読み終えて、たとえようもなく強烈な感情に言葉を失いました。
人が生きるということは、まさにこういうことです。
世の中に溢れる人々、一人一人が、こうして自分自身の生を、一秒一秒を、死に物狂いで歩いています。それぞれの身の上に起こったことを背負いながら。
だから、関わり合う全ての人に、愛情を向けたい。恋人だから、家族だから、友人だからではなく、隣にいる人の生そのものを大切にしたい。愛したい。
そばにいる人を無神経に傷つけること、下に見ること、嘲笑うことが、どれだけその人を傷つけ、苦しめ、絶望させるのか。どれだけその人の生を狂わせてしまうのか。今生きているすべての人間は、そのことに気づくべきです。自分自身が満たされれば、本当にそれでいいのか。そうやって人を踏みにじった上に作っていく人生が、どれだけ傲慢で汚れた物であるか。
それに気づけない人間は、今すぐに人間をやめてくれ。心から、そう思わざるを得ません。
一人でも多くの人に、この作品を読んでほしい。心から、そう願います。
本作はハーフエッセイとあります。「ラブコメのような、エッセイのような。そんな作品です」とも述べています。
物語は、悲惨な出来事によりどこかが壊れた主人公の視点で進みます。どこか現実から隔たっているのだけれど、起きている現実は現在進行形で悲惨で、悲惨であるが故に遠くから見ているつもりでなければさらに深く壊れそうなほどに。
その構図は、本作を読む読者にも当てはまります。これは事実なのか、創作なのか。物語として美しくまとまった展開の、実のところはどれほどすさんでいたのか。想像すると深みに嵌まります。
軽々しく、理解した、と言うことはできません。小説の読者の立場を踏み越えようとすると引き返せなくなります。それは本作における主人公の恋人のように。
評者は、そう考えたとき、メビウスの輪として全てつながったように思えました。