⑦秘密
順番に掘り起こされていき、盛り上がりが各所で起こっていた。
そうこうしているうちに、5組の掘り起こしが終わったようだ。
「出席番号順で入っているから、順番に来て」
小松くんとは1つ違いなので、それっぽいタイミングで一緒に行く。
ちょうどいいタイミングだったらしく、1つの封筒を手渡された。
かなりガチガチに封が閉じられていて、よほど他人に見られたくなさそうである。
「どんなこと書いたか忘れちゃったなあ」
小松くんはそう言いながら、自分からの手紙に嬉しいような恥ずかしいような様子で、封筒の表裏を繰り返し見ている。
「庄太は何書いたの?」
「んわっ!…いきなり話しかけんなや」
俺だけ仲間外れにするなよおと愚痴りながら、史明は俺の手紙を取ろうとしている。
たぶん、史明だけには見せてはいけない気がする。
「見ないからさあ、この後俺ん家来てくれない?」
冗談っぽい口調…のはずなのに、その顔はやけに真剣で言葉を失ってしまった。
「ん、あー、分かった。これ終わったらね」
「よろしく」
その後は、何かあったようななかったような、あんまり覚えていない。すぐ解散になったと思う。小松くんと軽く話をした後、史明とともに彼の家に来ていた。
「適当にそこに座って」
ちょっと飲み物持ってくるわと言って、彼はその場を離れていった。
それを軽く見送った後、言われるがままその辺りに座り、ほっと息をついた。
未だに開けていない封筒の封を徐に開けていった。よくは分からないが、開けるならたぶん今だと思った。封筒の中には、丁寧に折り畳まれた一通の手紙が入っていた。
拝啓、20歳の僕へ。
初夏の温かい風が吹き、青々とした木々を照らす日差しがより一層眩しくなってまいりました。20歳の僕は、いかがお過ごしでしょうか。15歳の僕は、梅雨のどんよりした気分を抱えながら受験に向けて勉強を頑張っているところです。たぶん、大学に進学して勉学等に励んでいることと思います。20歳の自分へ手紙を送るということですが、正直何を書いていいのか分からないので、テキトーに書いていこうと思います。あなた以外、誰にも見られないので書きますが、僕は今、キャラBに対して特別な思いを抱えています。決して他人には言えない、言ってはいけない気持ちだと思います。未来の僕は、その想いをまだ抱えていますか?それとも、綺麗サッパリ忘れて別の道を歩んでいますか?返答はできないので、どうすれば良いかは聞きません。でも、もしまだその想いを大切に仕舞っているのなら、後悔のない選択をしてほしいです。15歳の僕は、まだ弱い人間です。でも、20歳の僕は、今の僕よりも強い人間になっているでしょう(だと嬉しいです)。今の僕が言いたいことはこのくらいです。20歳の僕が、健やかで素晴らしい日々を送っていることを願います。僕も頑張ります。
敬具
「大丈夫か?」
20歳の僕へ 一宮 伊作 @yuk_MT
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