出来損ないの兄に苦労する三匹の子豚

昔昔ある所に三匹の子豚が森に住んでいました。長男から「大ブタ」「中ブタ」「小ブタ」の三兄弟で仲良く過ごしていましたが、母ブタに自立を促され兄弟達はそれぞれ家を作り生活することにしました。

では、ここまでが既存の物語。ここから先は末っ子の「小ブタ」の視点にて物語を進めていくとしましょう。


「家どうしようかな」

僕はブタの三兄弟末っ子の小ブタです。なんでこんなこと言ってるかというと、アパートの家賃滞納して追い出されたとかではなく、母から自立しなさいと強制的に実家を追い出されたため家探しに困ってます。不動産屋があれば何分楽なのでしょうが、生憎ここは物語の世界。そんな便利なものはありません。兄達との共同生活も考えたのですが話し合いの結果各々が家を探して別々に生活するとの結論に…

とりあえずは雨風しのげれば問題ないですし、そこまで贅沢は言いません。ま、ここはメルヘンな世界。都合悪く雨なんて降りません。雨降ってる童謡なんて見たことないでしょ?そういうことです。焦らずとも簡単にへこたれないということです。兄達が気になりますので参考がてら見てみることにします。


「おーい、大ブタ兄さん」

「おぉ、小ブタ。家どうにかできたか」

「まだだよ、兄さんは?」

「ほら、できてるぞ」

ん?できてる?いや、僕の目の前にあるのはただの藁の山、言ってみればゴミです。

「なにそれゴミ?」

「失礼な、藁の家だぞ。簡単に作れて凄いだろ」

なんなんでしょう。こいつはバカなのでしょうか。

「どうしてそんなもので」

「茅葺き屋根を参考に」

白川郷かよ。いや、あれ藁じゃないでしょ。てか、屋根の素材だから。家全体の素材にはならないって。

「大ブタ兄さん、だからと言っても家全体を藁ってのは」

「なんだよ、家入れないぞ」

入らんわアホ。

「ごめんごめん。と、とりあえず中ブタ兄さんのとこ行くね。じゃまたね」

長男がこんなだと弟は苦労します。こういう経験は兄弟がいる人は感じたことあるのではないですか?出来の悪い兄…しんどいです。


次は中ブタ兄さんです。

「おーい中ブタ兄さん」

「おぉ、小ブタよ。どうしたんだい」

「家どうしてるかなって思って見に来たの」

「そうかそうか。大ブタ兄さんのとこにも行ったのか?」

「あ、うん行ったよ」

「兄さん馬鹿だよな。藁なんて」

お、よかった。次男はあれのおかしさに気づいています。

「そうでしたね。で、中ブタ兄さんはお家は」

「木で作ったよ」

まともな兄です。木で作っているのであれば問題ないでしょう。ん?そんな短時間で木造建築なんて作れないだろうって?待ってください。先程も言ったでしょう。ここは物語の世界ですので、都合の悪いことは起きません。都合が悪くなれば時間の経過を操作することなんて他愛もないことなのです。便利な世の中ですね。

「なるほど、木ですか。それは安心ですね。」

「ほれ、こっちだ」

どれくらいの大きさの家を作ったのでしょうか。

「これだ」

「え、」

僕の目が狂っているのか、頭の処理が追いついていないのか…目の前に現れたのは木造建築。確かに言葉の上では木造建築かもしれません。ですが、なぜ、なぜ、木の枝なんだ!

「兄さん木造建築って」

「そうだ!木の枝だよ!」

嫌だ!兄さんのバカん!中ブタ兄さん賢いって思っちゃったじゃん。大ブタと変わらないもん。こんなんで大ブタ兄さん馬鹿にするこいつの神経おかしいわよ。

ふぅ、キャラが迷走する前に落ち着きましょう。

「てっきり木を切って建てたのかと」

「そんなこと出来るわけないだろ。やったこともないのに」

やめてください。急に現実的なこと言わないでくださいよ。さっきまで物語の世界だからと言ってた僕が恥ずかしいじゃないですか。

「そ、そ、そうですよね。ハハ…いい家ですね」

「いやぁ力作だよ。どうだい少し入っていk」

「結構です」

兄達は頼りにも参考にもなりません。もうどうでもいいです。

「僕まだ家ないので急ぎます」

「お、おう。そうかまた来るといい」

行かねえわアホ。


さてと、乱れた情緒を戻して改めて自分で家をどうにかするとします。兄達は多分いづれ野垂れ死にそうですので放っておきます。厳しさではありません。優しさです。

無難に考えてちゃんとした木で作られている木造建築が1番安定的かと思われます。森なので資源は沢山ありますしね。え?木じゃなくて他の素材の物でって?バカ言いなさんな。そんな技量はありません。

てことで、いい立地を探します。


5分後


私は見つけてしまいました。そう、木 ではなく完成されている空き家を。

「誰も住んでなければ住んでいいよね」

基本登場人物以外出てこないので、僕が住んでも対して問題ないのですよこれが。しかも、僕家作るって1回も言ってないのでOKです。

立派な家です。レンガ造りで屋根までしっかりと作られている素晴らしい建築物。一応中も見ましたが暖炉付き。誰かが住んでいる気配は無し。

「決定〜〜〜!」

はい、お家決まりました。レンガ造りの素晴らしいお家です。お兄様方僕は賢いようです。


それからここで暮らして1週間たったのですが、兄さん達は何故か1回も来ないので不思議に思いそれぞれの家と呼ばれる欠陥品に様子を見に行きました。すると、彼らの姿はなく殺人現場のような大量の血の跡と獣の匂いが残されていました。

「いや、グロいって。兄さん達は…ま、いいや」

どこかで復活するでしょう。知りません。


帰ってくつろいでると、ドアをノックする者が現れました。

「おい、ブタ。食わせろ」

オオカミです。

「嫌だ」

「なんだと、家飛ばすぞ」

「嫌だ」

「本当に飛ばしてやるからな!行くぞぉ〜(鼻息)」

おっと、このままでは物語の1番大事なところが見どころなく終わっていまいます。いかんいかん。

「家飛ばねえじゃねえか。ダイソン持ってきてやろうか!」

それ吸う方だよ。てか、こいつ展開早めすぎだぞ!

「くそ!煙突から入ってやる!」

「おぃぃ!ちょっと待て!1番大事な場面こんなに早く終わらせるのはまずいって!」

「登ったからな!」

「早い早い早い早い早い早い早い早い。話を聞け!何も用意出来てない」

「降りるぞ!」

「ふざけんな!物語のラストシーンを壊すな!」

「知るか!」

本当に煙突に入ったようです。普通にこのままなら食べられます。ですが、

「グキッ」

「あ、」

なんででしょう。煙突に頭から入って落ちてきたそうです。そう、頭から落下したため首の骨を折りそのまま死んでます。煙突の高さから降りてくるのもどうかと思いますが、まさかの頭から降りてくるとは…今日はオオカミ鍋です。


グツグツ…グツグツ…

「美味っ」

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