第99話 優里奈の行動


 ホワイトデーの時、雫から貰った手紙はあまりにもショックだった。雫は私を選んでくれると思っていた。


 中学からずっと今まで彼の彼女でいた。下坂さんはただの幼馴染、早瀬さんだって綺麗だけど、私は負けていない。

 紗友里は途中から。琴平さんは選択外のはず。ならば私。そう思っていた。


 それなのに雫はお爺様の跡継ぎになる事を決めた時点で私を捨てる気持ちでいたんだ。

あんまりだよ雫。あの時子供さえ出来ていれば。


 昨日泣きすぎて顔が腫れていた。心も折れていた。だから休んだ。明日は行かないといけない。



 ベッドで何もする気にならない私は天井を見ているとお父様が私の部屋に来た。昨日の声が聞こえてしまっていたようだ。



「優里奈、どうした?」

 私は雫からの手紙を見せた。


 お父様はじっとそれを見た後、

「優里奈、落着いたら私の書斎に来なさい」

「はい」



 私は一度顔を洗ってファンデーションを付けて顔を整え、櫛を髪に通すとお父様の書斎に来た。


「お父様、優里奈です」

「入れ」



 私の顔をじっと見ている。

「優里奈、神城殿の孫の事、上手く事が運ばなかったようだな。ただこの手紙に責任を取ると書いてある。彼に取って欲しい責任はあるか」

「…………」

私は頭を横に振った。



「優里奈、一度は高校生の内に彼の子を儲けようとまでしたお前だ。その気持ちは変わっていないか?」

「はい。今でもそう思っています。彼の子がいれば…………」


「それでは話が早い。彼に責任を取って貰おう」

「えっ?お父様どういう意味でしょう」


「言った通りだよ。彼に今から私が言う事を伝えなさい。もちろん優里奈がそれでよければだが」

「はい」



 お父様は私が考えていない事を言い始めた。でもそれが出来るなら…………。




 私は翌日登校した。いつもより早い時間に。駅で待ち合せはしない。


 雫が、他の子達を連れて教室に入って来た。何故か皆笑顔だ。なぜ?


「雫!」

「あっ、おはよう優里奈」

「雫、これを直ぐに読んで」

 なんか昨日と同じ様な?真理香が凄い顔して優里奈を見ている。心当たり…………まあ確かにあるな。



 俺はまた三階に行く階段の踊り場で優里奈から渡された封筒から手紙を出すと


 雫、今日の放課後、私と一緒に来て。校門に家の車が待っている。


「えっ、これって!」

全く昨日と同じじゃないか。



 昨日と同じく授業は時間消化だ。俺も頭の中は優里奈からの手紙の事が気になった。



 昼食時、優里奈が俺に近付いて

「雫、昨日水やりの日だったけど」

「昨日あげているから大丈夫」

「ごめんなさい雫」

「優里奈、私と雫であげたわ」

「紗友里!優里奈、若菜も一緒だったから」


優里奈と紗友里が睨み合っている。怖い。




 放課後、


「雫、帰ろう」

「えっ、雫さん」

「真理香、今日はそういう約束だから」

 気になります。まさか私と同じ条件を出さないですよね。




 今日も校門をちょっとずらしたところに黒塗りの大きな車が止めてある。そして昨日と同じ様に車の前でサングラスを掛けスーツをしっかりと着込んだ男の人がドアを開けて待っていた。




車に乗って来たのは優里奈の家。

「雫来て」


ついて行くと優里奈の部屋に通された。



「雫、何故私を選んでくれなかったの。確かに私は東条家の跡取りよ。でも雫さえ良ければ私はここを継がないで雫の元へ行ったのに」

「優里奈。ごめん。でももう決めた事だから」


「手紙に責任取るって書いてあったわよね。どう責任取ってくれるの?」

「優里奈が思う事をする」


「じゃあ、雫が十八になったら結婚して」

「それは無理」




「昨日お父様と話をしました。雫の責任の取り方を」

「…………」


「雫、今の関係を大学卒業まで続けて。私と同じ大学に行って。大学を出たら雫の子を私のお腹に宿して。そして認知して。

 東条家は私が継ぐ。でもその子を私の跡継ぎとさせる。雫は東条家の役員になって貰う」


「いや、それは」


「責任取るって書いてあったわよね。今言った事を私のお父様と雫のお父様、そして雫とで証書を作って約束事にします。子供は複数人でも構いません」


これじゃあ、真理香と同じじゃないか。


「父さんに相談する必要がある」

「雫、実行して下さい。雫のお父様には私も説明します」

「いや、それは…………」

「雫実行して。責任取ると書いてありましたよね」

「優里奈」




「雫、今から湯屋に行きましょう」

「えっ?!」


「先ほど言いましたよね。今までの関係を続けるって。もう私と一緒に湯屋に行っても宜しいですよね」

「…………」



二人で湯あみした。優里奈の体は本当に綺麗だ。その後、別室に連れて行かれた。



「雫、思い切りして!私がもう良いって言うまで。雫が私を振った償いよ。それに高校卒業したら出来ても良いわよ。雫十八だもの。お父様には許可を取ってあるわ」


……………………。



 優里奈元気すぎ。




 俺が家に着いたのは午後十一時を過ぎていた。俺の両親より若菜と紗友里が、真理香と優里奈の事聞いたら起こるだろうな。どうしよう。


―――――


 真理香に続いて優里奈も!!

 雫の将来って?それに若菜と紗友里の事もまだ。


次回をお楽しみに。


この作品と並行して下記の作品も投稿しています。読んで頂ければ幸いです。

「九条君は告白されたい。いや告白はあなたからして(旧題:告白はあなたから)」

https://kakuyomu.jp/works/16816927860661241074


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る