第55話 一家談笑
セイラと別れた真、いばら、黒仁は向かってくる騎士たちを真の大鎌で気絶させなが先らに進む。
「その大鎌、本当に便利ね」
「あぁ、対人戦最強の武器だからな。ただ、この世界だとそういう訳でもなさそうだ」
話している最中に三人の前に二人の騎士が現れる。真は騎士を認識した瞬間に、走る速度を上げて騎士たちに近づき、鎌を振る。
「うっ……」
「くっ、」
鎌による攻撃で、騎士のうち一人の意識を刈り取るが、もう一人はその場で膝を折るも意識は保っている。
「【ファイア・】」
「この距離で魔法は悪手だろ」
騎士は魔法を放とうとしたが、それより先に真が騎士の頭に蹴りを入れたことで騎士はその場に倒れ込む。
「……やっぱりか」
「何がやっぱりなの?」
「さっきの騎士、一撃で倒れなかっただろ?本来であればこの鎌の刃に触れれば一撃で意識を刈り取ることが出来る。けどこの世界の奴らの中には一撃だと倒れない奴がいるんだよ」
「なるほど。何か体制でもあるのかしら?」
「だろうな。たぶん魔力が関係している思うんだが……。今は考えてる暇はないな」
「そうね。今は先を急がないと。……って、お父さん、どうしたの?」
黒仁は二人が話し合っている姿を笑みを浮かべながら見ている。
「こうして二人が月影として話している姿を見ることが出来て嬉しいんだよ」
「お父さん……え、なんで?」
「なんで、か。まぁ親心と言うか、僕の我がままかな。だからあまり気にしなくていいよ。君たちが仲良くしててくれればそれでいい」
「そうなの?まぁ、仲良くするくらいなら。って、こうして話してる場合じゃないのよね」
「そうだね。先に進もうか」
三人は走りながら上に向かって行く。その途中、三人向って炎、水、風、土、四つの属性の魔法が襲い掛かる。
「二人とも、後ろに!」
黒仁は真といばらを後ろに下がらせ、自分は二人を庇うように前に出て両手をクロスさせて魔法を防ぐ。
「お、お父さん!?ひ、【ヒール】」
魔法をもろに受けた黒仁を心配し、いばらは【治癒】を発動させる。
「ありがとういばら。でも異能は止めていいよ。銃弾よりは痛くないから」
「銃弾よりは!?」
黒仁の言葉に思ず声を上げるいばら。そんないばらに真は冷静な口調で声をかける。
「いばら、前に話しただろ?トップは昔『不死者』と言われてたって」
「そういえば、そうだったわね。でも、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。ほら、この通り」
黒仁は二人の方に振りむき、体どころか服にすら傷や火傷あとが無いのを見せ、無事であることをアピールする。
「もともと持ってる頑丈さに加えて、この服が特別性だからね。魔法は初めてだったけど、何とも無かったよ」
「よく初めての攻撃を受けたね!?」
「僕はとりあえず攻撃は全部受けきってから反撃に出るタイプだからね」
黒仁の言葉を聞き、いばらは頭を抑える。
「お父さんが、私の知ってるお父さんじゃない。いや、むしろいつものお父さんってどんな感じだっけ?」
「いばら。混乱してるところ悪いが、戦闘準備してくれ」
「そうね。そういえばどこから攻撃されたの?」
「……どう考えても上からだろうな」
真は大鎌を構え、いばらは鞭を手に持って周囲を警戒する。
現在三人は城の中でもかなり上の場所に居る。だが、さらに上に向かうために現在は階段を上っている途中。
そんな三人に向かって再び四つの属性の魔法が襲い掛かってくる。
「また来たね。……このまま進むよ!」
「え、このままって、まさか!?」
「そのまさかだろうな。俺は後ろを警戒するから、いばらはトップの後ろから出ないようにしてくれ」
「分かった。お父さん、無理しないでね」
「ありがとういばら。真の言う通り、僕の後ろから出ないようにね」
向かってくる魔法を黒仁が身を盾にして防ぎながら、三人は階段を駆け上がる。
「あの、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。ただ魔法って変な感触だね。これはすぐには慣れ無さそうだよ」
「いや慣れなくていいんだけど……」
いばらは心配していたのが馬鹿らしく思えてきて、呆れたようにため息を吐く。
「……そろそろ階段を抜けるよ。真、どうする?」
「そうですね。さすがに遠距離から攻撃してくる相手を野放しにはしておけません。俺が対応するのでトップといばらは先に行ってください」
「え、真一人で行くの?」
「あぁ、少し気になることもあるからな。私情が入って申し訳ないですが、いいですか?」
「もちろんだよ。やりたいようにやってきなさい」
黒仁から許可を貰い、真は二人より前に出て、魔法が飛んでくる方へ走った。
異世界に全てを奪われた俺は裏世界の異能力者(エージェント) 影束ライト @rait0
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