きぼうとブラジル

@eight-p

第1話

きぼうとブラジルってどっちが遠い?


15歳長男が言った。

ZOZO創立者前澤友作氏が国際宇宙ステーションきぼうに行ったね、今日は夕方きぼうが見られるらしいよと話していた時だ。


そんなの、きぼうでしょ。と言う私に微笑む彼。そういう時は大体私が間違っている。


日本からブラジルへ飛行機での直線距離は17,370㎞。もし地面を掘り進んで着いたとしても12,742㎞ある。

一方、きぼうまでは約400㎞。東京京都間と同じくらいだ。地球から月までの1000分の1のところをきぼうはぐるぐる回っているらしい。


この前北海道に行った俺たちの方が遠くに行ってるってことだよ。


子どもたちは、私の常識を簡単にくつがえしてくる。


************


夕方、きぼうを見に行こうと我が子たちを誘ってみたが、あ、大丈夫です、と着いてこなかった。飼い犬を連れてひとりで見に行く。

近所の公園の広い芝生広場に行くと、薄暗い中で高校生たちがサッカーをしていた。

犬だ、かわいいと近寄ってきた彼らに、あれ見える?と動いていくきぼうを指差す。ほんとだ、動いてる!

今あれにZOZOの人乗ってるんだよ、と言うと、あ、Twitterの人?すげー!前園!!!

あれ?前園?前澤?

愛すべき高校生たち。


************


前澤さんが宇宙からツイートした地球はとても美しかった。

直線距離は近いとはいえ、地表を移動するのと、上へ上がっていくのは桁違いな冒険。

有言実行な冒険家。ファーストペンギン。


10歳、2分の1成人式で、ファーストペンギンになると将来の抱負を語っていた長男。

この間、進路をどうするか聞くと、誰もしたことがない勉強をしてみたいと言った。

彼はこれから、どんな初めてに出会っていくんだろう。

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