エピローグ

 3日後、医者の言うとおり、すっかり良くなった俺は職場に出勤した。そして仕事を終えると、何故か当然のように職場の前でヤツが待っていた。いつもと違い、なんだか罰が悪そうと言うか、しおらしいと言うか……。

「……先日は、すみませんでした」

「おう、一応悪かったとは思ってんのか」

「もう黙ってつまみ食いするのは控えます」

「控えるじゃなくて金輪際するなよ」

 はい、と小さく返事をするヤツは、いつものムカつくほど颯爽とした面影がまったくなく、なんだか叱られている犬のようだった。

「許してもらえないでしょうか……嫌いにならないでほしいんです」

 いや、元々好きでもなんでもないんですけど。

 コイツが、その気になれば俺など簡単に殺せるバケモノだということを、忘れたことなど一度もない。

 だが、コイツがまるで人間のガキのように落ち込んでいるのは、なんだか見ていられなかった。

「お前がイカれたバケモノだってのはわかってんだから今更気にしねーよ。なんも変わんねえわ」

「……ありがとうございます!」

 何だか、ヤツは嬉しそうに笑ったが、それがどうしてなんだか俺にはわからない。

 そして、何故「じゃあ、またこの後ご飯でも食べに行きましょう」と、楽しそうに(一方的に)約束を取り付けるのかも俺にはさっぱりわからないのだ。

「今度からはちゃんといただきますって言うようにします!」

「いや、そういうことじゃねーよ!」



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

舌は禍いのもと 藤ともみ @fuji_T0m0m1

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

同じコレクションの次の小説