苦しい時を支えてくれたものというのは、その苦しみを乗り越えてもなお自分にとって特別であり続ける。たとえ支えてくれたものがどんなものであっても。そういったものを、誰しもひとつは持っているのではないでしょうか。このお話は、そうした支えてくれたものへの思いや、その後の自分にとってどんな存在であり続けたかを非常に身近な題材を使って描いています。自分にとっての特別なものとはなんだろう?そうした思いを抱きながら読むと、より味わい深くなる作品です。
良くある人情噺なんだけど、珍しいのは二つ商品名のうち、片方にターゲットが絞られていること。どっちなのかは読むまでのお楽しみ。ただ、実際の地名を出す必要があるのか気になった。
苦学生だった主人公は、緑のたぬきを見て、学生時代に通ったちょっと変わったお蕎麦屋さんのことを思い出します。人が寄り添いあって生きていく、そんな様子を巧みに表現した素敵な短編でした。不勉強なもので私は知らなかったのですが、北大路魯山人のあるエピソードを知っている方は、もっと楽しめるかもしれません。