正午の再会。灰かぶりは再び魔法に掛かる。
オコナー伯爵からガーデンパーティの招待状がグレイス家に届いたという。それに伴って、ジュリアスからヨハンに声が掛かった。前回と同様、ヨハンがレイラをエスコートすることで、オコナー伯爵との縁を結び、事業の支援を持ちかけようというのである。
オコナー伯爵といえば、公爵の祝賀会で主役とダンスしていたレイラを無理矢理引き剥がし、馬車まで送り届けてくれた人物だ。あの夜は、ただ強欲で傲慢な男にしか見えていなかったのだが、不遜ともいえるその行動が困り果てていたレイラを救うためのものだったと知り、ヨハンは一側面だけで人を判断していた自分を大いに恥じた。ジュリアスに見捨てられなかったのが不思議なくらいである。
今回のパーティは、オコナー伯爵との商談を取り付ける好機であるのと同時に、人を見極める実践の場ともなる。ヨハンは身を引き締めて、グレイス邸に赴いた。
正午。グレイス邸の扉の前で待っていたヨハンは、夫に手を引かれ、二階に通じる大階段を降りてくるレイラの姿に目を瞠る。
浅緑のローウェストのワンピースドレスに、濃い緑の上着を羽織ったレイラの装いは、挑戦的だった夜会のときとは異なり、控えめで慎ましい。それでも彼女の元来持つ色気が浮き立ち、目を惹きつけて離さなかった。
「やあ、ポー。今日もよろしく頼むよ」
斜に構えた話し方は相変わらず。しかし嫌味の応酬の相手に対するものとは思えぬ親しげな態度に、少し安堵する。
「標的は決まってるんだ。今日は確実に仕留めるよ」
まるで狩りにでも行くような獰猛な笑み。だが、その不敵な笑みでさえも魅力的で、ヨハンは彼女に付き従うことに我知らず身を震わせた。
12時発、1時着。 〜灰かぶりの魔法が剥がれる1時間〜 森陰五十鈴 @morisuzu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます