第45話 エピローグ
「というわけで、フィリアは今日からあなた達のパーティーに入る事になったわ」
「「「はい???」」」
魔王事件の次の日の昼、退院したフィリアを連れて、リレイがウィルト達の部屋に来て開口一番、そんなことを言うものだから、ウィルト以外の三人娘は頭に疑問符を浮かべるしかなかった。
そして三人にまだ説明せず、無論了承など取っているはずもないウィルトは逃亡するべく足を強化するが、すかさずサーシャに拘束呪文を掛けられ足が床から離れなくなる。
「フィリアは前いたパーティーでも問題が多かったから、元々次の受け入れ先探してたのよ、でも本当に助かったわ」
リレイ部長がトドメの一撃。
「まさかウィルトの方から受け入れを申し出るなんて」
三人娘が一斉にウィルトへジト目、フィリアと同じ剣士のエリカは特に憎しみを込めた目で見て来る。
会心の一撃にウィルトが恐怖で嫌な汗をかく。
「フィリアも希望してるし両者合意の元による編成なら言う事なしだわ、じゃあこれから五人パーティーとして頑張ってね」
それだけ言い残してリレイ部長はさっさと退室。
四面楚歌のウィルトが視線で助けを求めるもバタンと締まるドアに必殺の予感で魂が抜ける。
「「「弁解は?」」」
三人娘に睨まれウィルトは恐縮しながらあとずさる。
「いや、だってほらフィリアは友達だろ? うちでちゃんと経験積んでもらってさ、それに強いじゃんフィリア、絶対役に立つから」
しどろもどろに言い訳をするが通じるはずもない。
「そんなにこの牛剣士が欲しかったのかしらゲス勇者?」
「剣士があたし一人じゃ不服? ヘタレ勇者?」
「ボクはいいんだけどね、ただ一言も無くってのはね、それよりフィリアを入れるのに他意はないんだよね? エロ勇者?」
「た、他意って?」
「私はあるぞ」
「え?」
ウィルトの体をぐいっと引き寄せ、フィリアはその腕に抱きつく。
「今日からウィルトは私のモノだ」
ウィルトに対して素直になるという決意の元、フィリアは完璧にデレていた。
満面の笑みでウィルトの肩に顔を置いて甘えている。
「おいフィリア離れろよ」
などと言いつつ女の子に抱きつかれ悪い気はしない、ウィルトは抵抗もせずフィリアに右腕を預ける。
そしてフィリアは固まる三人娘に尋ねる。
「ん? 貴様らはウィルトと恋仲か?」
三人が黙り込むのを確認して満開の笑み再び。
「では私がウィルトに何をしようと自由だな」
ウィルトにアピールするように、フィリアはわざと右腕を豊かな胸に挟んで、それに反応してすぐクロエがウィルトの左腕に同じ事をする。
「こ、恋仲じゃないけれど、ウィルトはボクの幼馴染だ! 勝手な事は許さないぞ!」
「え、クロエ?」
今度はエリカが正面から抱きついてくる。
「フザケんじゃないわよ! ウィルトはあたしのえーっと、えーっと、何かしらなんだからあたしの許可無く恋愛は禁止なのよ!!」
「何かしらってなんだよ!? ぐえっ!」
突然ウィルトの首に背後から光の鎖が巻き突き、一気に引き倒される。
奪い取られた三人は光の鎖の端を持つサーシャへ向いて、すぐにウィルトを取り戻すべく追いかける。
「バカ言ってんじゃないわよビッチ共、ウィルトは出会った時からアタシのオモチャなんだから所有権はアタシにあるに決まってるでしょ?」
「待てウィルト!」
「ウィルトを返しなさいよ!」
「ウィルトはボクのだ!」
「スレンダーな私に追いついてみなさい駄肉共!」
リビングを走り周るサーシャに引きずられるウィルト、そしてそのウィルトを追いかける三人の少女。
首を絞められ意識が落ちる中、最強の勇者ウィルトは思った。
これからは三人娘では無く、四人娘に振り回される日々になるのだろうと。
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角川スニーカー文庫から【スクール下克上第1巻】発売しました。
勇者派遣会社セイバーグループ 鏡銀鉢 @kagamiginpachi
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