⑥旧友

目的の場所には既に多くの人が集まっており、各々その当時のグループを形成していた。俺はというと、どこかの特定のグループに属していたというわけではないので、ぼんやり各集団を眺めていた。そして彼はというと、交流関係が広かったこともあり、楽しげに色んな人と会話をしている。


「古瀬くん、久しぶり」


ぼーっとしていたら、横から不意に話しかけられた。話しかけてきた彼は確か


「小松くん!」


当時より背が伸び、顔も大人びてはいたが、面影はちゃんと残っていた。クラスが一緒で、グループ活動ではよく一緒にやっていた。それでいて、一緒の部活だったので、話す機会は多かった。


「会うの久しぶりで、人違いかと思ったよ」


「ごめん、俺も一瞬誰かと思ったわ」


懐かしい旧友との再会に温かい気持ちになった。連絡は取り合っていたものの、あんまり会う機会がなかったので、会うのは数年ぶりぐらいだろうか。そういえば


「あれ、今日来れないって言ってなかったっけ?」


今朝のLINEでは、そんなことを言っていたようなと思い、スマホを開いてメッセージを確認した。やはり、来れないとメッセージが来ていた。


「あんまり行く気はなかったんだけど、例の手紙を回収するためにね」


他人に渡るのは怖いし、と軽く笑いながら言った。


「俺も半分それで来たわ。何書いたか忘れたけど、他人に見られるのはあんま良くない内容な気がするから」


僕もたぶん他人に見せてはいけない内容なするよ、と眼鏡の奥の目を細めながら笑った。こんなやりとりも何だか懐かしい。当時はよく下らない話とかもしていただけに、別々の高校になってから、話す機会がぐっと減ったように思う。文章ベースでのやり取りはしていたものの、お互い電話で会話するという雰囲気でもなかったし。


「あっ、そろそろ始まるみたいだよ」


当時の生徒会役員だった人たちが中心となり、各クラスの大きな箱を掘り返していくようだ。全員汚れても良い服装に着替えており、こんな時まで大変だなあと思った。多くが成人式の服装の中、生徒会の人たちがそういった服装なのに、妙に威厳を感じた。


「僕たちは5組だから、少し時間かかりそうだね」


掘り返す位置の半径3m前後の場所には規制線のごとくカラーコーンが並べられていった。その周りを囲むように人集りができていた。まるで、遺体の掘り起こしを見る野次馬みたいだ。まあ、そこには自分たちの分身みたいなものが埋まっているわけだが。

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