第4話 明日の約束

 朝比奈さんと別れた後の帰り道。

 今日はイベントが盛り沢山で楽しかった。可愛い転校生がやって来て、1日中机をくっつけて教科書を見て、放課後に2人っきりで学校案内をする。物語の中でしか起こりそうのない体験をできるとは思ってもなかった。

 それに朝比奈さんの可愛い笑顔を見ることができた。これから仲良くできたら嬉しいな。

 そんなことを考えてると、突然スマホが鳴った。

 驚きながらもポケットから取り出すと、朝比奈さんからの電話だった。そういえば解散する前に連絡先交換してたんだった。


「もしもし」

『もしもし。急にごめんね』

「あ、うん。大丈夫。どうしたんだ?」

『明日って暇?』


 明日は土曜日。

 もちろん学園は休みだ。休日は星華や和宏と遊んだり、寝てたり、運動したりとその日の気分でまちまちだ。基本的に当日に予定を入れることが多い。


「明日は暇だな。とくにやることもないし予定は決めてないな」

『ほんと!それは良かった。じゃあさ、明日学校周辺案内してくれない?』

「学校周辺?」

「うん。放課後遊びに行けそうな場所とか教えてほしいんだ。私引っ越してきたばかりだから全然分からなくて。ほら、屋上で話した青春らしいことするために知っときたくて」


 確かに何があるか知らないと学園と家の往復だけになる可能性が高い。そうなると青春とは程遠い生活になってしまう。朝比奈さんのしたいこととは正反対になってしまう。


「そういうことか。了解、俺でよければ案内するよ」

『ありがとう!集合場所とか時間はメッセージで送るね。じゃあね』


 ブツッ、ツーツー。

 電話が切れた。

 休日に前日から予定が入るなんていつぶりだ。とりあえず、今日は準備してから寝るようにしよう。朝に準備して遅刻したらダサすぎる。

 それから数歩歩いてから俺は重大なことに気づいた。


「待てよ…………これってデート……か?」


 デート。日時や目的、場所を決めてから男女が2人っきりでどこかに出かけることを指す。

 けれど朝比奈さんはデートとなんて1ミリも考えてないだろう。朝比奈さんにとっては、青春らしいことをするための準備になるからだ。

 きっとこんな邪な考えをしてるのは俺だけだ。國立希望よ。デートという考えをなくすんだ。今日したことの学園外バージョンなだけだ。意識する必要なんてどこにも存在しない。

 それでも俺の脳内にはデートという語句は残り続ける。


「家に帰ったら星華と和宏にも話してみるか……」


 残りの帰り道でもデートかどうかで葛藤するのであった。

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