昔話のくせにめっちゃSFな桃太郎前話
ビー!ビー!(警報音)
室内に騒々しい警報音が鳴り響いている。これは侵入者を発見した時に鳴るように設定された音。つまり、何者かがこの建物内に入り込んでいるということなのだ。
「隊長!侵入者です。」
「場所は」
「フロア1入口です」
正面から殴り込みに来るとはいい度胸だ。こちらも侵入者対策はバッチリしてある。
「管制室総動員。フロア1からここに繋がる全ゲート封鎖。迎撃システムオンライン」
「了解!」
その掛け声と共に一斉に隊員は動き始めた。刻一刻とタイムリミットは迫ってくるのだ。私も休んでいる暇なんてない。
時は20XX年。私達はいわゆる国家反逆団体。今侵入してきている連中はもちろん国の連中であり、私達を潰しに来たのであろう。まさかここまで早く見つかるとは思わなかったがしょうがない。迎撃の後即座に基地の移転をしなくてはならない。そのためにも現在危機にさらされているこの状況を打破するしかないのだ。
「念の為、全ての重要なデータをバックアップ。USBに詰め込め!」
「イエッサー!」
「敵、フロア1突破。下がってきます!」
(くっ…)
思いのほか早く突破されてしまったか。所詮はただの組織では国には勝てんのか…だが、負けられない。私達は国家を変えるのだ!
こちらの切り札である超戦略級個体バージョンMを渡す訳にはいかん。
「敵、フロア2に突入。迎撃システム毒ガスを開始します」
こちらとしても戦闘要因は確保できていない。人の手で殴り込みにいくよりも技術スタッフの多い状況から考えて、化学戦闘が好ましい。
これで死んでくれればいいのだが、果たして。
毒ガスが充満し終わり、カメラの視界が晴れてきた。
「フロア2モニター拡大しろ」
「拡大します」
メインモニターにフロア2のカメラ映像が大きく映し出された。みんなが固唾を飲む。これで酷いことに死体が転がってれば私達の勝ちだ。さぁどうだ。
「ひっ」
全員が恐怖の声を出した。
「誰も死んでいない」
この場全員から命の危機を察知するような慌て声が漏れ始めた。
まさか、誰も死んでいないなんてどんな化け物達なんだ。やはり既存研究では人間における毒ガスの致死量の資料しか残っていないのが災いだったようだ。スタッフの中でも人間の致死量では彼らは死なないと訴えている者もいた。多少成分を足したが甘かったようだ。彼らには私達の常識では倒せないのかもしれない。そう、鬼には。
「フロア3も突破されました!」
「なに!銃器の使用を認める。機関銃装填!」
「了解」
この国は現在鬼が支配している。鬼が我々を管理し、政治のトップに立っている。人間は不当な立場を強いられている状況なのだ。そんな状況を打破しようと結束されたのが国家反逆団体ピーチだ。鬼達は平等な共存は望んでいない。当初はその話を持ちかけて交渉しようとしたが、結果は宜しくなかった。彼らは人間を支配することに優越感を得ている。その鼻を折るためにも負けられない。
「機関銃…効きません」
「なんだと!」
ここはフロア10。そう簡単には来られないと思ったがこのままではすぐに来てしまう。やむを得ん。
「バージョンMを使おう」
「な、隊長あれはまだ完成してません。培養機から出したところで使い物には…」
「ここでは使わん」
「どういうことですか」
「技術スタッフが開発していた時空間移動装置。通称タイムマシーンを使用する。」
「待ってください。あれも使えるかどうか分かりません。テスト段階です」
「構わん。それに賭けるしかない。さもなくば死ぬぞ。時空間移動した先の者に育ててもらうのだ」
皆が凍りついた表情になった。
「分かりました。起動させます」
「うむ、ではバージョンMも準備。時空間移動装置に搭乗。後、過去に飛ばす」
スタッフが切羽詰まった状況でプランを遂行し始めた。その間にも鬼達は我々の場所に近づいてくる。こちらが先かあちらが先か。生か死か。私の手に汗が滲む。ドアから大きな桃の形をした物が到着した。そう、これが時空間移動装置。
「時空間移動装置起動しました。」
「バージョンMはまだか!」
「もう来ます!」
「その間に飛ばす先を決めるぞ」
「1500年前にしましょう。まだ鬼がほとんどいなかった頃に。」
「うむ、それがよい。では地形データを機械にアップロードだ」
この装置は便利ではない。時は跳べても場所は動けない。つまり、緯度と経度はそのままで時を跳ばなければならない。場所が悪いと時空間移動損になってしまう。そう、この個体を拾って貰わなければならない。
「バージョンM来ました」
(地鳴り音)
くそ、もうそこまで鬼は来ている。
「急げ!すぐにバージョンMに鬼殺しの情報をアップロード。鬼殺しを意識するようにしむけろ」
「フロア8突破。もうすぐここに来ます」
間に合え…
「地形データアップロード完了。場所は川です」
「よし、まずまずの場所だ」
「隊長!もう鬼が」
表ドアの奥から殺気を感じる。
やばい、死ぬ。
「バージョンM到着!行けます!」
「よし!出せええぇぇぇ!」
「スイッチオン!」
その場は物凄い光量で埋め尽くされた。これで我々の勝ちだ。あとは、あの桃型の機械誰かに拾われて育ててくればミッション完了だ。鬼が力を付ける以前にて鬼を倒す。さすれば未来は変わる。頼むぞ、バージョンM…桃太郎よ…
???「はて、川に大きな桃が流れてきておる。帰ってじいさんと食べようかな」
こんな個性が尖った登場人物の昔話は嫌だ 狐猫 @kitsunekoon
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