第2話防波堤役任命?

 ちょっとしたハプニングもあったが、いい休日を過ごせたおかげで今日は目覚めが良かった。それにしてもあのチーズケーキめちゃくちゃ美味かったなぁ……


 チーズを普通のチーズケーキの2倍も使っているらしく、口に入れた瞬間濃厚なチーズの味が広がっていって……かと思うとふわっと溶けていく。


 堪らん美味しさだった……。


「あ、あの!」


「おい、なんで門仲さんが……」


緋山ひやま君に用事なんじゃね?」


「お、緋山君が門仲さんに話しかけたぞ!流石緋山君!俺たちでは緊張して話せないっ!」


「やぁ、どうしたんだい門仲さん?」


「あの、甘原君いますか話があるって伝えて貰えませんかっ」


 思い出しただけでも涎が出そうになる……あー……もうあの美味しさには多分しばらく会えないんだろうな……夏休みに予定しているスイーツ巡り一人旅の時に東京に寄れたら行こう。


「甘原君」


 ポンと肩を叩かれる。


「緋山君?」


 緋山かける。ウチのクラスカースト最上位。他のクラスには美少女が狙ったように一人ずつ居るがウチはこのイケメンが代表的存在。いつもクラスをまとめてくれているし、俺にこうしてくれているように誰にでも分け隔てなく接してくれる。


「門仲さんが呼んでるよ、話があるんだって」


「え」


 おそるおそる緋山君が視線を向ける先を見る。


 そこには何故か頬をほんのり赤くして、笑顔でこっちに向かって小さく手を振る門仲さんがいた。


「早く行ってあげなよ」


 ニコッと笑う爽やかイケメンスマイル。


「わ、分かったよ」


 雰囲気に流されて椅子から立ち上がる。


 足が非常に重く感じる。……周りから何故か殺意を感じる。


 俺は、門仲さんになにかしてしまったのだろうか。


 ゆっくり歩きながら必死に考えるが呼ばれた理由は何も浮かばなかった。気づかないうちに門仲さんの前に着いてしまった。


「話ってなんですか?」


 今更遅いと思うが敬語を使う。もしかしたらあの時タメ口だったのが原因かもしれない。


「あ、甘原君、その、……」


「……」


「……えっと……」


 門仲さんが何かを言おうとしている。そして、後ろから凄い視線を感じる。


「……ここじゃ話せないっ!」


「えっ」


 手を掴まれ、何処かに引っ張られる。









 着いた場所は1階の階段下にあるちょっとしたスペースだ。俺も1人で静かに食べたい時にちょくちょく使っている人目に付かない穴場だ。



「……」


「……」


 沈黙が続く。


「あの、それで話ってなんですか?」


「……わ、私と付き合って下さい!」


 そう言われた瞬間、俺の頭の中は高速で回転する。カースト最上位勢の門仲さんがランク外の俺にそんな事言う可能性はゼロ。何か別の意味を持たせているだろう。


 罰ゲームかなにかで弄んでいるか、男が寄ってくるのを防ぐ防波堤役のどちらかだろう。昨日、助けられてああいう面倒臭い男を避けるのに使えるとでも考えたのかもしれない。


 じゃあやっぱりなにかやらかした訳ではなく、ただただ道具として使えると思ったのかもしれない。なるほど、これで納得した。


 ……まぁ、どちらにしろ俺に断る権利は無い。断ったら門仲さんの命令でいじめられる。


「……あ、甘原君?」


「……よろしくお願いします」


「え、ほ、ほんとですか!」


「はい」


「やったあ!」


 そう声をあげると、抱きついてきた門仲さん。意識しないようにしていた、いい匂いと柔らかな胸が俺の胸板を襲う。……まずい。



「あ、ご、ごめん、嬉しくてつい抱きついちゃった……」


「……大丈夫です」


 俺に甘い蜜を与えて逃がさないつもりなのかもしれない。それか、服に俺が触った証拠をつけて俺が彼氏役を辞めると言ったらレ〇プされかけたとでも言うつもりかもしれない。そうなった場合顔で有罪確定だろう。


「よく考えたら、その、か、彼氏だから問題ないよね?」


「問題ないです」


「だよねっ!?……あのさ、今日の昼休み私のクラスに迎えに来て貰えないかな?昼ご飯一緒に中庭で食べない?……ダメかな?めんどくさい?」


「分かりました」


 もう男寄ってくんなよと大々的に公開するためだろう。


「ありがとっ!……じゃあ、そろそろ1時間目始まるから行くねっ!またね!」


「はい、また後で」


 教室に戻ろうとしていた門仲さんがこちらにタタタと小走りで戻ってきた。


「あのさ、ハイタッチしていいっ?」


「いいですよ」


 門仲さんと、パチンとハイタッチをする。


「ありがとっ!」


 顔を赤くして嬉しそうに階段を登っていく門仲さん。……流石カースト最上位としか言いようがない可愛さだった……。思わず、好きになってしまうところだった。……うん、後で辛くなるだけだからな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

凶悪顔面でスイーツガチ勢の甘原君はハーフ金髪美少女レンリさんに餌付けされる。 アサブクロ @asobigoo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ