第100話 エピローグ
いつもより少し長いです。
―――――
俺は翌日の夜、食事が終わった後、父さんに真理香と優里奈への責任の取り方について話した。
「雫、それはまた凄いな。内妻が二人、外妻が二人か。羨ましい限りだ。しかしお前はそれでいいのか」
「……仕方ないと思う。自分が招いた事だから」
「仕方ない?そう思うなら断りなさい。そんな中途半端な考えでは相手先に対して失礼だ。
雫自身が自分の意思を以ってそうするのであればまだしも、仕方ないからそうするというのは遅からずその関係に破綻が来る」
「でも今更断れない」
「では自分で良く考える事だ。早瀬さんも東条さんも金銭的な事は望んではないだろう。
あの子達に欲しいのは雫という存在、精神的な支えだ。
だが、紗友里ちゃんや若菜ちゃんはお前が養う必要がある。その上で世界八十四か国の神城綜合警備保障の頂点に立つ自覚を持つ必要が有る」
「…………」
父さんの言うとおりだ。俺は今まで女の子の友達、幼馴染程度の気持ちでいた。だけど真理香や優里奈の事を考えるなら彼女達の支えになる人間になる必要が有る。
若菜や紗友里に対しては夫としてしっかりとあの子達の全てを面倒見る必要が有る。その上で爺ちゃんの後を継ぐ事になる。
まだ高校二年いやもう三年か。その俺がこれだけの事を将来約束する実行するという事を考えるのは荷が重すぎる。どうすればいいんだ。
あっという間に春休みになった。俺はいつもの様に爺ちゃんの所へ一人で行った。
「爺ちゃん、そう言う訳なんだ。でも俺はまだ高校生。そんな約束事を今から出来る訳が無い」
「雫。責任を取ると手紙に書いた以上、東条殿と早瀬殿の娘さんの要求は飲むしかあるまい。そしてお前が選んだ若菜ちゃんと紗友里に対しても同じだ。
それが雫の運命じゃ。逃れる事は出来ない。自分の中に受け入れるしかなかろう。最初は大変だろうがその内馴れる。まずはやってみる事だ」
「どうしても出来なかったら?」
「出来ない事を前提にしても仕方ない。やる事を前提にしてこそ、出来そうになかった時でもその大変な時を乗り切る事が出来る。要は気の持ち方だ。
雫はそういう事は得意じゃろう。今お前が有るのは天賦の才だけではない。強い気持ちで大変な事に立ち向かったからこそではないか」
「…………。分かったよ爺ちゃん。そう考える様にする」
「それこそ儂の自慢の孫じゃ。しかしあの子達の子供全員を見る事が出来るのか。老い先の楽しみが増えたわい。これは長生きしなければいかんな。はははっ」
爺ちゃんの所から帰って来た翌日真理香の家に行った。そして父さんと俺、真理香のお父さんと真理香の間で彼女の言った約束事が明記された証書を作った。
「早瀬さん、息子が至らず娘さんに苦労を掛けてしまう様だ。申し訳ない。この通りです」
父さんが思い切り頭を下げて謝った。
「神城さん、頭を上げて下さい。実は娘が会社を継がずに神城さんのとこへ行ってしまうのも覚悟していたのです。今回の事は娘と良く話し妻も納得の上でのことです。
こちらこそこれから末永く宜しくお願いしたい」
父さんが頭を上げて真理香のお父さんと握手をした。とても嬉しそうに。
「雫さん、これで今まで通り私のお弁当食べて頂けますね」
「あっいや、それは」
「雫、断る事は出来ないぞ」
それから数日たって優里奈の家にも行った。そして真理香の時と同じように証書を作った。でもこの時は爺ちゃんも同席した。
「東条殿、長いお付き合いになりそうだな」
「神城殿、これも天命。生きていると面白い事も起きるものですな」
「そうですな」
こうして俺は真理香と優里奈を外妻とする事になった。これで内妻、外妻合わせて四人の女性の夫になった訳だ。親戚一同公認の。
これで全て収まると思っていたのだが。
「雫は、もう多摩にある公立大学に行く事が決まっているの」
「若菜さん、何を勝手な事を。雫さんは本郷にある大学に行くのです」
「そうですよ。雫は本郷の…………」
「雫様のお気持ちが最優先です。三人共勝手な事を言わないで下さい」
「「「くっ!」」」
「雫様、如何しますか?」
「真理香、優里奈。俺は若菜の言う通り多摩にある公立大学に行く。真理香と優里奈は物足りないだろうから本郷の大学でもいいよ」
「駄目です。雫さんがそうなら私もそこの大学に行きます」
若菜さんと紗友里さんに取られてたまりますか。やっと約束できたのに。
「雫、私もその大学に行く」
雫とはいつも一緒にいるのよ。
「分かった。みんなにお願いがある。真理香と優里奈は法学部に行って欲しい。若菜は経済学部。紗友里は情報システム部だ。俺は理学部に行きたい」
「雫、何で私が経済学部なの?雫と同じ学部がいい」
「俺はもう覚悟を決めた。みんなと一緒に生きて行くって。だからそれぞれの将来の事を思うと今の考えがいいと思った。もし嫌なら仕方ないから好きにしてくれ」
「雫がそう言うなら」
「雫様のお気持ちで宜しいです」
「雫さんが言うならそうします」
「雫、分かったわ」
「神城君、私は何処の学部なの?」
「まどかは俺と同じ理学部」
「「「「えーっ!!!!」」」」
「だって、まどかとは友達だから」
「えへへ、嬉しいな。毎日神城君と一緒。もう私も雫って呼んでいいよね」
「ああいいよ」
他の四人が凄い顔しているけど仕方ない。
でもこれが後々…………。雫知らず。
塾へはみんなで一緒に行った。教室では周りの子が勉強もしないで五人をチラチラ見ているのが面白い。
優里奈や真理香に声を掛ける男の子も居たが、みんな可哀そうに一蹴された。前より二人共断り方がきつくなった気がする。
高校三年は勉強尽くしだった。他の五人は片手間みたいだったけど俺は合格ラインに行くまで大変だった。
でも夏休み、爺ちゃんの所には行ったけど塚原さんがおかしなことを言っていた。
「私はもう年なので引退しようと思っていましたが、五人の奥様方のお子様を見る楽しみが出来ました。引退は先延ばしします」
「五人?」
「まどか様も一緒ではないのですか?」
「いや、彼女は…………」
「雫がその気なら私も良いけど」
「「「「えーっ!!!!」」」」
まどかも恐ろしい事を言ってくれる。でも毎日の様に会っている内に……これも俺が悪い。
やがて、三年生の時もあっという間に過ぎ、俺達は無事に希望の大学の学部にそれぞれが受かった。
そして波乱に満ちた四年が…………。過ぎていないのです。
「雫、今日はねっ。あれつけると気持ち半減しちゃうから」
「雫、もういいでしょ。今日は付けないでしよ」
「雫様、そのままで」
「神城君、ねえ、しよ」
「雫さん、約束したよね。ミスっても良いって」
と言う訳で女の子達の誘いを強い理性で振り切り、四年が過ぎた。でもまだ終わらなかった。そう全員が大学を卒業した。つまり…………。
「雫、今日は思い切り」
「雫さん、ねっ、ねっ」
「雫様、遠慮しないで」
「雫、帰さないから」
「神城君、もう好きにしていいよ」
体力が消えて行く。一週間で五人。それも私が一番と受胎を急いでいる。
でっ、ついに!!!!!
「おぎゃーっ」若菜が一番。
「おぎゃーっ」紗友里が二番。
「おぎゃーっ」優里奈が三番。
「おぎゃーっ」真理香が四番。
「おぎゃーっ」まどかが五番だった。
みんな一週間以内。同じ病院だ。廊下で妻たちが本当は私が一番だったと騒いでいる。
俺は平穏に人生を送りたい。
―――――
読者の皆様、長い間本作を呼んで頂き、大変ありがとうございました。
全百話、毎日投稿させて頂きました。
如何だったでしょうか。
普通なら何も無く過ごせた男の子神城雫が出会った女の子達に翻弄される運命を描いてみました。
外見特に特徴もない男の子が、幼馴染の若菜、中学からの彼女優里奈、暴漢から救った真理香、親戚の紗友里そして同じクラスのまどかと繋がりを持って行く中で駆け抜けた高校時代を主に描きました。
でも雫の人生はここからですね。
また読者の皆様とお会いできることを楽しみにしています。
この作品と並行して下記の作品も投稿しています。読んで頂ければ幸いです。
「九条君は告白されたい。いや告白はあなたからして(旧題:告白はあなたから)」
https://kakuyomu.jp/works/16816927860661241074
面白そうとか、次作品も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします
フツメンの俺に美少女達が迫って来る。なんで?!俺は平穏に学校生活送りたい @kana_01
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます