しでテンポ良く言う。
Hは知っているが言わない体、サキは本当に知らない体。
(なるほど、ね……)
時計は01時00分になろうとしていた。
「んじゃ、行きますか」
「だね」
そう言って、Wとサキは。Hの助言を聞いた後、安全圏(セーフティエリア)から危険圏(レッドエリア)へ足を踏み入れた。
「あ、そういえばサキのゲームのスペックは……」
「それは歩きながら話しましょう」
話をそらされた。
◆あとがき◆
道具◇魔法時計『デイライフ』
所持者◇W〈ダブル〉
管理者◇H〈イータ〉
現時刻◇西暦2021年12月26日01時00分。ギルド中央広場、危険圏(レッドエリア)。
セーブ◇26日00時30分。現実世界、世界線航の自宅部屋の中。仮想世界EWO2の始まりの街『ライデン』、ギルド中央広場、安全圏(セーフティエリア)。
周回数制限◇0/2
ログ数制限◇02176/10000
〈航のメモ帳〉
18、Hは無害故に無敵。ただ喋るだけ。デイライフのメンテナンス係の魔女。
19、Hの上司は天上院姫〈自由の悪神〉で、その妹が天上院咲〈家族の善神〉。
20、小熊の事前情報は無し……。
デイライフ―1日限定ループ― ▼【異世界戦記】俺だけ本物の魔法使えるがどうしたらいい?【VRオンライン】 ゆめみじ18 @hanadanngo
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