アニーワンダーランド
@snackemiko
第1話アニーと呼ばれて
アニーこと堀内海斗は神奈川県伊勢山市のコンビニ駐車場でギアをパーキングに入れた。大山のふもと町の伊勢山市の天候は雪は冬でもめったに降らないが、風は強く吹き付けてくる。特に12月に入ったので、体に当たる風が冷たく身にしみる。
夜10時アニーは小腹を満たそうと思った。幸い次の訪問までにはまだ時間があった。
夜のコンビニには人気はなくてとても静かだ。アニーは車から出てコンビニに入った。良く来るのでどこに何があるかもわかる、勝手知ったるコンビニだ。迷わずカップ麺の棚に直行し、赤いきつねを手に取る。こんな冷たい風の日はこれが一番冷えた体を温めてくれる。
レジで支払いを済ませ、赤いきつねにお湯を入れる。夜勤で時間がある時は赤いきつねと決めている。夜勤のお供だ。アニーは赤いきつねのモチモチした麺をずずっと啜りながら、次の訪問の利用者を考えるふりをした。
アニーは介護士として、父が立ち上げた介護事業所、
アニーは人と話すことが好きで自分ではこの仕事に向いていると思っている。もちろん介護士は話をするだけでは成り立たない。食事介助、トランス(患者→介護業界では”利用者”と呼ぶ、つまり利用者を移動させること)、トイレ介助、お風呂介助等多岐にわたる。高齢者も様々な病状、性格の利用者がいる。主に65歳以上の高齢者だ。それでも、アニーは”国民の孫”を目指して日々研鑽中だ。
介護の道に進む事はアニーにとっては自然なことであった。なぜなら、介護士の父親、看護師の母親、そのまた母親(アニーの祖母)も看護師と言う環境で育ったからだ。アニーにとって介護の仕事つくのはごく自然の事だった。
アニーは10代のころは地元ではやんちゃで有名だった。そこそこ悪いこともした。でもパクられてはいないのが自慢だ。見た目の可愛さから女子にから近づいてきて、彼女には常に困らなかった。逆に彼女同士がケンカになって、女子トラブルには悩まされた。そんな御やんちゃから卒業して今は介護士の彼女と一緒に住んでいる。
なぜアニーと呼ばれるに至ったかは、アニーが高校生の頃に遡る。
中学時代の校則の坊主頭がやっと終わり、アニーは髪を伸ばし美容院で初めて髪を染めた。
家に帰ると、父親に「何だ、お前!アニーやん‼」と言われたのが走りである。天然パーマの明るい茶髪が父親にはミュージカルのアニーに見えたらしい。怒られると思いきや、アニーと名付けられた父親の度量が気に入り、友達にも話した。アニーの友達は面白がって、アニーと呼び出し、今に至る。
只今アニー27歳。そろそろ次の訪問の時間だ。アニーは赤いきつねのスープを飲み干した。
アニーワンダーランド @snackemiko
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