16・罠師、死す

 警視庁での事情聴取から解放された宗八がアパートに戻ると、部屋には竜子と狩谷が待っていた。部屋の中は竜子の働きで何とか見られる状態に戻っている。

 宗八は靴を脱ぎながら言った。

「おぅ、来てやがったのか。調子はどうでぇ?」

 狩谷は竜子がつけた熱燗を一人ですすっていた。

「上々さ。あんたのおかげで、難問がすっかり片づいちまったからね。お先にやらせてもらってたよ。たまには、はめを外させてもらうさ。それより、撃たれた傷はどうだ?」

 部屋に上がった宗八はオーバーを脱ぎ、壁にかけてあったどてらに袖を通してコタツにもぐった。

「すっかり良くなっちまった。ちっとも痛まねぇ。よう竜子、俺にもつけてくんな」

 腰を上げようとしていた竜子がぼやいた。

「ガキじゃぁあるめぇし、ちったぁ待てねぇのかよ」

 竜子は台所に入った。

 狩谷が湯呑みを置いた。

「若林が死んだの、聞いたか?」

 宗八は無表情に言った。

「サツでも、えれぇ騒ぎになってやがった。ま、おかげでこっちゃぁ早々に帰ぇれたわけだ。あんな悪党でも、死ぬときだけは他人様の役に立ちやがったな。どうでぇ、俺が言ったとおりのところに納まっただろう?」

 狩谷はうなずいた。

「ぴったりとね」

「検察の濡れ衣は晴らせたのかい?」

 狩谷はにやりと笑ってうなずいた。

「お前の知恵のおかげだ。若林はモサドの報復を恐れて『検察で守ってくれ』と泣きついてきた」

「で、教えた通りに言ってやったか?」

「すぐに証明できる犯罪行為がなければ留置を続けられない――ってな。さすがに『自分が罠師です』とは言わなかったが、坂本を殺した部下の名前を白状した。さっそく逮捕して、秘書の供述と突き合わせた。若林はむろん、殺せとは命じていなかったが、脅迫は重罪だ。全てが明らかになった後で『脅し文句は大熊宗八から入れ知恵された』と耳打ちしてやった。若林め、涙をためて悔しがっていたよ」

「罪もねぇ大家を痛めつけやがった礼だ。ゴンスケの仇も打てた。お天道さまは騙せねぇと思い知ったろうよ。で、コンピューターのパス……なんとかは分かったのかい?」

「パスワードか? あと二、三日で吐かせられたかもしれなかったが……。罪を軽くするために、取り引きの切り札にしたかったんだろう。その前にズドン、さ」

「若林をやったなぁ誰なんでぇ?」

「モサドの狙撃手――ってことになってるが、実際は分からない。若林が集めたスキャンダル情報を恐れる実力者は無数にいる。その一人が命令したことだとも考えられる。しかしモサドを犯人にしておけば、捜査の必要がない。相手は独立国家なんだから、手は出せないしな。永田町や霞が関では、みんな胸をなで下ろしているだろうよ」

「どんな死に様だった?」

「綺麗なものさ。ちょっと検察庁の玄関を出たとたんに、ライフルで額を撃ち抜かれた。護衛はつけていたんだが、たった一発で片をつけられちゃあね……。形ばかりの捜査は続けているが、どこから撃ったかさえ分かっていない」

「ゴルゴなんたらでも雇ったんだろうよ」

「笑い事じゃない。おまえが撃たれていたかもしれないんだぞ」

「へ、罠師を馬鹿にするんじゃぁねぇやい。そんなヘマぁしてたまるもんか。しかし、やりてぇ放題やってきた若林だ、さっぱりくたばれりゃぁ思い残すこたぁねぇだろうよ」

 竜子が戻って宗八の前に湯呑みを置いた。自分の分を背に隠している。

 竜子は甘えるように小声で言った。

「ねぇ……呑んでいいだろう?」

 宗八が厳しい目で睨んだ。

 竜子は悲しげに目を伏せる。

 と、宗八は反り返って豪快に笑った。

「がはは……当ったりめぇじゃねぇか。めでてぇ日だ、好きなだけ呑むがいいさ。ただよ、客人の前じゃぁ暴れるんじゃぁねぇぜ」

 竜子は舌を出して笑い返すと、長火鉢の鉄瓶から徳利を上げた。

 狩谷が言った。

「大家夫妻、回復しているそうだね」

 宗八が嬉しそうにうなずく。

「ま、殺しても死なねぇ強欲大家だった……ってぇ落ちかね」

 竜子がぽつりと言った。

「ゴンスケは帰っちゃぁこねぇぜ」

 宗八が小さくうなずく。

「腹ん中はおさまらねぇだろうが、辛抱してやってくれ。いくら罠師だって、生き返ぇらせるこたぁできねぇや」

 竜子の目には涙がにじんでいた。

「生まれ変わってきたら、あたいの犬にしてやっていいかい?」

 宗八はわずかに笑った。

「犬がいれば、ガキの遊び相手になるからな。だからその前に、孫をこさえるんだぜ」

 竜子は答えた。

「男はややこしくて嫌ぇだよ……」

 宗八が竜子をにらみつける。

 狩谷は親子の言い争いが始まる前にあわてて宗八の前に身を乗り出した。

「それで、警察の方はどうだったんだ?」

 宗八はまたも表情を硬くした。

「おぅ、よくぞ聞いてくださいましたってぇもんだ。どうもこうもねぇぞ。奴ら、いってぇどういう了見でいやがるんだ? この俺様にむかって『歳はいくつだ』とか『どこに住んでるのか』だとか、ガキの使いみてぇなことしか聞きやがらねぇ。撃たれた時になんで電気屋に変装してたかってぇことさえ、気にしちゃぁいねぇ始末さ。こっちゃぁ根掘り葉掘り突っ込まれるもんと腹ぁくくって、長げぇ話しをこさえて乗り込んでいったってぇのによ。波瀾万丈の冒険談がまるっきり無駄になっちまったじゃぁねぇか。あげく果てに、鰻重だぜ、鰻重。『どうぞお召し上がりください』だと。出されたもんを食わねぇんじゃぁ癪にさわるから食っちゃぁきたが、見ろ、腹がふくれておおじょうしたぜ。せっかくの酒が不味くなっていけねぇ。あれでも天下の警察か? 罠の仕上げのつもりで出向いたってのによぅ、罠師様に失礼ってもんだろうが」

 狩谷は苦笑を押さえながら言った。

「まあまあ、肝腎の若林が消されてしまったからな。中田にも止めが刺せるし、感謝しているんだよ」

「大方、誰かが『ほじっくり返ぇすな』って釘を刺しやがったんだろう」

 狩谷は真顔に戻ってうなずいた。

「そんなところだ。だが、鰻重は高森が自腹を切ったはずだぞ。奴には洗いざらい話したからな」

 宗八は狩谷を睨んだ。

「てめえ、相談もなしに!」

「しかたないだろう。小菅の伊田を黙らせなけりゃあならないんだから。警察内部にも協力者が必要だったんだよ。その点、高森なら信頼できる。本来なら部長クラスの男なんだがね、骨がありすぎて出世できない偏屈者さ。それだけに信望が厚いし、口も硬い。おかげで伊田からは、若林に命令されたっていう調書が取れたそうだ」

 宗八はまだ不機嫌だった。

「そんな紙っ切れ、なくったってどうにでもならぁ。罠師をなめるんじゃぁねぇやい。だがまあ、てめえがそう言うなら勘弁してやるさ。ただし、もしそっから罠師のことがもれてみろ、勘弁しねぇぞ。こっちゃぁまだ、てめえをフーテンにできるんだからな」

「凄むなって。高森は話の分かった男だ。おまえの罠に心底感心して、しきりに会いたがっていた」

「おっと、そいつぁ遠慮しとくぜ。これ以上お固い知り合いは欲しくねぇ。だがそうするってぇと、もうサツには行かなくってすんじまうのかね……。ま『若林の過去』ってぇ読み物は、俺が自叙伝でも書くときに使うとするか。そんときゃぁ、てめえも買うんだぜ」

 竜子が宗八に二杯目を注ぎながら言った。

「何が自叙伝でぇ、ろくに漢字も書けねぇくせに。若林んとこに送り込んだ手紙だって、中身はあたいが考げぇてやったんじゃぁないか」

「だからよ、自叙伝もてめえが書くのさ」

「嫌ぁなこった」

 三人は声をそろえて笑った。

 竜子はにっこりと笑ったまま、手酌で次々と湯呑みを空けていく。

 宗八がぽつりと言った。

「ところでてめえの部長、どうなった?」

 狩谷の表情が沈んだ。

「ああ……まだ報道されてはいないが、今朝、自殺した。自宅で首を吊ったそうだ」

「だろうな」

「昨日の晩に一人で行って、知っていることを話した。何もかも認めたよ。やはり、おまえの推理が正しかった」

「特捜部長さまが若林に通じてたこと、他にも知ってる奴がいるのか?」

「宇野さんも疑っていたそうだ。公にはしたくないが、上に報告しないわけにはいくまいな……」

「自業自得ってぇやつだからな。しかしよ、何だって検察のお偉方ともあろうもんが、若林なんぞに買われっちまったんだろうね……」

「歳を取ったからだ――と言っていたよ。家族はすでになく、仕事を続けられるのもあとわずか。他の官庁と違って、天下り先も多くはない。弁護士に鞍替えするといっても、商売敵が多くて楽じゃないからね。片や若林や中田は、いくら非難を浴びても平然とふんぞり返っている。不公平なものさ。そう思うと、今まで積み重ねてきたものが突然無意味に思えたそうだ。そんな時に、若林が接近してきた。ぽっきり折れてしまったんだと。もう一年以上も、若林に情報を流していたという……」

 宗八は手にした湯呑みをぼんやり見つめた。

「歳ね……確かに嫌ぁなもんだがな……」

「ああ……。あの人、俺は好きだったんだがね……」

「でもよ、てめえだって勘づいちゃあいたんだろう?」

「半年ほど前から、おかしいとは思っていた。こっちの手が中田に筒抜けになっていてね。内部リークとしか考えられなかった。坂本議員が死んだ時、はっきり分かった」

「殴られたのは誰だったんだい?」

「やはり、俺じゃないと知っていたんだな……。酒井という男でね、弟みたいに思っていた同僚さ。彼がそんな目にあったのも、若林が〝立木文書〟の行方を検察内部から聞きだしていたからだ」

「それで部長が怪しいと?」

「坂本に会うはずの前の日に、部長が心臓発作で倒れてね……。ま、それは仮病だったんだが、何かがおかしいと感じた酒井は独断で予定より早く坂本の部屋へ行った。それで、若林の手下と鉢合わせしてしまったわけさ」

「部長は自分が巻き込まれるのを恐がって仮病で逃げた、ってぇことか……」

 狩谷はうなずいた。

「はっきり疑い始めたのは、自宅療養中の部長が『罠師を使って文書を奪おう』と言い出した時だ。俺がおまえを〝星〟の強奪犯だと内定していることを知っていてね……。みんな、肝をつぶした。囮捜査どころか、完全な脱法行為だ。公になれば検察の信用が失墜する。無謀だという反対意見が圧倒的で、当然却下された。だが部長だけが『酒井の弔い合戦だ』と言って譲らなかった」

「若林から『罠師を巻き込め』と命じられていたのさ」

「それも認めた。若林は〝立木文書〟におびえていた。だから最大の情報源である部長を切り捨ててでも、特捜部に自作の偽文書を送り込みたかった。それにはどうしても、検察の命令を受けて文書を奪ってくる人物が必要になる。白羽の矢が立ったのが罠師だったわけだ。部長は俺を家に呼びつけて必死に説得してきた。おまえと接触を取れる人間は俺しかいないからだ。俺さえ首を縦に振れば、罠師を若林の土俵に放り込むことができる。俺は、部長が若林に通じているのかどうかを確かめるためだけに、単独行動を受け入れた。万一検察全体に危険が及ぶようなら、すぐに手を引く気でいたんだが……」

「そんな暇ぁ、ありゃぁしなかったろう?」

「全くだ。ここに来たのがたった五日前だとは信じられんよ。ともかく、おかげで部長が若林の情報源だったことは確かめられた。彼の自宅に直接報告したことのいくつかが、特捜には伝わっていなかったんだ。〝星〟のありかだとか、東名高速での失敗が意図したことだったとか……」

「なんで最初から俺に内幕を話さなかったんだ?」

「俺自身が危ないと言わなければ協力しなかっただろう? それに、どこまで信用できるか見当もつかなかったからな……」

「お互げぇ様だぜ」

「言える。おまえも、俺が若林の手先だと疑っていたんだからな。しかし、いつ部長が怪しいと分かったんだ?」

「てめえが転がり込んできた晩さ」

「なに⁉ 最初から分かっていたのか?」

「ここに泊まった次の朝、頭が痛まなかったかい?」

「そう言えば……」

「竜子が薬を盛ったのさ」

「睡眠薬か?」

 宗八はうなずいた。

「てめえが呑気に鼾をかいているうちに、調べものをすましたってぇわけよ」

「調べもの?」

「まず、頭の傷を見た。たんこぶはできちゃぁいたが、本気で殴った痕じゃぁねぇ。こいつぁ偽装だとピンときたね。で、竜子に電話をかけさせた」

 竜子は湯呑みを止め、にたっと笑った。受話器を取る手真似をすると、いかにも心細げに言う。

「狩谷さんはいらっしゃいますか……検察を辞めさせられたと聞いたもので……だから、もう会えないって……お願いです、居場所を教えてください……私、愛しているんです……別れると言われたら……死にます……」

 そして竜子はぺろりと舌を出した。

 宗八が肘で狩谷を突いた。

「よ、この色男ぅ」

 竜子が言った。

「電話に出たのが坊やでよ、すっかり乗せられっちまいやがんの。『狩谷さんは心配ありません、辞めさせられたりしていません』だってさ。それも、くすくす笑いながらだぜ。失礼しちゃうよね」

 狩谷は茫然とつぶやいた。

「坊やって……あの日、残っていたのは……くそ! 永島か! とっくに四〇を過ぎてるんだぞ。くだらない手に引っかかりやがって……。だから部長は『隅に置けない』と……」

 宗八がつけ加えた。

「ま、それでてめえが〝逃亡者〟なんかじゃねぇこたぁはっきりした。となりゃぁ、命令を出したなぁ上司しかいねぇ」

「検察官には、自分の判断で捜査する権限が与えられている」

「笑わせるんじゃぁねぇやい。てめえみてぇな肝っ玉の小せぇ堅物が、独断専行なんぞできるわけがねぇ。こちとらあ、鼻ったれのガキの頃からつき合ってるんだ。腹の内までお見通しでぇ」

「昔話を持ち出されると、返す言葉はないがな……」

「ともかく、てめえの持ってきた話は筋が通ってた。作り話にしちゃぁあんまり念が入りすぎてる。だがよ、検察の資料まで持ってきたなぁやり過ぎだったぜ。若林にはめられた人間が、そんなもんを簡単に持ち出せるはずぁねぇ。しかも目論みそのものが、危ぶねぇ橋だ。それで、特捜の親分が中田とつるんでるんじゃぁねぇかと疑ってみたわけさ。で、試しに〝星〟のありかを匂わせた。案の定、あっという間に若林がすっとんで行きやがった。これで筋書きは読めたね」

「わざと教えたのか⁉ 逮捕されるかもしれないのに……?」

「若林の目的は罠師を巻き込むことだ。なら、サツやモサドに知らされる恐れはねぇ」

 狩谷は沈んだ声で言った。

「俺は部長が怪しいと気づくのに半年もかかった。そのからくりを、たちどころに見抜いたのか……」

「蛇の道は蛇って言うじゃぁねぇか。罠師を罠にかけようなんて、大それた真似をするからよ。だがな、部長だけじゃぁなく、てめえも若林の腰巾着だってぇことも考げぇられた。だからてめえにゃぁ若林に知らせてぇ事しか教えなかったのよ」

 狩谷はかすかに微笑んだ。

「結果はそれで良かったんだ。文句は言えまいな。すると今度の計画は、みんなあの晩に決まったのか?」

「大方の筋書きはな。あれこれややこしくなっちまったんで、誰かを罠師に仕立てあげちまいたかった。だからって、並みの人間に罠師の大役が勤まるはずもねぇ。その点、若林ならおあつらえ向きだぁね。願ってもねえ鴨がネギ背負って飛び込んできやがったってぇわけよ」

「竜子さんも、みんな知ってたのかい?」

 竜子はふてくされたように口を尖らせた。

「そこんところを聞かされたのは、若林の家に盗聴器を仕掛けて戻ってからでね。この親父、実の娘だって信用しねぇんだから始末が悪いぜ」

 宗八が言った。

「当ったりめぇじゃねえか。何もかも教えて、奴のねぐらでべらべらしゃべらされちまっちゃぁ罠にならねぇだろうが。現に、何だか分からねぇ薬を盛られちまったんだからよ。あん時のこいつは、どうせ奴が知ってることしか知らなかったのさ」

 狩谷は感心したように言った。

「そこまで先を読んでいたのか……」

「それが罠師ってぇもんよ。ともかく、若林にゃぁ過去がねぇ。どうにでもしてくれって言ってるようなもんさ。こんなに引っかけやすい相手は、ざらにいるもんじゃぁねぇ。奴が罠師を替わってくれりゃぁ、それだけで御の字だったのさ。〝星〟のことだって、盗めただけで満足よ。どうやって返ぇしゃぁいいもんかと頭をひねっていたぐれぇだ」

「しかも、中田まで道連れとはね……」

「若林の腹は大方読めてたが、天敵のマスコミを呼び寄せたと確かめて、またぞろインチキ文書を担ぎ出すってぇこたぁ確信できた。そいつを言い逃れのできねぇ場所でひっくり返ぇせば、奴も一緒にひっくり返ぇる。いったん手のひらぁ返ぇせば、もう元には戻れねぇ。この罠の肝は、そこさ。後に引けねぇどん詰まりまで追い込めるって分かってたから、止めの鍵を最初に送りつけてやったのさ」

 竜子が笑う。

「あたしゃぁ、大慌てで盗聴器やらなんやらの準備をしなくちゃならなかったけどね」

「ここは破壊されていたのに、どこでそんな仕事を?」

「アジトは、ひとつじゃないからね」

 宗八が言う。

「それも、罠師の仕事のうちさ」

 狩谷は宗八を見つめた。

「中田はおまけ、だったのか?」

 宗八の目の色が真剣に変わった。

「中田が力がある政治家だってことぐれぇ、分かってるさ。今の日本がいい国になったって喜んでる輩にゃぁ、神様に見えるんだろう。奴の仕事が日本のためになったかどうかは、百年先の人間が決めりゃぁいいこった。だがな、奴にゃぁちょいとばかり個人的な恨みがある」

「恨み?」

「東京を見てみろ。昔とすっかり変わっちまったろう? みんな金儲けに目を血走らせやがって、人情なんぞ足げにされる始末さ。戦争に敗けたって、俺たちにゃぁ帰ぇってくる国があった。貧乏してたって助け合ってしのげたし、ぼろを着てても笑っていられたもんさ。だが今じゃぁ、札束がうなってる代わりに日本中が禿げ山にされちまった。なぁにが日本改造だ。国中ブルドーザーで踏みつぶしやがって、田舎成金丸出しじゃぁねぇか。しかも奴ぁ、政治家と役人を束にして大企業にひっつけやがった。出来上がったのは、てめえらだけが甘い汁を吸う仕組みさ。臭くて臭くて、我慢できるもんじゃぁねぇ。しかも、若いもんたちゃぁ、金勘定しか頭にねぇさもしい大人を見ながら育っていくんだ。金のためなら親でも売り飛ばすような極道があふれてくるに違げぇねぇ。現に今でさえ、中学生が何の抵抗もできねぇような浮浪者を面白半分に殺してやがる。『浮浪者狩り』なんぞとほざきやがって、奴ら、人の命なんか何とも思っていやがらねぇ。学校ったって、性根の腐った役人どもがてめえらの都合でこしらえた牢屋みてぇなもんだ。子供らに逃げ場なんかねぇ。息を詰まらせた挙げ句に、教室でナイフを振り回したり銃をぶっ放したりってぇ騒ぎになるぜ。小学生がシンナーやらシャブ漬け、中学生が売春だの強盗だのってことにでもなってみやがれ、日本は日本じゃぁなくなっちまわぁ。今だって相当狂ってるぜ。ノーパン喫茶だとか何だとか、年頃の娘っ子が破廉恥な真似で堂々と稼いでやがる。下半身の商売ってぇもんはな、こっそり慎ましくするもんでぇ。この調子でタガが外れたまんまなら、しまいにゃぁやノーパン牛丼やノーパン予備校まで出てくるぜ。大蔵省のお役人様が、ノーパンしゃぶしゃぶの接待でとっ捕まったりしてな。そうじゃなくったって、役人どもがてめえたちの都合で好き勝手にこの国を転がす羽目になっちまうだろうよ。ともかく、中田が力を振るい始めてから日本人の魂が腐り始めた。頭が腐りゃぁ、毒は手足まで回るもんだ。今のうちにきっぱりけじめをつけとかなけりゃぁ、ご先祖様に申し訳ねぇ」

 堰を切ったように一気に胸の内を吐き出した宗八に、狩谷は真剣にうなずきかけた。

「確かに、俺も同感だ。だが、おまえがそこまでこの国を考えていたとはな……」

「死に損ねぇの戯れ言、さ。時代の流れだと言っちまえばそれっきりだ。だがな、こんな体たらくをそのまんまにしていたんじゃぁ、死んでも死に切れねぇ」

「それが罠師、ってことか……。しかし、若林が偽文書を用意していたことが、どうして簡単に見抜けたんだ?」

「はなっから分かってたわけじゃねぇ。だが特捜を操っててめえを送り込んできた以上、魂胆があることははっきりしてらぁ。で、手始めに竜子を挨拶にやらせたのよ。竜子が無事に帰ぇってくることは分かりきってた。奴の方が望んだこったからな。案の定、すぐ取り引きの電話がかかってきやがったろう? 奴も焦っていやがったのさ。でなけりゃぁ、その日のうちに誘いをかけるなんてぇヘマはしなかったろうよ。その結果が、高速の空騒ぎだ。奴の手下どもが大慌てで偽文書で追っかけてったのを見て、手の内がすっかり読めたね。けどな、奴を罠師に仕立てるにゃぁもっと深入りさせなけりゃぁならねぇ。証拠や証人だって揃えておきてぇじゃぁねぇか。で、手の込んだ芝居が必要になっちまったのさ。野郎、頭に乗りやがって、いい気なもんよ」

「俺は正直言って、若林に同情したよ」

「そう言いなさんなって。奴だって、俺とおんなじ悪党だ。こっちが一枚上手だってぇだけのこったろう? お、そうだ。ところで本物の〝立木文書〟って奴ぁ、いってぇどこにあるんだ? てめえ、知ってるんじゃぁねぇのか?」

 狩谷は肩をすくめた。

「坂本議員は『燃やした』と言ったそうだ。どうやら、それが真相らしい」

「するってぇと若林は、ありもしねぇ文書におびえててめえの首をくくったわけか。所詮策士なんざぁ、その程度のもんだな。だが坂本はどうして文書を焼いたりしたんだ?」

「彼一流の賭けだな。文書を盾に中田と対決しても、勝てる保証はない。逆に、力でねじ伏せられる危険の方が高い。だが、始めから燃やしてしまえば、中田や若林だってありかを探すことはできまい? 文書が坂本に渡ったことは周知の事実だ。現に坂本は、官房長官にまで脅しをかけた。後は黙って笑っていればいい。中田も若林も文書を恐れて手が出せない。坂本はありもしない文書に守られて、いつまでも独自の立場が貫けるわけさ」

「だが、坂本は特捜に『文書を渡す』と言ってきやがったんだろう?」

「それも計算のうちさ。迂闊に手を出せば、検察が動き出す――中田にそう信じ込ませるための芝居だったんだろう。結果は裏目に出たがね。坂本の頭にあったのは中田をどう黙らせるかということだけで、若林の存在を甘く見すぎていたようだ。若林自身がどれほど文書を恐れたか、読み切れなかったのさ」

「検察もいいようにあしらわれたってぇわけか。おかげで俺も楽しませてもらったがな」

「ところであの弁護士――中峰薫といったか? 五億円を持って行ったのは彼なんだろう? 最初から罠師の一員だったのか?」

「まぁ、身内だな。奴がいなけりゃぁ、今度の罠は成り立たねぇ。長屋を荒らしたのも、銃を都合して俺を撃ったのも、みんな奴だ。おかげでここから出てきた証拠品は、全部若林が置いてったもんてぇことになったろう?」

「陰でそんなに動き回っていたのか……」

「取引の時が一番難儀だったそうだぜ。渋谷の事務所から後は入れ替わった竜子が運転したからよ、すり替えがばれねぇように、わざとヘタクソな運転で帰ぇらねえといけなかったんでな。尾行の連中、さぞや笑ったろうね」

「彼はあれからどうしたんだ? 足取りがつかめないそうだ」

「奴か? はは、五億と一緒に静養中さ。どこにいるかは知らねぇ。向こうから電話が入ぇったきりだ。今頃は顔形も変えっちまったろうね」

「ビルの中は徹底的に捜索したが、現金はどこにもなかった。ずっと監視され、すぐに警察が駆け込んだのに、どうやってあれだけの大金を運び出せたんだ?」

「次の朝に宅配便で送ったのよ」

「何だって⁉」

「あのビルに入ぇってる弁護士事務所は、全部で五軒。サツが嗅ぎ回っていたなぁ『中峰法律事務所』――つまり、誰もいねえ空っぽの事務所さ。だが奴はそん時、二階上でちゃぁんと仕事をしてやがった。〝脅迫犯〟が若林の家に入ぇってたはずの、ちょうどその時間に、な。ちっとも疑われなかったとよ」

「そんなこと、なぜ警察が気づかなかったのかな……待てよ、たしかあの日事務所を使っていた弁護士は一人だけだと……。それも、女性の――」

 狩谷は不意に目を見開いて息を呑んだ。

 宗八が笑う。

「気づかれっちまったようだな。その『オフィス・カオル』でぇ。普段は中峰薫だがよ、いざって時の逃げ道にもう一個事務所を構えてたって寸法さ」

「そうはいっても、簡単に女に化けられるか? にわか仕立ての変装じゃ警察を騙せない……。ん? カオル……? まさか中峰薫という弁護士……本当は女性だったのか……? あっ、そうか……竜子さんと双子の……? だから……」

 宗八はにやにやしながらうなずく。

「一卵性双生児たぁいっても、育ち方で何から何まで変わっちまうもんだ。奴ぁ、真剣に男のつもりでいやがるから呆れるぜ。宝塚みてぇなもんよ。なんでも、赤ん坊の頃のストレスとかが原因で、ホルモンの調子が狂っちまったらしい。『男のふりをしてる方が気が楽だ』ってよ。だから俺も、普段は奴を男扱いしてやってるわけよ」

 しばらく口を半開きにしていた狩谷が、ようやく続けた。

「検察も警察も、あの弁護士のことではずいぶん悩まされたんだ。尾行班に見張られていたはずなのに、車の鍵だけ残して消えてしまったからな。しかしまあ、肝腎の若林が死んでしまったんだ。もう些細な点をほじくる奴はいないだろう。どんな事件にだって謎の部分は残るもんだからな」

「気に入らねぇなら、どっからでも調べてくんな。奴は、正真正銘の弁護士よ。ボロなんざぁ出やしねぇ。なんたって俺の〝息子〟さ。抜かりはねぇ」

「でも、赤ん坊の時に彼女を――いや、彼を手放したんだろう?」

「養子にはくれちまったが、大学の時に二親とも死んじまってねぇ。それから野郎、八方手を尽くして俺のことを嗅ぎ出しやがった。その頃にゃぁ一応は司法試験に受かってやがってな。血のつながりってぇのは恐ろしいもんでね、野郎、すっかり罠師が気に入っちまいやがった。ただ罠師の仕事に都合がいいんで、ずっと男のふりをして不良弁護士の体面を保ってたってぇ寸法よ。奴は今でも、二千万ぐれぇの借金がある。逃げ出す口実にするためぇでぇ。女弁護士の事務所を借りたのも、何年も前からだ。男になったり女になったり、二重の生活は面倒だがよ、罠には重宝するんだぜ」

「ちっとも知らなかった……」

「こんだけの隠し球、見抜かれてたまるもんか。今度の罠じゃぁ野郎、本当に何もかも捨てちまったが、それもしかたあるめぇ。ああでもしなけりゃぁ、雁首揃えて墓ん中だったろうからな」

「だから簡単に竜子さんと入れ替われたのか……」

「そこは一卵性だぁね。背格好から動きまで、瓜二つさ。あれだけ豪勢な追っ手を尻に侍らせてたんじゃぁ、そうでもしなけりゃあ騙しきれねぇ」

「しかし双子なら、若林が気づいてもよかったんじゃないのか? 奴が息子さんの事務所に行ったのは、竜子さんに会った後なんだから」

「人間の顔なんざぁ、ちょいといじれば別人に変わっちまうもんさ。ほれ、アタッシュケースに入ぇってた変装道具を使ったのよ。まして若林は、相手が男だと思い込んでらぁ。罠師の足をすくおうと自惚れてた若林なんぞに見抜けるはずぁねぇ。身体の動きを誤魔化すほうがよっぽど難儀だが、双子なら朝飯前さね」

「なるほど、策士は罠にかけやすい……か。おまえが言った通りだったな。そうすると、おまえたちは三人だけで何もかも片づけてしまったんだな」

「それがいつものやり方でね。情報屋はいくらでもいるが、罠師と呼べるなぁ俺たちだけなのさ」

「しかし、これだけの荒業をやってのけて、不安はなかったのか?」

「若林んとこにケースの鍵を二っつ持って行ったろう? 名うての策士なんだからよ、なんか勘づいて取引を反古にされるかもしれなかった。だが、マスコミ連中に見られたまま、奴も芝居を続けた。焦ってたんだろうよ。いつ本当の文書が出てくるか分からねぇんだからな。ま、それはこっちも同んなじだぁ。しかも、モサドの動きも読めねぇ。だからよけいに、大車輪で終わらせたかったのよ。やっつけ仕事の割りにゃぁ上出来だろう?」

 宗八はにやりと笑って湯呑みを空けた。

 狩谷はうなずいて言った。

「そうだ、今日はこれを持ってきたんだ」

 狩谷は傍らの紙袋からアタッシュケースを出すと、コタツの上に置いた。

「証拠湮滅か。悪党め」

「盗聴器を仕込んだアタッシュケースを検察に置いておくわけにはいかない。同じケースと入れ替えてきた。ダイヤも中に入っている」

 ダイヤモンドは、若林のビルの前で老婦人に化けた宗八が運送屋からすり取り、狩谷のポケットにねじ込んだ物だった。

 宗八はケースを開けた。

「ダイヤはてめえにくれてやりてぇが、まだちぃと早かろうな。ほとぼりが冷めたら、また来てくんな」

「そんなものは要らんよ。好きなように使え」

「痩せ我慢はするもんじゃぁねぇ。若林みてえな悪党に魂を抜かれるよりゃぁ、よっぽどましじゃぁねぇか」

「その時はお願いするがね。いくらぐらいのダイヤだ?」

 宗八は二つの桐の箱を開けてガラスの中の石を見つめた。職人の真剣さが目に宿る。

「しめて二億弱。さすがに極上の品だぜ」

「若林の奴、身ぐるみはがれてしまったわけか」

「馬鹿野郎、人聞きの悪いことを言うんじゃぁねぇやい。こんなもなぁ奴にゃぁ端金よ。病気のばあさんが生き残ってるってぇのに、そんな酷い真似ができるか」

 狩谷はしばらく微笑んでから、大きな溜め息をついた。

「なにはともあれ、終わったな。……お、そうだ。ずっと不思議に思っていたんだが、〝星〟を奪った時、なんでカラスなんか使ったんだ? いくら訓練していたって、しょせん動物だ。歴史的なお宝を預けるのは無謀じゃないか? ウラのウラを読む罠師にしては、手抜きにも思えるが」

 宗八はにんまりと笑う。

「そりゃ、手抜きだよな。ブツが本物なら……だがよ」

「偽物……だったのか?」

「ま、どうとでも思ってくれ。みの坊にだって話すわけにはいかねぇ。モサドとの約束だからな」

「約束、って……」

「〝星〟をかっさらったのは、モサドからの頼みだったってことよ……」

 刈谷はしばらく言葉を失ってから、うめくように言った。

「おまえ、モサドとは一体どういう関係なんだ? 今度だって、彼らは本気でお前を追っていたのに」

 宗八は平然と答える。

「モサドったって、一枚岩じゃねぇ。下っ端は、肝心なことは知らされちゃいねぇのさ」

「じゃあお前は、モサドのどこから依頼を……?」

「おっと、あんまり喋っちまうと、命が危ねぇ」

「やっぱり命を狙われてるのか?」

 宗八は真剣な目でつぶやいた。

「俺じゃねぇ。殺されかねねぇのは、みの坊だよ。だから、話すぎちゃいけねぇんだ」

 刈谷は、ごくりとつばを飲み込んだ。正真正銘の恐怖が、背中を走り抜ける。

「なんだか分からんが……信じるよ。あれだけの離れ業を見せつけられたんだからな。……ところでおまえら、これからどうする?」

 宗八はさみしげにつぶやいた。

「〝星〟は返ぇしちまったが、金はたんまり残った。暮らしにゃぁ不自由はねぇ。どうせ贅沢はできねぇ性分だしな。俺ももう歳さ。こんな危ねぇ橋はもう渡れねぇ。罠師は死んじまった――それでいいんじゃぁねぇのかい?」

 狩谷はうなずいた。

「それでいい。俺はもちろん、何もしゃべらない。おまえたちのことに気づいた連中は、みんな感謝しているんだ。おまえの身はこれからも安全だ」

「ま、それを聞けば一安心だぁね」

 宗八は立ち上がった。

「どこか行くのか?」

「かわや」

 竜子がぷっと吹き出す。

「爺いになると、しょんべんが近くてさ」

「てめえこそぼやぼやしてると、半値でも買い手がつかなくなるぜ」

「ほっといてくんな」

 宗八はトイレに消えた。

 と、狩谷が竜子に顔を近づける。頬をゆるませながら、小声で尋ねた。

「で、何なんだ? 大熊の最後の秘密――っていうのは?」

 それは、宗八が警察から帰ってくるまでの会話の続きだった。竜子は気を持たせるだけ持たせて、結論を明かそうとはしなかったのだ。

 しかし一滴以上の酒が入れば、竜子は『他人の隠し事を口にしない』という決心をきれいさっぱりと忘れる。

「おう、それな。だからさ、親父のごひいきは『ギャバン』だけじゃねえんだって。何年か前は、火曜の夜中になるとあたいの部屋からラジオを持ち出してさ。川島なお美にぞっこんなんだと。今だって、グラビアで脱ぐって聞けば、こっそり立ち読みに走ってるんだぜ。爺いが死に切れねえのは、まだ一度も川島なお美の乳首を拝んでねえからなのさ」

 狩谷は、こらえきれずに声を上げて笑った。

 数分後に宗八がコタツに戻ると、入れ替わるように狩谷が立ち上がった。

 宗八は言った。

「大笑いしやがって、楽しそうだったのによ。もう行くのかい?」

 狩谷はこみあげる笑いをかみ殺すのに必死だった。

「仕事が残っててね。それに、今日はいい話を聞いた。今度はいつ会えるか分からんが、元気でな」

「てめえも達者でな。くれぐれも、他人は信用するんじゃぁねぇぞ。それに、疲れたら、いつでも帰って来やがれよ。この長屋にゃぁ、たっぷり空き部屋があるんだからよ」

「分かってるさ。この街が故郷だからな。竜子さんを、幸せにしてやるんだぞ」

「余計なお世話でぇ」

 狩谷はもう一度微笑むと、軽く手をあげて出ていった。

 宗八がぽつりとつぶやいた。

「これにて一件落着、か」

 それまで黙って酒に浸っていた竜子が、すねたように宗八を見上げた。

「よう親父、本気で足を洗うのかい?」

 宗八は呆れたように竜子をにらんだ。

「てめえ、いってぇ何年俺の娘をやってやがるんだ? こんなおもしれぇ仕事、辞められるわけがねぇじゃぁねぇか」


         *


 その夜、四升の酒が二人の胃袋に消え、長屋は竜子の手によって再び壊滅的な打撃をこうむった。



                                     

                        ――了

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