Episode2 これで最後なんだ。じゃあね

第5話 作戦会議

『それはデートだな』

『そうですね。デートですね』


 家に帰って少し経ってから、星華と和宏を誘ってビデオのグループ通話をした。放課後に朝比奈さんのことを案内したことや、明日に学校周辺の案内を頼まれたことを話し終えると真っ先にこう言われた。

 やはり第三者から見てもデートのように思えるのか。

 俺の思い上がりではないことが分かったが、これではますますデートということを意識してしまう。


『けど、なんか意外だな。あの希望の割には手が早い』

『それは田甫くんに同感です。私以外の女子と話すの苦手そうにしてますからね』


 そんなことを考えてると、なんか不名誉なことを言われていた。


「いやいやいや、俺だって女子と話す時は話してるさ。コミュ障でもないんだから」

『希望とは絶対に目線が合わないってよく聞きますけど?』

「なぜそれを」

『女子のネットワークは凄いんですよ。大体の情報はトイレで知ることができますから』


 恐るべき女子の情報網。


『とりあえず話戻すけど、希望はデートだと思ってるのか?』

「まぁ、それは、その……ねぇ……」

『どうしたんだ?歯切れ悪いな』


 屋上で希望くんと名前で呼ばれたことを思い出す。

 あんな笑顔をされて名前で呼ばれた後に言われたら意識してしまう。星華以外の女子に名前で呼ばれることなんて今までなかったんだから。


『天埜さん!これは何かありましたよ』

『そうですね。分かりやすい反応ですね。何があったのか気になりますね』


 画面越しなのに目の前にいるかのように圧を感じる。

 これはもう言わないと先に進まないやつだ。RPGの冒頭で「はい」と選ばないと先に進めないのと一緒だ。


「いや、その……えっと……名前で呼ばれた……朝比奈さんに」


 ヒューと口笛を吹く和宏。

 あらあらと母親のような反応をする星華。

 なんだか凄く盛り上がってるのが分かる。


「ただ1回だけ!1回だけで!てか、帰り道とか電話の時は國立呼びに戻ってたから!」

『ではここで、同じ女子である天埜さんの意見をどうぞ』

『はい。正確には分かりませが、未生も少しは希望のことをいいと思ってると考えます』


 朝比奈さんが俺のことをいいと思っている。

 もし、それが本当のことだったら嬉しい。あんなに可愛い子に好かれるのは嬉しいに限る。


『希望ニヤけてるぞ』

『変態さん?』

「ニヤけてないし、星華はすぐ人を変態にしないこと」

『まぁ、希望。とりあえずデートかどうかは置いといて、しっかりと案内してやれよ。知らない街って怖いからな』


 和宏も数年前に引っ越してきた。

 同じように引っ越しを経験したから朝比奈さんの気持ちを想像することができるのだろう。いつになく真面目なトーンで話していた。


「あぁ、それはもちろん。ちゃんと案内するよ。けど、学校周辺だと場所限られてくるよな」

『私がすぐ思いつくのは滝センとかですね』

『俺も天埜さんと一緒だな』


 滝桜ショッピングセンター。この名称だと長いため通称の滝センが誕生し、地元の人は滝センで通じるようになっている。

 大型ショッピングセンターで、映画館やフードコート、本屋、服屋と他にも多くのお店が出店している。

 平日は学園の帰り道に寄る人が多く、学園生御用達のショッピングセンターになっている。休日では家族連れで賑わう。何度も滝センには行っているが、空いてるのは見たことがない。


「滝センは確定だよなぁ。学園生憩いの場って感じだから」

『あっ、あそこはどうですか。いつも希望が行ってるオシャレなカフェです』

「マスターに難ありだけど、確かにあそこはいいところだからな。星華ナイスアイデア」

『俺的には公園とか体を動かせる場所がいいと思うな』

「体動かせる場所ね。……じゃあ滝セン近くの運動公園になるな。サンキュー和宏」


 滝センにカフェに運動公園。これなら案内することができそうだ。ただ場所的に1日コースになるため、朝比奈さんに確認はしておく必要がありそうだ。


「よしっ、これなら大丈夫そうだ。2人ともありがとな。助かったよ」

『私達の仲です。気にしないでください』

『そうそう、天埜さんの言う通り。ただ、帰ってきたらちゃんと報告はしてくれよ』

「報告?」

『しらばっくれるなよ。朝比奈さんと進展があったのかなかったのかだ。楽しみに待ってるからな』

『それは私も聞きたいです。よろしくお願いします』


 2人の圧を感じて苦笑いをするしかなかった。

 この後、俺が「報告する」と断言するまでグループ通話は続いていた。変なところで息があっていた星華と和宏だった。

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君の青春は、炭酸水のようだった。 長月紅葉 @kasa1226

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