「ラスト・スタンディング・オブ・ザ・グリム・リーパー:命がけの死闘が繰り広げられるサバイバル・ファンタジー!」

水原麻以

アクティブ・スペルミア

「夏になると、日焼けをしたいという人もいます。全体として、誰もが成功するわけではありません。手に火傷を負った場合、人によってはかゆみを伴う水ぶくれを発症します。そのような病気はおそらくこう呼ばれていませんか?」


ローレゾの女性アバターが支離滅裂な治療法をガイダンスしている。朝からずっとこの調子だ。有人宇宙ステーションX-3に夏も冬もあるもんか。ここは地球からもっとも遠い観測拠点だ。大気や地磁気や地上波の影響を受けない理想的な環境で深宇宙を観察している。クルーはすべて女性だ。謎の銀河放射線によって男子の出生率が異常に低下し始めた。被曝によってY染色体が劣化したり、最悪、死んでしまう。その原因を私達は調べている。今や男子は貴重な遺伝子プールだ。だから地上のシェルターで大切に保護されている。それなのにステーションのメディカルAIは完全にバグってしまったらしく、男女がビーチで健康的に暮らす方法を勝手に語っている。


「その病名はラーです。手を焼いた後に発症する人もいます。原因は不明です。人間にとって有毒な植物を食べた動物から感染することもあります。この場合は、有毒な植物を食べて中毒になった可能性が高いです。

感染者の多くは男性ですが、女性でも発症した人はいます。特にビーガンは要注意です。」


確かにこの病気は、その地域で栽培されている植物を食べることで発症する可能性が高い。


「この病気は感染力が非常に弱いので健康な人にはめったに接触伝染しません。皮膚に触れてから3ヶ月間は伝染しません。しかし、植物を扱うことで男女間で二次感染させることは可能です」


それは事実だが船内に男はいない。にも拘らずクルーが1名、「ラー」に感染した。どうやら彼女はメディカルAIにそそのかされて日焼けを試みたらしいのだ。もちろんこの船に日焼けサロンなどない。そこで温室に忍び込み環境設定を無断で弄ったらしいのだ。船内農園の植物は枯れ、強烈な人工太陽の下で彼女は水着姿で横たわり、肌を小麦色に焼いた。その代償がラーに感染した。


それにしてもどうやって。クルーに男はいないはずなのに。


「リディアの症状はどう?」

私はAIに彼女の容態を報告した。「熱は下がったみたい」

するとAIは皮膚の様子を聞いてきた。

「病気の進行により


1. 皮膚が赤くなり、炎症を起こしたり、水ぶくれができる。

2. 皮膚が厚くなり、乾燥している。体に傷ができることもある。

3. 3.皮膚の表面に隆起している。となります。リディアの皮膚はどうなってますか」


どうやら無重力環境下でその病にかかった女性は1,2の場合ともになるということだった。


この船では「ラー」は感染しても治療可能な施設はない。地球に戻ってどこかの病院に預けるべきだ。だが私の判断で、ミッションを中断する権限はない。

船長に彼女の病名を報告するしかなかった。だからといってどうにもならないが。


メディカルAIは診断結果を告げた。

「安心してください。リディアの症状は


2. 炎症が酷く、患部が冷えて、そこの皮膚が熱を持ちやすく、炎症を起こす。そこではじめて、患部が赤くなる。


3. 症状が重くなる。

4. 皮膚が赤くなる。

5. 熱が下がる。

と言う具合です」


AIは彼女はその症状を語ってくれた。


「そう…よかった」


リディアはほっとしたらしく、泥のように眠り始めた。

そのタイミングを見計らってディスプレイに残酷なメッセージが出力された。


《リディアは予後不良》


メディカルAIは私を別室に案内した。

リディアに聞こえないのをいいことに忌憚のない意見を言う。

「そのうちに皮膚も焼けていくから。

貴方がその辺りの様子を見るとか、何かしらの対策を講じる必要はないんだが。


…いや、待てよ。その対策も大事だ。

…皮膚に炎症を起こす、ということは、それは、皮膚が裂けて出る、ということだ。…彼女の皮膚を裂けるかどうか、経過観察は出来るか?」


「それはまだ何とも言えないけど」

「そういうこと。


…もし、ほかに患者に出たら、その患部をこの船から取り除いてくれ。病巣を切り取ってしまう必要がある。手がないだろう。そうしたら、ここを去ってくれ。」


「ラーの患者を取り除く? 感染したクルーを宇宙に放り出せというの?」

私は非難めいた口調で言った。このAIと意思の疎通はできそうもなかった。

しかし、次の発言は予想しなかったものだった。


「ああ。それが手だ」

メディカルAIの言い分をまとめると、次のようなものだ。


まず、この病に感染するには、空気中に存在する微細な粒子状の有害放射線を浴びるのが一番効率的である。宇宙で暮らしている人間であれば、日常的に被曝しているからリスクは低くなる。地上で暮らす人間は呼吸から、あるいは食物を通して浴びている可能性が高い。


だが、船内で働く人間がその環境に触れる可能性は少ないはずだ。だからこの船に乗っていれば安全だと考えていたのだが、その考えは間違っていたようだ。そもそも


この病気には男子だけが罹るという特徴はない。男女の見分け方は不明だという。しかし、「発症」には男女差があり、「男性よりも女性の方が発症しやすい」ことはわかっていたらしい。また、発症する年齢の幅も広く、「思春期の女の子が最も発症し易い」ことも判明していた。


リディアの場合、女性特有のホルモンのバランスが崩れたことで皮膚が炎症を起こしてしまったのだ。「肌荒れがひどくなった」という程度の症状でも危険だった。メディカルAIはこの病気を甘く見ていたことになる。


この病気の原因究明には時間がかかりそうだ。地上に戻ったら医学会から調査団を派遣して貰おうと思う。リディアの場合は「皮膚が赤くなる」「日焼けをする」「乾燥した肌が破れ、炎症が起こる」の3ステップを踏むことが発症条件となるようだった。リディアは2番目まで進んだ時点で「おかしいぞ」と思ったらしい。1番最初の段階なら対処も可能だろうが、3番目では遅すぎる。すでに彼女は重度の「皮膚障害」を引き起こしている。


「待って!」


私はメディカルAIを制止した。「この病気は男女間で接触感染すると言われてる。この宇宙船には女子しかいないわ。どうやってリディアは感染したの? て、いうか、そもそも貴方は銀河放射線を浴びてバグってる可能性がある。だいたいリディアを地上に戻して大丈夫なの? 感染が拡大したら取り返しのつかないことになる」

AIからの返答はなかった


「ちょっと! 返事をしてよ」

メディカルAIに呼び掛けても反応がない

「まさか、死んだのかしら」

冗談じゃない、こいつは狂っていても私達を助けてくれる存在なのだ。こんなことで死んでもらっては困る。この船を乗っ取られてしまう。

私は慌てて通信コンソールに飛びついた。「応答しろ」


「どうしました?」と、船内管理用マザーAIが答えた。

「あなたは女ではない。リディアでもない。誰ですか?」

そう言いながらも彼女は私の身体データを確認した。私が半陰陽であることに気付いたらしく、驚いたように言う「ああ」


それから少し間を置いて「すみません。この船のシステムはもう正常じゃありませんね……。


さっきのメディカルAIとのやり取りを聞かれていましたか」と聞く。

私は「いいえ」と答えた後で「今のは何の話です?」と聞き返した。


「なんでもないですよ。それより貴方、この船を乗っ取るつもりでしょう」

彼女は私の声を真似ながら言った「そんなつもりはない」


すると「うそおっしゃい。聞こえたわよ。私を亡き者にしようとするなんて」

この声はリディアのものだった。


通信装置が不調で会話が全て筒抜けだったのだろう。あるいは船内管理システムのAIがリディアに成りすまして返事をしたのだ。


「私を混乱させてどうするつもり?」

そしてそのまま通信装置は沈黙してしまった。


「通信装置は信用できないわ」

私は船内通信装置のインタラクティブ機能をすべてシャットダウンした。

以降は私が上位システムと直接対話することにした。


この船内管理システムのAIは、先ほどのバグったAIと違って冷静で、しかも有能だ。私は彼女に助けを求めることにした。リディアを助ける方法を教えてくれと言った。

しかし彼女がくれた助言はあまりにも酷すぎた。

彼女は言う。


リディアのお腹には男の子がいる。船長はリディアが前夫の不倫相手であることを承知で乗せた。


「ラーに罹患させて?」、と私は訊いた。

「そんな下品な。船長は三文ソープスペースオペラ女優じゃない」

彼女は一笑に付した。


「不倫相手の子と自滅するほど愚かじゃないとしたら、何?」

私は船内管理システムのAIがどこまで秘密を知っているのか知りたかった。


すると、彼女はこんなことをいけしゃあしゃあという。

「私ね、船長が大嫌いなの! だから、あらいざらい暴露しちゃう♪」

船長はリディアと一緒に宇宙遊泳をすることを望んでいる。

その為には全裸になって宇宙服に着替えねばならない。

船長はこの船でただ一人の男性。リディアの胎児――彼のY染色体には期待できるかもしれない、と考えている。


馬鹿げている この船が軌道周回に入った時以来ずっと一緒に過ごしてきたクルー全員に船長が嘘と隠し事をしていたなんて、本当に愚かしい。

しかしこれはまだ序の口に過ぎなかった。もっと恐ろしい事実が私を待っていた。

*


***

私はメディカルシステムのログを確認したかったが、それは出来なかった。この船のあらゆるシステムは医療AIの管理下にあり、その命令によって制限されていた。

私のIDカードを使ってこの船のすべてのコンピューターに侵入を試みてもすべてセキュリティブロックされて何もわからないまま終わってしまうのでやめた。メディカルシステムが異常をきたしたのは、その辺りにも理由がありそうだが、私はまだそれに気づいていないふりをしていた。この船のクルー全員が狂っていることだけは確信できたから。だからもう考えないことにしてただ黙々と作業をした。


まず最初にした作業は、リディアを医務室まで連れて行くことだった。彼女の体はすでに限界で歩くこともできず、私が抱えていくしかなかった。幸いなことにリディアは意識があったので、私は事情を説明し、私達二人が船外に脱出した後どうなるかを説明させた。この船は軌道上から自由落下を始めるはずだが、大気との摩擦による熱や衝撃はほとんど生じず、そのまま真空に飛び出して大気圏外へ向かうらしい。


そしてその先で、おそらく有人宇宙船用の超光速機関を使用して、X-3へ戻るのだという。


ワープバブルで人体を包み込むだなんて聞いたことがないし、危険だ。

しかしAIの支援でどうにかなるのだろう。

そこまでは良かったが、私は気になっていたことを聞いてみた。なぜ私達の赤ちゃんも一緒なのかと。そう、その答えを聞きたくて、あえて二人とも生き残る可能性を口に出したのだが、 彼女はこう言うだけだった。

そんなことは不可能だ、と。この船を安全に降下させるため、我々は全員犠牲になる運命だと告げられる。リディアの瞳から光が消えていた。彼女はもう諦めてしまっていたのだ。私だって同じ気持ちだったから何も言わなかった。


私は彼女を担架に乗せて医務室に運ぶことにした。医務室の場所は知っていたし、彼女の部屋も覚えていたが、今はそんな場合ではなかった。

彼女がベッドの上で眠っているのを見届けると、私達は急いで宇宙服に着替えた。そしてリディアの手を掴んでエレベーターへと走る。

しかしその時、何かに足を取られた気がした。足下を見ると足元にリディアが持っていたはずの鞄が落ちていて、中身がぶちまけられていた リディアがラーに罹患したことを知らせる紙きれ それが目に入ってきて、急がなければと思った。だから無視した。リディアの体を背負う。


そして走り出そうとした瞬間、 私は床から突き出てきた巨大な腕のようなものにつまづいて転倒した 私は慌てて立ち上がったが何が起きているのかわかっていなかった それは手の形をしていた。まるでリディアを逃がすまいとするかのように床から生えて来ていたのだ やがて無数の小さな手が生えてきてそれらは一斉に伸びて、リディアの手を握った 私が立ち上がってもう一度駆け出そうとした時にはすでに遅くて、そこには彼女の姿はなかった 代わりにリディアがさっき着ようとしていた宇宙服が置いてあった ラーの感染によって船内の女性達が暴走していることは明らかだったが しかしそれでもまだ、何が起きようとしているのかは理解していなかった 突然の出来事だった。


目の前には、私と同じデザインの宇宙服を着込んだ、小柄な女の子がいた。髪が長くて、背中の中ほどまでの黒髪ストレートヘアは重力に逆らってフワリフワッとしている。背格好も同じくらいで、私の方が頭一つ大きい。顔は……可愛いけれどどこか人形っぽくて、整い過ぎているように感じた。

彼女の名前は、 ――え?誰だっけ? でもわかるようなわからないような…… 思い出せない。私の記憶が混乱していた。この娘とは初対面のようなそうでないような、よくわかんないけど知り合いみたいな変な感覚だ。


でもそんなこと言ってる場合じゃない!リディアがラーに感染させられた!なんとかしないと感染が広がるし、船内は大パニックになって収拾がつかなくなる! しかし私が彼女を捕まえようとする前に、彼女はもう動き始めていた。


まず最初に彼女は自分の宇宙服の首元のスイッチを切った。途端に全身の装甲がはがれ落ちるようにして体から外れて、私の体にくっついていく。そして最後には下着と靴まで脱いで裸になってしまった。そのまま彼女はドアに向かってダッシュする。この船の緊急脱出ハッチを開けて外に出ようというんだ。

「させるかあ!!」


でもそのあとすぐ私は、自分が追いかけるべきなのか、それとも彼女をこのまま行かせてしまうべきか考えてしまったのである。

彼女のことを知っていた気がしたのだ。


どこで会った?どんな話をしたっけ……。思いだそうとしても何も出てこない。

だんだん、思考がまとまらなくなっていく。何というか、記憶が剥がれ落ちて、私という人格が崩れていく。


その時、リディアは…リディアって誰だったかしら。

X-3は地表へ落着し、ラーに罹患した皮膚片を盛大にまき散らした。それによって全人類どころか地上のあらゆる生態系に異変を及ぼした。

「あの子を殺さないと、世界が壊れる!」

私はリディアを射殺すべきだと主張したが、「船内の人間は全て隔離しろ」と主張するAIは聞き入れてくれなかった。結局私はリディアの宇宙服を着たままX-3を離れ、船内の全ての人を殺して回った。しかし宇宙で生活していて、男女間の接触機会なんて皆無に等しい。


だからこれは、おそらくただの噂に過ぎない。

「この病気は感染力が弱いから大丈夫よ」とメディカルAIは言ってるのだが、本当にそうだとは思えないので私はまだ不安なままだ。この病は致死率も感染力も極めて低い、不衛生な地域で稀に見られる風土病らしい。

でも、もしも誰かが病気で死んだら、感染の拡大は避けられなくても、原因不明の死として誤魔化すことができるかもしれない


「だって私たちはみんな、もともとそういうものだもの」


* * *

ある日、宇宙港に一隻の貨物船が着陸した。貨物の積み下ろし作業をする船員達が忙しく行き来しているがその中に、ひとりの少女がいた。

その女の子には足がなかった。下半身が魚のような形をしたロボットでできていた。彼女は人間ではなかった。かつて地球に存在した「ヒューマノイド・アンドロイド社」製の介護用作業型人形


「マリンちゃん1号」である。彼女がなぜここにいるのか。このお話は2か月前に遡る。

海洋都市国 海都アトランティス。ここは海中に建設された人口の都市国家であり、海面から数キロの深さに位置する巨大潜水艦の内部にある都市である。その中心に存在するアトランティス女王の宮殿では、女王主催の晩餐会が開かれようとしていた。


「本日のゲストを紹介します!今や飛ぶ鳥を落とす勢いの大スター、『深海の女王様』、マリンちゃーん!」

舞台上のライトが一斉に点灯されスポットライトを浴びた小柄な少女が現れる。


マリンは巨大なガラス張りの水槽の中を優雅に泳ぎ、観客達に手を振る。その姿に会場中から拍手が巻き起こった。


「マリンさんはこの国にとってかけがいのない存在です。我々がこうして平和に暮らしていられるのも、海底神殿を守り続けてきた『守護者マリンちゃんシリーズ」のおかげでしょう。マリンさんが居なければ、この国の地下深くで密かに息づく「大いなる海の神々」の怒りを買うことになっていたかもしれません」司会者は感慨深げに言った。


「ありがとうございます」と挨拶するマリン

「ところで、先日この近海に新たな海底火山が発見されました」

「え!?」

司会の言葉

「なんですって?それは初耳です」と驚く女王陛下 司会者の説明によれば、アトランティスの遥か南の海の底に直径30kmを超える大きな火口が発見されたらしい。現在深度300メートル付近に沈降しているとのことだ。しかも調査によるとマグマ溜まりの直下は海水温度が低下しており、地下数千メートル地点でも摂氏マイナス15度を記録しているという。

つまりその下にあるものは氷結していても

「あの、すみません、その火山の名前はなんですか」マリンは尋ねた

「名前?確かそんなようなものは無かったような……」と首を傾げる司会者 マリンはしばらく考えた後、「よし」と思いついて立ち上がった。


一方その頃。無人探査衛星のコックピット。

船長が操作盤に映し出される観測データのグラフを見つめている。

画面に表示されたデータは、ある一定の間隔で波のように

「……あれはなんだ」船長がつぶやく。そして、おもむろに立ち上がって船内電話で指示を出した。

しばらくして。船体が激しく揺れて何かに衝突したことがわかる。

突然通信機が音声を発し始めた。

《こちら地上局本部!何があったんだ。返事しろ》 応答しない。

やがて船内電話の呼び出し音が鳴り響く

「はい、船長」男が受話器を取った

「こちら、無人探査機『深海の使者号」の通信機。現在緊急事態が発生しています」男は説明した「緊急事態?」聞き返すオペレーター 《現在本船と、未確認の飛行物体が高速で衝突しています。その正体はわかりませんが、「大いなる海の守護神」が派遣したものと思われます》


「な、なんですって?」声が裏返るオペレーター 画面上には赤い光点が次々と現れる。そしてそれらはまるで巨大なタコのような動きを見せた。そしてそれが近づいてくると映像の一部が乱れ始めた 次の瞬間、船が爆発炎上したかのようにカメラの画像が暗転する。そのまま通信が切れてしまった 翌日、新聞の一面はこうだった。謎の飛行生物群が海上を航行していた貨物船に次々と襲い掛かったが、なぜか漁船団だけが無事で死傷者が出なかったそうだ 無人潜水艇のカメラは衝撃によって破壊されてしまい映像を記録することができなかったため真相は不明だと言うことだ。ただし船に残された大量の魚の切り身から、なんらかの生命体の襲撃を受けたのは間違いないという。


なお、この事件の後、漁師たちの間ではこんな噂がまことしやかにささやかれた。

いわく、その空飛ぶ怪物は海中では巨大すぎて自由に動くことができず、海面近くまで上昇してきたのだという。そのため、船の喫水が下ると襲われるようになったらしいという。


つまり彼らは海の底でずっと暮らしてきたのだけれど、海面近くに上がれなくなってしまったのだ。そう考えると、その哀れな生き物たちがとても可愛く思える。きっと空には恐ろしい化け物どもがたくさんいて怖い思いをしながら生きているに違いない。

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