第44話 エピローグ


「ヨッシ―、早く早くー」


 ゴールデンウィーク三日目、義徒は約束通り、ボクシングの試合に勝った朱美に付き合い、今日は遊園地で一緒に遊んでいた。


 アロンが死んだことであの日以来、若者の失踪者は激減し、事件件数は元の数に戻った。


 催眠魔術のおかげで朱美もあの晩のことは何も覚えていないようすだった。


 山下とロベルト先生に関しては、ロベルト先生の死体を魔術協会が回収したことで、二人とも行方不明ということで処理された。


 そういった裏の仕事は義徒とはあまり関係ないのため、後で協会からの報告を受けるだけで済んだが、あの後の義徒は正直、そういった裏方の仕事を全部やったほうがまだ楽な事態に陥っていた。


 やはり最期の決断について、ボルファーは満足だったらしいが三人はご立腹の様子で、ティアにはたっぷり一時間お説教を喰らうしアリアは今度はあんなことにならないようにと地獄の修行をさせられ、ファムとは休む暇もなく、夜を徹して格闘ゲームの相手をさせられた。


 その上、ボルファーもようやく自分を認めたかと思いきや、未だに名前ではなく小僧と呼ぶし頼みも全然聞いてくれなかった。


 だから今は、無邪気に笑う朱美とのほとんどデートに近い時間を思う存分に満喫することにした。


「Cランクソルジャーにもなったしな」

「ちょっとヨッシ―早くー」

「おお、悪い悪い」


 遠くから子供のように飛び跳ねて自分を呼び出す、可愛い幼馴染のもとへ駆け寄ると、朱美は義徒に抱きつき、頬に軽くキスをした。


「へへ、ヨッシ―、最期のシメは観覧車だからね」


 頬を紅潮させて慌てふためく義徒はこの時、その最期の観覧車の中で朱美が自分に愛の告白をしようと計画しているなどとは知る由も無かった。

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現代召喚術士はシルフ、ウンディーネ、ノームの三大美少女精霊と事件を解決する 鏡銀鉢 @kagamiginpachi

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