第4話 天上院咲 登場

 道具◇魔法時計『デイライフ』

 所持者◇W〈ダブル〉

 管理者◇H〈イータ〉

 現時刻◇西暦2021年12月25日07時16分。

 セーブ◇25日07時16分、世界線航の自宅部屋の中。

 周回数制限◇3/3

 ログ数制限◇0010/5000


「無くなった……、というかHに等価交換したのは〈VRゲーム機〉と〈500円〉ってところか……」

 今は仮想世界じゃない上に、VRゲーム機も買ってない……か……。

「せめてVR機ぐらい買ってからセーブしとけば良かったな、あいや。当時は情報が少なかった。たぶんこれが最善だったはず、ならさっさとまた買いに行ってこよう」

 とは言え今日は学校がある。学校でEWO2の情報をスマホで収集しつつ、学校が終わったらVR機を買いに直行。


 その後、流れるような手作業でさっさかログインとチュートリアルを済ませた。そしてログインスタート。


《初めましてW(ダブル)様、ではゲームをお楽しみ下さい!》


 Hとのゲーム内容は〈小熊を救う〉。だったはずだ、ならまず仮想世界にログインしている状態でまずセーブだ、……ここまでは良い。


《デイライフのセーブ機能を使用しました》


 道具◇魔法時計『デイライフ』

 所持者◇W〈ダブル〉

 管理者◇H〈イータ〉

 現時刻◇西暦2021年12月25日15時30分。

 セーブ◇25日15時30分。現実世界、世界線航の自宅部屋の中。仮想世界EWO2の始まりの街『ライデン』正面門の前。

 周回数制限◇3/3

 ログ数制限◇0622/5000


「よし、これでゲームの中でじっくり散策できる」

 何せ弓使いの初期装備だ、出来る事が少ない上に限られている。

「まずはとにかく情報収集だ」

 こうして、Wは〈ギルド中央広場〉へ足を運んだ。


(まず、奴隷の小熊を探して。竜騎士とスナイパーの存在を街の皆に教えるか? ……、いやいきなりこれから起こる未来の話をしても変な人扱いされて終わりだ。時間は15時30分、レベル上げをして空飛ぶ竜騎士と超遠距離スナイパーを1人で倒すのは。時間的にもレベル的にも無理だ。……となると)

「仲間を探すか、援軍。パーティを組んでこのイベントをクリアする前準備! これが適切!」

 弓使いになったので竜騎士とは良い戦いは出来そうだが、スナイパーは無理だ。弓とスナイパー、どうしても射程距離で負ける。

「スナイパーかー……てか異世界ファンタジーの世界に銃を持ってくるなよ……」

 もっともな意見だった。


「防弾チョッキを買ってスナイパーの攻撃を防ぐか? いや助けたとして小熊っ子はどうやって助ける?」

(いや、無理だ。どう考えても1人でさばき切れる難易度じゃない。やっぱり友達を誘おう、俺の知ってる友達でVRゲームに精通してる人って言えば……。天上院咲(てんじょういんさき)しか居ないわな……クラスメイトの)

 

 天上院咲(てんじょういんさき)、EWO2をこよなく愛する生粋のゲーマーだ。レベルも高く技術もある。元々、咲に誘われてこのVRゲームに興味を持った経緯がある。今頃彼女もログインしているだろう。


 Wは再び考え込む。

「確かループを教えても問題なかったはずだよな、じゃあまず俺がループできること事を咲に教えて。その上で26日0時になったと同時にセーブか」


 【4】ループのことを他者に教えても、そのデメリットはない。


(じゃあまずは、現実世界で咲に電話連絡して。仮想世界でフレンド登録をして。デイライフのことを話して。準備して、0時にセーブ……って流れかな?)

 そこまで考えたWはすぐさま行動に移した


 ということで「かくかくしかじか」、同級生のサキとフレンド登録をして。デイライフのことを教えた。


「へー本物の魔法か~、なんか難しそうな話だね。で今日はもう周回数制限3/3だから、もうループは出来ないと」

 サキの第一声はこんな感じでキョトンとしていた。

「あんまり驚かないんだな」

「まぁ、慣れてるので」

(一体何に慣れたらこんなにリアクションが薄くなるんだ? そう言えばこいつ物語のある本とか好きだったな、ループモノも読んでるのか?)

 そんな話をしている内に……。


 咲はデイライフのルールを熟読し、そのゲームに挑むことを決意した。

「じゃあ私は記憶は引き継げないっぽいから、26日の0時に2回だけ混乱するってことだね。たぶん」

「まあ、そう言うことだ。俺はたぶんサキに『俺は26日20時前後の未来から来た!』とか言うんだろうな」

「だろうね」

「うちのギルドPTメンバーとか呼ぶ? 人数多いけど」

 いや、今回はサキだけに助けを頼む形にする。人数が多いと、たぶんログ数が急激に消費される可能性がある。

「なるほど、アクションした数値だもんね」

「そうなる」


「じゃあ今日はもう寝たほうが良いよ」

「ん? 何で?」

「0時に決闘ゲームスタートなんでしょ? 徹夜したら明日の学校をさぼる可能性も出て来る。私は学校を休めない、今日だけで良いなら今のうちに寝て、深夜から朝方でケリをつけた方が良い。まぁ授業中寝ちゃうかもしれないけど……」

 咲は、ゲームと勉強の両立はちゃんとやる人物だ。昔、それでひと悶着あったらしい。


「まだ夕方の4時だぞ?」

「だからこそ寝るの! Wはまだレベル上げが出来てないのに高難易度クエストに挑むんだから。むしろ私を寝かせてくれた方がクエスト成功率は上がる!」

「……なるほど、確かにそうだな」

 Wが今は、戦闘では役に立たないのは明白だ。ならサキのポテンシャルを上げたほうがいい。


 そういうわけで、もう一度Hと出会い。チュートリアル用の500円を渡し。明日のデイライフの発動条件を満たした。

 あとはWは寝て、26日0時に起きて。サキとコンタクトを取り。セーブを選択して、Hとの決闘に挑むだけだ。

「あは! ずいぶん慎重だね、ログ数2500ぐらいまだ残ってるけど?」


「アクションしすぎてループ出来ませんでした。は困るからな、て、わけだから今日は寝る!」

「私もログアウトして寝よーっと。ちゃんと起こしてよね!」

 サキは他人事みたいに言う。

「はぁ、サキにモーニングコールね。わかった」


 ……、そして。

 西暦2021年12月26日00時00分。

 起きて、起こして、セーブして。仮想世界、EWO2にログインスタートした。

 Wとサキ VS Hとの決闘の始まりである――――。


◆あとがき◆


 道具◇魔法時計『デイライフ』

 所持者◇W〈ダブル〉

 管理者◇H〈イータ〉

 現時刻◇西暦2021年12月26日00時30分。

 セーブ◇26日00時30分。現実世界、世界線航の自宅部屋の中。仮想世界EWO2の始まりの街『ライデン』、ギルド中央広場。

 周回数制限◇0/2

 ログ数制限◇00050/10000


〈航のメモ帳〉

 15、天上院咲(てんじょういんさき)/サキにデイライフのことを教えた上で、26日0時にセーブをした。


 16、人数が増えると、ログ数の貯まるスピードが速くなる。


 17、管理者に明日の分のキーアイテムを交換して、デイライフの発動条件を満たす事は可能である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る