3
ひどい二日酔いのような気分で、目が醒めた。男は上体を起こそうとして、ふいに胃袋が痙攣をおこし、再び地面に倒れこんだ。激しい目暈と嘔吐感。胸に熱いものが込み上げたが、吐くべきものは何もなく、恐ろしく苦い胃液をほんの少しこぼしただけだった。そしてそれは、みるまに砂地に吸い込まれ、乾燥していった。
男は仰向けになり、太陽のまぶしさに目を細めた。位置からみて、どうやら昼頃らしい。汗もでない位熱いのに、まだまだ気温は上がりそうだ。脱水症状で皮膚がかさかさになっているのが、自分でも感じられた。
おそらく今夜の寒さに俺の命は尽きるだろう。それまでの間、俺はこの苦しみに耐え続けなければならないのか。
男は喘いだ。呼吸をする度に熱い空気が気管を焼く。
ふと髑髏が目についた。夜風の悪戯か、半分砂に埋まっている。
貴様が俺に幻想を見せていたのか?
男は力を振り絞って、髑髏の許まではい寄った。こわばる指で、砂から掘り起こす。
髑髏の右頬は、砕けてはいなかった。
タアン──
銃声が砂漠の空にこだました。高速弾が男のこめかみを突き抜ける。男はゆっくりと振り向いた。女がライフルを構え、立っていた。
「気がつかなければよかったのに。気がつかなければ……」
女は足許からサラサラと砂になって崩れていった。頭の部分は右頬の砕けた髑髏となって、しばらく宙に浮いていたが、男が絶命するのと同時にポトリと地に落ちた。
了
髑髏 蓮乗十互 @Renjo_Jugo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます