第3話 航のメモ帳と宣戦布告

《管理者権限によりデイライフのアップデートがありました、ご確認下されば幸いです。それと、このデイライフにはメモ帳機能が付いてるよ。有効活用してね》


「? 何だ? この微妙に敬語だけどフレンドリーなメッセージは」

 ということで早速デイライフに目を落とすW……。



 道具◇魔法時計『デイライフ』

 所持者◇W〈ダブル〉

 管理者◇H〈イータ〉

 現時刻◇西暦2021年12月25日16時00分。

 セーブ◇25日07時16分、世界線航の自宅部屋の中。

 周回数制限◇2/3

 ログ数制限◇2143/5000



「おお! よくわからんが前よりも使いやすくなってる! てか! え? デイライフのアップデート? あぁこっちか」

 そうして、デイライフのルール説明の所を観た。



 ◎魔法時計『デイライフ―1日限定ループ―』のルール◎

【0】デイライフと唱えたら、1日限定でループをすることが出来る。

【1】ループする場所は自分がセーブと指定した一ヵ所からスタートする。

【2】死んだり死後の世界では、デイライフは発動できない。

【3】デイライフは世界で1つだけ存在し、それ以上には増えない。

【4】ループのことを他者に教えても、そのデメリットはない。

【5】周回数・ログ数の使用制限があり、超えたらその1日分は使えなくなる。

【6】ルールは100年前後も同様に遊べるように組んでるので不変である。

【7】ループにはキーアイテムを管理者に交換しなければループは出来ない。

【8】他の魔法とかち合った場合、その優先度は最下位の後手で発動する。

【9】ルールは0~9個までで、それ以上にも以下にも出来ない。



「……」

 一瞬凍るWは、どこからツッコめばいいかわからなかった。ルールが微妙に変わっている。


「……なるほど、これがデイライフっつーゲームの全貌か。では遠慮なくメモ帳を使わせてもらおう」

 言って、中略しながら。Wはメモ帳に内容を書き始めた……。


 ……~~……。

 メモ帳に今までわかった事を書いてしばらく経った後に……。

「お、どう? 捗ってる?」

 元凶がやってきた。

「お前かH、なんか管理者ってコレに書いてあるし。俺のVRゲームライフに変なもんぶち込みやがって……」


 その時、Hは珍妙な言葉を口にするH。

「良いじゃん、前の奴も、前の前の奴も使えこなせなかったし。あんまりキミにも期待してないからさ」


「良くわかんねーが。おいおい、等身大の俺のこと舐めてねーか?」

 Hは続ける。

「デイライフの精度・機能は進化してる。それは間違いない。そこで私は思ったの。」

「何を」

「道具は完璧に仕上がってる、成熟したってくらいにね。だから問題は持ち主の方にあるんだって、使い手。そう使い手が使いこなせなかったからこのゲームはゲームにすら成らなかったんだって」


 色々なモノを飲み込み、凄腕ゲーマーWは言う。

「ゲームの中にゲームをぶち込んでる時点で既に正気の沙汰とは思えねーが……、良いだろう。そのゲーム乗ってやる」

「お、飲み込みが早い上にヤル気だね。いいよ、そういうゲーマーは歓迎する」


「で、クリア条件は何だ?」

「ん?」

「何ゲーかは知らねーがH。ゲームはプレイヤーがゲームをクリアしてこそのゲームだろ? なら、こっちの勝利条件を教えてくれ。まさかずっとループする旅に出て永遠に終わりません。じゃねーだろーな?」

 WはHに宣戦布告にも似た強気の発言で行く。因縁は無い。ただゲーマーとして、本気で売られたケンカは買うだけだ。ただそれだけだ。


「そこまで考えて無かったな~。ふーん、威勢はいいね。いいよ、そのケンカ乗ろうWくん。じゃあ私の個人的な理由で、ゲームマスター、として〈明日、あの奴隷の小熊AIちゃんを救ってオトしてみてよ〉、今日はいいよ、チュートリアルだから。私とのケンカは明日、西暦2021年12月26日00時00分からスタートでいいわ。それまではデイライフに慣れるまで、待っててあげる」

「ほほう」


「聞きたいことがあったら言って? 大丈夫、このゲーム〈デイライフ―1日限定ループ―〉をクリアした人間はただの1人も居ないんだから~!」


「こう言っちゃ何だが、いいんだな? 本気でクリアしちまっても?」

「出来るものなら」

「……」

「……」

 お互いに間が出来るWとH。


「あぁ、そうだ。このまま本当に流局になっても困るし。決闘前に情報を前出しして置いてあげるわ。前回、前々回のプレイヤーが死に物狂いで集めた情報よ」

 言って彼女は。

「1つ、奴隷の小熊は鍵のついた檻の中。2つ、敵は空飛ぶ竜騎士とスナイパーが街の中に潜んでる」

「ほほう、厳重なこって」


「そして今回からの追加ルールはコレね。周回数制限は2回、ログ数制限は10000ログ」

「つまりコッチは残機2つで、小説2万文字以内にその小熊を救ってオトせば勝ち。自分が死んだり、翌日27日になったり、2万ログを超えた時点であんたの勝ち」

 Hは不適に笑う。

「そゆこと」


 ログ数制限◇4121/5000


 これ以上、長話をしてるとループ出来る条件を超えてしまう。

「じゃあループさせてもらうぜ? 情報収集はその後だ。何を交換すればいい?」


 新たに変更になったルール。

 【7】ループにはキーアイテムを管理者に交換しなければループは出来ない。


 Hは心優しく歓迎する。順応性が速い。

「今はまだチュートリアルだから、現実世界の500円で手を打ってあげる」


「こっちは了解した」


《デイライフの発動条件を満たしました》


「んじゃ、さっさと〈デイライフ〉っと……!」


《デイライフが発動されました西暦2021年12月25日07時16分、世界線航の自宅部屋の中へループします》


 W/世界線航は、激しい光に包まれて――バチッと消えた。




◆あとがき◆


 道具◇魔法時計『デイライフ』

 所持者◇W〈ダブル〉

 管理者◇H〈イータ〉

 現時刻◇西暦2021年12月25日07時16分。

 セーブ◇25日07時16分、世界線航の自宅部屋の中。

 周回数制限◇3/3

 ログ数制限◇0001/5000


〈航のメモ帳〉

 1、VRゲーム機がキーアイテムの交換品として、ループ後の世界で無くなったので。けっきょく自腹で買うことになった。


 2、バージョンアップは出来るが、シーズン〈ループ数制限〉が終了するまでアップデートは出来ない。ゲーム中にルールが変わったらそれはそもそもゲームですらなくなるから。


 3、デイライフに付属されているメモ帳は無制限に文字を書き込むことができ。その制限は特にない。


 4、管理者Hは所持者Wと同様にループをしても記憶を継承している。


 5、キーアイテムは所持者、または管理者が〈重要そうなものだ〉と思う物を選び。管理者に渡す事でループの発動条件を満たす。


 6、メモ帳の番号は航〈自分〉が他者に話すときに付けている番号であって。この番号やメモ内容は改変することが可能である。


 7、Hがデイライフを作った根底は「ゲームとして遊びたいから」であるらしい。


 8、ループをしたら当然だが、WとH以外の記憶はセーブ時間までリセットされる。ただし、キーアイテムが無くなるが「タダでループ魔法を使わせる訳にはいかない」とのこと。


 9、最初の1日目は〈お試し期間〉ということで、ループ数制限もログ数制限も短いとのこと。


 10、この魔法は本物なので、現実世界でも仮想世界でも有効である。どうやらHは本物の魔女らしい。


 11、ログ数とは、デイライフ所持者のアクション数であり。何もしなければ増えない都合のいい物であるらしい。 


 12、チュートリアルは25日まで。決戦は26日00時00分。奴隷の小熊は鍵のついた檻の中。敵は空飛ぶ竜騎士とスナイパーが街の中に潜んでる。


 13、26日の勝利条件は小熊を救う。


 14、26日の決戦は、周回数制限2回、ログ数制限10000ログ。

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