発声のトビウオ
シヨゥ
第1話
発言するのは嫌いだ。あがり症で、気にしいで、発言するのが辛い。
集まる視線は僕を責めているように感じられる。
「そんなことない」
「お前は何を言っているんだ」
「そんなこと分かっている」
「時間の無駄だ」
「早く黙れ」
そんな幻聴が聞こえるような感覚で腹の底がひりつく。
それでも言葉を選んで、つっかえながらも声を出し続ける。そうしなければ出番を次の人に回せないから。いつまでも僕の番が続くから。
声を出すまでは何を思われるのだろうかという不安が、声を出し終えたあとも同じ不安が重くのしかかる。
その不安から開放されるのはその幕間。声を出しているその一瞬だけ。僕は不安の海を泳ぐトビウオなのだ。
不安の海から跳ね上がる。その一瞬だけは何もかもから開放される。ただその最中は無防備で。その一瞬を彼らは狙っている。不安に沈む最中に僕を殺しに来る。
オーディエンスは海鳥だ。勝てるわけもなく僕は不安とともに殺されるのだ。だから発言するのが嫌いなのだ。
発声のトビウオ シヨゥ @Shiyoxu
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