第9話 エピローグ~少女は歴史に涙した~

 頬に涙が伝うのを抑えきれなかった。

 

「これが真実の歴史。賢王女フィヌ様。八つ当たりしてごめんなさい。あなたは何も悪くないのにごめんなしゃい。勝手に筋肉好き王女のせいでこんなことになったなんて思っていてごめんひゃい。……ぐす」


 あの後に続くのは賢王女フィヌの苦難の物語だった。

 拡散される歌と戯曲。筋肉から求婚される日々。巨人族までも自慢げに筋肉を見せに来る。賢王女フィヌがどれだけ頑張っても理解されない。しかも弟が脳筋になって国を成り立たせる制度作りまでしなければいけない。


「女性に政を任せるのが苦し紛れの措置だったなんて」


 いつかまともになる日を願って必死に戦い続けたのだろう。

 ならば不平不満を口にせず今に生きる私たちが正さなければいけない。


「賢王女……いえ同志フィヌ。私があなたの志を引き継ぎます」


『近衛騎士の正装が黒ビキニ一枚なのはおかしいと言う』

『鍛冶を捨てて筋トレに励むドワーフたちに再び槌を持たせてみせる』

『森の加護より豆の加護と宣うマッチョ弓エルフどもに自然の大切さを教える』

『筋肉のために乱獲されて絶滅が危惧されているドラゴンたちの守護者になる』

『バルクのドワーフ。カットのエルフ。バランスのヒューマン。などという分類をなくす』


 以上の目標を『筋肉をなくす方法』に書き込んで遠い先祖に笑いかける。

 

「見ていてください。筋肉に侵略されてしまったこの世界を必ず救ってみせますから。まずは公務を頑張らないと」


 果たしてリアス王女は筋肉と戦いに勝てるだろうか。

 その結末はまだ記されていない。

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筋肉戦記(裏)~勇者召喚したら黒ビキニのテカテカな人型筋肉が現れたんですけど泣いていいですか? めぐすり@『ひきブイ』第2巻発売決定 @megusuri

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