4. 雪、降りしきる



    ○




 今頃、あちらはどうなっているのだろうか。


 以前は心のどこかには憐れみの情があったようだが、今では悪魔の影に怯えているのかすっかりその姿を見せなくなっているようだ。



 ――とても、運が良かったと思う。


 何かの反動だろうか。もしそうなのだとしたら、それくらい当然と言ってしまっても構わないのだろう。


 例のふたりをしていたとき、偶然にも、全く同じ方向を向き、しかしながら無表情に一点を見つめている女性の姿を見つけた。


 何か、自分と通じるものを感じたのだろうか。そこは飽くまでも自分の感情のはずなのだが、よく分からないままだ。しかし、声を掛けないでは居られなかったのも、また事実だった。


 ここまでの収穫が得られるとも思っていなかったが、それと引き換えに、自分の心には今までには居なかったモノが巣くってしまったようだ。


 見上げた空、雪と風がにわかに強くなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

(1)舞い降りる雪、(2)興味深い被写体、が与えられたとせよ 御子柴 流歌 @ruka_mikoshiba

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説