機械少女と夢日記

坂本尊花

第1話

 ミライは友達がいません、友達というのがなにかも分かりません。目が覚めたときから探しているのに、友達というのが見当たりません。

 ミライは海を渡りました、塩分濃度が高い水溜りです。しかし、どこを探しても友達は見つかりませんでした。そもそも友達がなんなのか、どこで知ったのか分かりません。私は少し心細くなりました。涙というのを流すべきか迷いました。

 何年も過ぎました、凍った水や花という機関は不思議と見飽きません。始めての友達もできました、どうやらリスという生命体のようです。私は嬉しくなって日記をつけ始めました。


 【いちにちめ ともだちができた】


 頭の中にあったことが文字になっただけで、なんだかこの世界がミライを受け入れてくれたように錯覚しました。けど、嬉しかった気持ちは本当です。

 ミライはリーさんと友達を見つける旅に出ました、リーさんというのはリスのリーさんです。毛の質感はどの生命体よりもいいのです。だけどリーさんは、私が触ろうとすると逃げてしまいます。少し、悲しいです。


 【365にちめ と、きよう?というばしょにきた】


 ミライは一つ賢くなりました、石のような何かはコンクリートというものです。誰が作ったのか分からない色々な文字も見てきました、だけど【あきはばら】と書かれた看板が何を指しているのかは分かりません。わからないので行ってみることにしました。

 ミライは人の形をしています、声だってでるし文字だってかけます。心だってあります、友達もできました。なのに、理解できません、この【まんが】というものを見ていると胸を込み上げるものがありました。いつもだったら楽しいと感じるはずなのに、苦しいです。


 ミライは、割れたガラスに映るミライをみました。肌色の無機質な金属がみえます、破損部から垂れるケーブルがみえます、そして動かない笑顔がみえます。ミライは理解しました、理解できない感情を理解しました。理解したくなかった感情を理解しました。理解してしまいました。


 【366にちめ りーさんごめんなさい】


 その日、この世界からミライが消えました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

機械少女と夢日記 坂本尊花 @mikoto5656

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ