第31話 ほな、さいなら、やで。
リンは今、金色の目覚まし時計を綺麗に拭いている。
「リンさん、有り難うございます」
とタッタリアが言うと、
「いえ、さすが美咲ちゃんですわ。殆どお掃除が必要無いくらいに綺麗にしてくださっています」
マルセリーノは今、二人と一匹でコーヒーを飲んでいる。
「ほな、目覚まし時計型タイムマシーンも預けてきたし、予定終了や。そろそろ行くわな」
「マルちゃん、今回もありがとうね!」
「ええねん、そない堅苦しい挨拶は抜きや」
「マルセリーノさん、お世話になりました」
「まぁ、心配ないやろ。ええか、風に乗れ。そん為にはな、翼を広げろ。風が吹いて来た時に、直ぐに乗れるようにな。風は既に吹いてる。どの風に乗って何処へ行くかは、お前次第や。一番好きな風に乗って、好きな空を選べ」
既に青い空から無色透明に近い階段が降りて来ている。
「ほな、行くわ。お前、もう美咲ちゃんが星に願わなあかんような生き方すなよ」
「はい」
「美咲ちゃん、こいつの事、ワイが仕上げ出来へんかった事、頼んだで」
「私が? 仕上げ? って教えてくれるよね」
「簡単なことや、風になれ、美咲ちゃんが全ての風のひとつなったらええんや」
「うん、やってみる!」
「ほな、さいなら、やで」
「マルちゃん、ほな、さいなら!」
マルセリーノが黄色い足をタラップに掛けると、階段がスルスルと空へ登って行く。
「マルセリーノさーん!」
「おう! ほな、さいならやー」
「旅の話、兎のムーの話、異次元体験できた話、お話しできませんでしたよねー」
「ええ?何やてー、異次元がどうしたってー? 兎の旅がどうしたってー」
「そうじゃなくてー、私の一人旅の話ですよー」
「一人で兎がどうしたってー? もうあかんわー、何も聞こえへんわー」
一匹のペペンギンの姿が透き通るような青い大空へと消えて行った。
ペンギン仕掛けの目覚まし時計 6 織風 羊 @orikaze
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