第31話 霊感女子エイミーちゃん、日本上陸

 お久しぶりです。

 横海は人生に疲れました。


 疲れた結果、剣道女子の番外編エピソードを投稿することにしました(息抜きになってるのか?)。


 さてさて、今回お話しするのは、霊感女子エイミーが日本にやってきた時のお話です。彼女との親交は帰国後もしばらく続いており、何年かに一回ペースでうちに遊びにきていました。


「よくある外国人の日本珍道中みたいなもんだろ?」


 というそこのあなた。エイミーを舐めちゃいけません。やはり彼女は、普通じゃなかったのです。


 * * *


 エイミーが日本に来るというので、私の実家に泊めることに。空港で待ち合わせ、やってきたのはとある田舎の港町。長閑な日本の田舎の風景に興奮する彼女を伴い、バスを降りてしばらく歩いたところで、ようやく我が家へ到着。


「エイミー、ここがうちよー。一週間よろしくどうぞー」


「Oh, めっちゃ家ちっちゃ……ゲフンゲフン、趣があっていい家じゃない? うちのリビングルームと同じくらいかな(家全体が)」


「本音が隠せてないわ。ダダ漏れだわ」


 そう、彼女の実家は金持ちで、プール付き二階建ての豪邸。対して我が家はビンボーボロ屋。お嬢様からしたら便所みたいなもんです。ただまあ、それはそれで楽しんでいたようで、見慣れない和室にワクワクしている様子の彼女。


「ここ? ここに泊まるの? フトンをひいて寝るのね、わお、新鮮」


 無邪気にきゃっきゃとハシャぐ彼女は、私の両親にもすぐに気に入られ、まったく日本語がしゃべれないながらも、楽しい晩餐を過ごすことができました。


 しかし、その夜。事件は起こったのです……!

 というか、私は事件が起こっていた事に気がつかなかったんですが、起こっていたらしいのです。


 翌朝、私が起きてくると、ものすごく寝不足な感じのエイミーが、ダイニングにちょこんと座っていました。


「どうした」


 するとエイミーの代わりに応答したのは、私の父。


「なんかヨォ、幽霊見たんだってよ」


「は」


 またか。こいつはまだ囚われていたのか、例の心霊現象に。父は片言の英語は話せるのですが、細かくはわからないらしく、詳しくは本人に聞けとのこと。


「何があったのさ。つーかなに、あなたの幽霊、飛行機乗ってきたわけ?」


「あれはイチカんとこのやつだって。Japanese ghost めっちゃ怖いわ」


 え、マジで? うちに寄生してる系?

 半信半疑のまま聞きつつ、総括するとこういうことらしいのです。


 夜、畳敷の四畳半に寝ていたエイミー。我が実家は、トイレから続く一直線の廊下に分断されており、片側がエイミーがいる和室とダイニングキッチン、もう片側に居間と客間が位置していました。


 真夜中、皆が寝静まっているはずの時間帯にふと目が覚めた彼女。すると、四畳半の周りを、誰かがひたひたと歩いている音がするというのです。


 怯えるエイミーは蛍光灯の電気をつけ、布団の上に座り込んだそうで。その間にも、室内温度はどんどんと下降の一途を辿っていきます。真夏なのに凍えるほどの温度になるにつれ、ひたひたと歩く音はドシドシと重量を変え、和室の周りをものすごい勢いで走り回ったそうなのです。


 しかもね、和室の周りって、廊下とダイニングに面している壁以外は、外壁に面しているわけで。和室の周りをぐるぐる回るって、普通の人間には不可能なのです。


 そのうち和室の扉がバン! と開け放たれたかと思うと、黒い何かが目の前に飛び出してきて、エイミーの顔を覗き込んできたというのです。


 絶体絶命のピンチにやってきたのが、うちの親父。たまたまトイレに起きた親父が、蛍光灯が付いているのに気づき、廊下を声てエイミーの部屋へ。


 すると親父の気配を察知したのか、その黒いモヤのようなものは消え、一気に気温がもとの蒸し暑さに戻ったそう。


「おう、どうした、こんな時間まで起きてて」


「ご、ご、ゴースト! ジャパニーズ、ゴーストぉおおおお」


 しばらく親父と喋ったあと、落ち着きを取り戻したものの、やはり怖くてエイミーは朝まで眠れなかったらしい。


「えー。ほんとにうちにいる系? ……あ」


「何? イチカ、なんなの?」


「それ、私も聞いたことあるかも」


 そう、昔受験勉強をしていた時、私は夜、ダイニングで夜中まで勉強してたんですね。で、確かにたまに、足音を聞いたのです。部屋の周りを歩き回る、謎の足音。


「見える人には見えんだね、あはは。私は音は聞いたけど、見たことはなかったわ」


 結局、それの正体は分からずじまいでしたが、それ以来エイミーは私の実家には泊まりに来なくなりました笑


 なお、最終日には律儀にまた現れ、お辞儀をして消えていったらしい……(ネタじゃなくて、本当に)。


 信じるか信じないかはあなた次第のお話でした☆





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