第147話 女神100人で一体の邪神をボコる

 俺は次々と女神を召喚していった。


 ちょっとせっかちな女神イスリナ、

 気位の高いお嬢様系の女神ウェルミス、

 元気で笑いの絶えない女神エーリ、

 おしゃべり好きの女神オッドレッタ、

 金髪碧眼の愛くるしいツインテール幼女神カララナ、

 猫耳の生えた獣人系女神キクラ、

 常に雷を纏っている女神クディンガ、

 露出度の高い淫乱系女神ケラ、

 身長十メートルを超す女神コトラック、

 ケンタウロスのように馬の下半身を持つ女神サダラガ、

 二つの人格が数分ごとに切り替わる女神セレア、

 人間の人差し指ほどの大きさしかない豆粒女神ソイ……まだまだつづく。


 すべて俺の転生を担当した女神たちである。


 その数はもちろん、総勢100柱。

 美しい女神たちがずらりと並んでいる様はまさに圧巻だ。

 そのあまりの神々しさに目が眩んでしまう。

 くっ、せっかくパンツ見えそうなのに……!


「どういうことよ、これ?」

「なぜわたくしがこの世界に?」

「あっ、コトラックじゃん! なんでここにー? てか、相変わらずでっかいねー」

「ここ……どこ……知らない……場所……」


 いきなり俺によって呼び出された彼女たちは様々な反応を示している。

 一方、さっきまで平然と笑っていた邪神は、


「ば、ば、ば、馬鹿なっ!? なぜこれほどまでの数の女神を召喚することができる!?」


 目を剥いて叫び、これまでにない慌て様だ。


「おーい、女神さんたちぃぃぃッ!」


 俺は声を張り上げ、百柱の女神たちに呼びかけた。

 姦しくしゃべっていた彼女たちが黙り、俺に注目が集まってくる。


「まさか、あんたがあたしたちを召喚したの?」

「一体どうやって!?」

「転生時にあなたに与えたスキルは生産系のスキルだったはずよ?」

「えっ? どういうこと? 彼の転生を担当したのはあたしだけど?」

「はい? それは私ですよ?」

「ちょっと待って! 何言ってんの? わたしが担当したんだって!」


 再び騒がしくなる女神たち。

 何だか俺を取り合っているみたいで気持ちいい。

 って、そんなこと言ってる場合じゃない。


「あんたたちを呼んだのは俺だ! 詳しいことは後で話すから、とりあえずこの邪神を倒してくれ!」


 これだけの人数がいると、説明するだけでもなかなか大変そうだ。

 なのでとりあえず後回しである。


 そこで邪神に気づいた女神たちが戦闘モードに入っていく。


「確かにあいつは倒しておかないとダメね」

「わーい、邪神だ邪神だ! 殺そう殺そう!」

「仕方がないのう……」

「しょ、正直、何が起こっているのか未だに理解できませんが……この数がいれば確実に倒せそうですね」


 大勢の加勢を得て、女神アーシアも戦う気になってくれたようだ。


「じょ、冗談ではないっ! こんな数の女神と戦えるわけが――」

「逃がさないよっと!」

「――っ!?」


 逃走を図ろうとした邪神だが、しかしツインテール幼女神カララナに回り込まれてしまった。


「え~い!」

「がっ!?」


 カララナに吹き飛ばされ、百柱の女神たちがいるまさにそのど真ん中へ。


「きゃっほーっ! リンチだリンチだーっ!」


 そうして繰り広げられたのは、まさしくリンチだった。


「ぎゃっ! ぐべっ!? ぶごっ!? あぶっ!」


 百柱の女神から次々と攻撃を喰らい、成す術がない邪神。

 完全に取り囲まれてしまっているため、逃げることすらできないようだ。


 しかも相手が邪神とあって女神たちの方もまるで容赦がない。


「とっとと消滅しやがれ、クソ邪神が!」

「きゃははははっ! 殺せ殺せーっ!」

「あははは、これ、良いストレス発散になるわねー」


 ……中には好戦的だったり嗜虐的だったりする女神もいるのである。


「……あり、得ぬ……こんな、こと、が……」


 それが邪神の最期の言葉だった。






「大丈夫そうですね。今度こそ完全に消滅したはずです」


 女神アーシアが断言した。

 さらに他の女神たちも一斉に頷いてくれる。


 アーシアは同族の方をちらりと見て、


「……これだけの女神がいる中では、さすがに異空間に逃げ込むなんて芸当も不可能ですしね……」


 ともかく、これでもうあいつが復活することはあり得ないということだ。


「それはそうと、ちゃんと説明してもらうわよ!」


 と、強い口調で俺に要求してきたのは女神イスリナである。

 仕方がない。

 こうなったら真実を話すしかないだろう。


「〈女神召喚〉スキルで召喚しました。以上!」


 端的に伝えました。


「以上、じゃないわよ!? 第一あんたに与えたスキルは、確か〈道案内(ナビゲーション)・極〉でしょ!?」


 納得がいかないとばかりにイスリナが咆える。

 そこでおずおずと手を上げた女神がいた。


「あの……〈女神召喚〉スキルなら……私が……」


 気弱な女神ヨルコだ。


「は? こいつの転生を担当したのはこのあたしなんだけど?」

「いや、だからそれは私だって」

「いやいや、だからわたしが……」

「いやいやいや、わたくしこそが……」


 俺は言った。


「全員です」

「「「……はい?」」」






 百柱の女神たちは神界へと帰っていった。

 俺がチートスキルを百個持っていることを説明すると、「あり得ないんだけど……」「前代未聞だ……」「世界のバランスが……」などと驚いてはいたが。


「取り上げられるんじゃないかとヒヤヒヤしてたが、大丈夫だったな」

『特に数の制限があるわけではありませんから』

「もし一個しかダメってなったら、もちろん俺はナビ子さんだけを残したけどな」

『……そうですか』

「今ちょっとドキッとしただろ?」

『してませんし、機械に感情が芽生えていく的な展開を期待しないでください』


 ばっさりである。

 ナビ子さんがデレる日はいつくるのか……。


 何にせよ、これで危機は去ったわけだ。

 まさしく俺は世界を救った英雄である。

 女の子にキャーキャー言われたい。


『最後は完全に他力本願でしたが』

「それを言うなら最初から完全にスキル頼みだけどな」




    ◇ ◇ ◇




 邪神の魔の手から世界を救って、一か月が経った。


 俺は相変わらず愛する嫁や娘、そしてペットと共にNABIKOに乗ってのんびりと旅を続けている。


 時に湖の奥に沈む古代神殿に潜り、幻のアイテムを手に入れたり。

 時に北の大陸に住む巨人族に会いにいき、五十メートル級の巨人と戦うことになったり。

 時に世界最大の宗教組織に喧嘩を売ったり。


 はたまた可愛い嫁たちとスキンシップをしたり。


「嫁じゃないですから! それはスキンシップじゃなくてセクハラです!」

「貴様、どこを触っているのだ!?」


 あるいは娘にケモミミと尻尾を付けてみたり。


「わーい! たーのしー!」


 ペットを餌づけしたり。


「うまうまうま!」

「美味ぇぇぇっ!」

「うまいのです!」


 天使をオリハルコン製の檻に閉じ込めたり。


「ティラ様ぁぁぁっ! これがいわゆる監獄プレイですわねぇぇぇぇっ!」


 悪魔を召喚してみたり。


「だから何でいつもいつもトイレ入ろうとしたときに呼び出すのよおおおおおっ!?」


 ついでに女神様も召喚してみたり。


「えっ? ちょっ? カルナさんっ?」

「特に用事はないけど呼んでみた」

「用がないなら呼ばないでくださいよ!?」


 ナビ子さんの身体として作った魔導人形をナビ子さんが全然使ってくれないので、仕方なくラブドールとして使ってみたり。


『……』




 とまぁ、こんな感じで異世界を満喫しているわけだが。


 ……あれ、おかしいな?

 異世界モノの定番と言えばハーレムなのに、何で俺、未だにラブドールで自分を慰めてるんだ……?


『いいえ、マスター。すでにマスターはハーレムをお持ちかと』

「え? マジで? どこに?」

です』

「彼ら……?」





「ご主人様ぁぁぁっ! 散歩に連れてってくださぁぁぁいっ! わんわんわん!」

「ああっ、愛しのカルナ君っ! 早く僕と合体しよう!」

「カルナくぅぅぅんっ! また君に打擲されにきたよおおおおおっ!」





「また出やがったぁぁぁっ!?」


 アルク、紫苑、そしてミカエールという変態どもだ。


『すでに三人もいらっしゃいます』

「全員男だろうが!?」


 断じてこれはハーレムじゃねぇ。


『では変身魔法で女体化させてみては?』

「そういう問題じゃないだろ」



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ここで完結となります。

最後までお読みいただきありがとうございました。


そして現在、GAコミックさんにて漫画版が連載中です。

ピッコマさんなどで読むことができるので、ぜひ読んでみてください!

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転生担当女神が100人いたのでチートスキル100個貰えた 九頭七尾(くずしちお) @kuzushichio

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