Love story No.1 料理

 2021年12月02日、現在時刻は05:59。あと1分で目覚まし時計が鳴る。


 ジリリリリリリリリ カチッ


 06:00、僕は定時ていじ起床きしょうした。 トイレに行って、顔洗って、歯磨きして、着替えて、寝癖ねぐせでボサボサになった髪を整え、朝食を食べ、学校の準備をして、家を出て、学校へ向かう。いたって平凡へいぼんな男子中学生の日常だろう。

 だが、今日からは、一つ、やる項目が増えた。 それは、僕の彼女、七瀬帆波ななせほなみの家に帆波を迎えに行くことだ。

 あの告白の後、「毎日一緒に学校行こうね!」と約束したのだ。

 靴を履いて、玄関から家族に行ってきますの一言を添え、玄関の扉を開けて冬晴れの師走しわすの空気を味わう。今となって、霜月しもつきの空気がなつかしく感じる。

 僕が初めて吸った空気は、母親、父親の愛情が混じった師走の空気だった。 今となって、母親、父親の愛情が混ざってるかどうかは知らないが、この空気が好きだ。


 歩いて10分、目的地・七瀬帆波の家に到着した。

 ピンポーン

 玄関から出てきたのは、エプロンを着た女性だった。

 「えーっと、どちら様ですか?」

 まぁそうなるわな。初対面だし。

 「はじめまして。堀田理玖です。帆波さんはいますか?」

 「帆波とどんな関係なの?」

 「恋人です。昨日、僕が帆波さんに思いを伝え、恋人同士になりました。」

 帆波の母親は手を口元に当てて驚いていた。

 「あの子、やるわね。前まで恋愛意識れんあいいしきなかったし。 理玖くんだっけ? 帆波のこと、よろしくね。」

 え?帆波の彼氏として母親が僕を認めてくれた? 幸せにします!


 「ごめぇん!!なかなか髪の毛が言うこと聞いてくれなくて! よし、行こ!!」

 帆波が慌てて玄関から出てきた。靴を履きながら。頭の上で言うことを聞かないアホ毛が可愛くぴょこぴょこ跳ねている。もっと落ち着けよ。時間あるんだし。

 「行ってらっしゃい! 理玖くん、よろしくねー」

 「分かりました!」


 返事をして、冬晴れの空の下を、帆波と歩く。手を繋いでだ。

 帆波と手を繋ぐのは初めてではない。 昨日の帰り、手を繋いで帰ったのだ。通学路が同じの同級生からは、祝福の声が上がっていた。とても恥ずかしい。なんのために屋上で告白したんだ。意味ねぇじゃねぇか。


 「よ、おめでと」

 「なんだ爽太そうたか。ありがとな。」

 「ヒューhy「だまれ!!!!」


 全く、爽太は変わらずバカだ。まぁ、そこが彼のチャームポイントだしな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 帆波の家から学校まではそんなに距離はない。手を繋いでいられる時間がもうすぐで終わろうとしている。

 帆波の手は暖かく、小さく可愛い手をしている。異性と手を繋ぐのは昨日の帰りが初めてだった。 柔らかい。


 「ねぇ…理玖って好きな食べ物ある?」


 帆波がいきなり話題を振ってきた。好きな食べ物かぁ。

 「うーん、特別に好きってものはないなぁ」


 「そっかぁ。それじゃあ、今日私の家で料理対決しない? 審査員は私のお母さんでいいから。 いい?」

「料理なら任せろ! 昨日だって料理したし」

「んじゃあ決まりだねっ! 放課後うちにちょくで!」


 料理なら任せろってのは本当だ。小学生の時から色々作ってきたからな。

 帆波、おいしいって言ってくれるといいんだけど…

 色々心配になってきた。


   ◇◇◇◇


 時は放課後、料理対決のときがやってきた。心臓がバクバクする。

 隣にはもちろん帆波がいる。もちろん、手を繋いでだ。手と手の温もりで12月の極寒ごっかんも忘れてしまう。これは一種のカイロだな。このカイロは冬の間、ずっと暖かい。


 「お邪魔しまー「ただいまー!!」


 僕のお邪魔しますより帆波のただいまの方が声が大きかった。聞こえなかったかな? 後で改めて言おう。


 「んまぁ適当に荷物置いといてよ。ほらっ、キッチン行くよ!」

 「ちょ待てよ!この家初めてなんだよっ!!」


 迷子になるかと思ったがようやくキッチンに着くことができた。さぁ、It’s a show time!!

 

 「さぁ、最初は理玖から! よーい、スタートっ!!」


 帆波のかわいい合図後、俺のチャレンジが始まった。まずは帆波のお母さんを俺の料理で倒すところからだ。 もう作る料理は決まっている。俺の得意料理。


帆波side


 「楽しみだなー」


 足をバタバタさせながら部屋着に着替えた帆波は楽しみそうに待っていた。



 「理玖くん、どんな料理を作るのかしらね。お母さんも楽しみだわ」


 帆波母は紅茶をすすりながら大人しく待っていた。


 □□□□


理玖side


 「んじゃあ私の番ね! 行ってきまーすっ!」


帆波はハイテンションらしく、スキップしながらキッチンへ向かっていった。ってか部屋着に着替えてました帆波さん?!?!?! 部屋着でもかわいいな帆波はっ!! 帆波は360度どこを見てもかわいい。


帆波side


 「もう作る料理は決めてあるもんね!! この帆波に任せんしゃいっ!!!」

 「リビングまで声漏れてるぞー」

 「にゃ?! 恥ずかしいぃぃぃ/// うぅぅぅ。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 お互い、料理が終了した。お母さんの舌を信じるしかない。頼む!


 「まずは理玖くんのね。おぉー!オムライスね! どれどれ〜?」


 ゴクンッ


 「んーん!! 卵がふわふわしてておいしい!」


 体からドキドキが抜けていく。よかったぁあ!


 「次は帆波のね。あら!?これは偶然かしら? 帆波もオムライス! どれどれ〜?」


 ゴクンッ


 「うーん!! 帆波!あなた成長したわね!おいしい!最高!!」


 帆波も高評価を貰ったようで、とても喜んでいた。


 「結局どっちなの?! 一番は?」


 ・・・・・・・・・・・・


 「2人共よ!!」


 「「えぇぇえぇええええぇ!!!!」」


  家一瞬揺れた?結構声がデカかったな。近隣住民きんりんじゅうみんの皆さん、ごめんなさい!!


 「お互いのオムライス食べてみなさいよ

 「「いただきまーすっ!はむっ!!」」


 「なにこのふわふわな卵! めっちゃおいしい!!」

 「なにこのオムライス! 今まで食べたオムライスの中で一番おいしい!!」

 「私、理玖のオムライス好きかも…!」

 「僕も、帆波のオムライス好きかも…!」


 「「んんーっ! おいしーーっ!」」


  理玖と帆波は、お互いの料理が好きになった。もちろん、愛情は別腹。

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ここから、新しい恋が始まります。いや、始めさせて頂きます!! 安城 宇渡 @sammafu

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