第8話 筋肉と婚約とか無理なので勇者送還しました
E月tL日
凱旋です。
魔王を討伐し無事王都に帰ってきました。歓声がいつもよりも野太い気がしますが気のせいですよね。この短期間でタケオ化が進むはずが……。
ドラ肉の影響がすでに出た?
危険です。このままで筋肉の侵略が止まらない。だけどタケオは功労者。さすがに闇討ちするわけにもいきません。
どうすればいい?
E月tq日
最悪の事態になりました。
私とタケオが婚約とかありえません。王族なので政略結婚は覚悟していました。
けれど筋肉と結婚する覚悟はありません。誰ですか決戦前夜二人で話していたのを中途半端に盗み聞きした騎士は「二人は愛し合っています」とか勝手に宣言して広めるな。
タケオもなんとか……え? なんで照れているの? 満更でもなさそうな態度はやめてください。
舌嚙んで死にますよ。……錯乱しました。結婚まで三日もあります。それまでにタケオ殺す方法を見出すか、送還魔法を開発すればいいだけですね。
簡単です。今の私なら神も殺せる気がします。
国民の祝福なんかいりません。
E付ut日
……二日でできました。人間やればできるものですね。今の私ならば勇者召喚なんかせずに単身で魔王も倒せたでしょう。それだけ真剣に打ち込みました。魔導を極めました。割と時間も超えて操作しました。魔王がこの世界から去っていくところを見れたことが大きかった。次元と世界の理を理解した。倒さないことも大切ですね。変態でしたが。
急いでタケオ送還の準備を始めます。
周囲が止めます。弟が泣きついて離れません。お前はそれでいいのかとか当たり前のこと聞かないでください。どうして私が筋肉好きになっているのでしょう。無表情なのは疲れ切っているだけです。
タケオも「本当に約束を果たしてくれるんだね」ではないんです。帰れるんだから嬉しそうな顔をしなさい。
「ここはあなたの居場所じゃないわ。私はあなたの戦いの場所から連れ去ってしまった。戻りたいでしょ。あなたが楽しそうに語ったボディビル大会に」
「……ああ。スポットライトと数多のコールが俺を待っているからな。今度はどんな迷コールが飛ぶか楽しみだ」
疲れていてかなり適当なことを言った気がしますが、周りは号泣しています。二徹はきついんです。その一心で術式を起動させます。
成功しました。最期はあっさりとフロントダブルバイセップスで帰っていきました。
疲労で身体が崩れ落ちます。筋肉との結婚は回避できました。嬉しくて涙が出ます。
どうして周りでフィヌコールが巻き起こっているのでしょう。
意味が分かりません。とにかく公務など含めてしばらく休みたい。
E付uρ日
休んでいる場合じゃなかった!
筋肉の侵略が終わっていない。どうして。どこで間違えた。可愛かった弟が野太くなってます。「お姉さま。ボクの背に乗って」じゃないです。腕立て伏せの重りにしないでください。
タケオがいなくなったのにどうして?
E付ux日
判明した。
吟遊詩人どもが歌い、騎士たちが美談に仕立て上げ、すでに私とタケオの恋物語が舞台化されている。
私が惰眠していた期間が泣き崩れたことに。私に求婚したければ筋肉を鍛えろ? 世界がどんどんおかしなことになっていく。止めなければ――
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