第11話
土埃が収まり。レオが二人の元へ歩いてきた。
「レオ、今何をやったのじゃ!? わしとルファスの眼でさえ何が起こったのかわからんかった」
「えっ? 魔法と気を同時にやって二人の間を抜けたんだよ。 結構早かったな。 全身も軽く強化しといて良かったよ。でも、まだまだだな」
「全身を強化しつつ、気の比重を足に多めにしたのか。 全身強化しなければ身体がついてこれなかったの。 まったく……器用な奴じゃ」
「親父が気を使う時は、全身に覆いつつ任意のところへってよく怒られたからな」
「ヨゼフの器用さをちゃんと受け継いでいるようだな。 魔法と同時となったらヨゼフ以上だがな。」
ティアとルファスはレオを見て笑った。その二人を見てレオも笑った。和やかなひと時であった。
「さて、これから森を抜け街の宿で一泊して、明日風の塔へ向かうとしよう」
(久々にゆっくり酒を飲むか)
「宿で一泊か……うまい飯あるかなぁ」
「布団でぐっすり、待ち遠しいのぉ」
各々楽しみを胸にし、森の中へ入って行った。
この森は水の神殿付近の森と似ており、スライムやウルフ、ボアなど低レベルな魔物が生息している。
宿での楽しみに浮き足立ってる三人は魔物が出ようとすぐさま対処し、今までにないチームワークで颯爽と森を駆け抜けた。
森を抜けるとそこには草原が広がり、奥の方にいくつかの風車と麦畑が見えた。
「うわぁ 風が気持ちいいなぁ。 ティアもそう思うだろ?」
「確かに気持ちいいのぉ」
ティアは片手で髪を押さえながら、長い髪とワンピースが風でなびいていた。その姿を見たレオは顔を赤らめせていた。
「ふふっ レオよ、顔が赤いぞ。 まぁ無理もない。 こんな絶世の美女はいないからのぉ」
「た、たしかに……綺麗だ……な」
「なっ!!」
レオの思い掛けない反応に、今度はティアが顔を赤らめた。
「……私は邪魔みたいだから何処かへ行っていようか?」
ルファスの言葉に二人はあたふたし、その光景を見て笑っていた。
「さて、二人共そろそろ行くぞ」
ルファスは二人を置いて歩き始めた。レオとティアは小言を言い合いながら後を追って行った。
フウリュウの町に着いた三人は宿屋を目指し、歩いていた。
「いろんな種族がいるんだな」
「この町は大きくはないが種族による偏見が少ない。全くない訳ではないがな」
「それでもいい町だな」
「そうだな」
そんな話をしている二人をよそにティアがキョロキョロしていた。
「ティア、どうしたんだ?」
「いや、この甘い香りはなんじゃ?」
「たしかに甘い香りがするな。 ルファ爺この甘い香りはなんだ?」
「あれじゃないか?」
ルファスが指した方向に屋台がありクプレと書いてあった。三人で寄ってみると、小麦粉を溶かしペースト状のものを薄く焼き、生クリームと果物を入れ包んだものだった。
「こ、これは、なんて美味そうな……」
ティアは眼を輝かせながら屋台に釘付けになっていた。
「ルファ爺、ティアがやばいからみんなで食べようぜ」
「私は甘いものは苦手だから二人で食べるといい」
ルファスは二つクプレを買い、二人に渡した。甘い香りに二人はクプレにかぶり付いた。
「うまいなこれ!」
「……なんじゃこれは……この世のものとは思えん! この甘過ぎず絶妙な甘味とその後からくる果物の酸味と甘みが何とも言えん! ……ルファ爺よ、もうないのだが……」
ティアはあまりの美味さにあっという間に食べきってしまった。物欲しそうにルファスを見つめ、渋々ルファスはティアにクプレを買ってあげた。クプレを見つめて満面の笑みを浮かべながらティアは二人の後を追った。
「ここだ。このそよ風亭は一階が食堂で二、三階が宿屋になっている。 宿をとって食事にしよう」
「まってました!美味いもん食うぞ」
中に入るとジョッキとトレンチを持った獣人の少女が慌ただしく挨拶をした。
「いらっしゃいませー!宿泊の方はあちらのカウンターにお願いしまーす」
三人はカウンターに向かうと恰幅の良い獣人の女性がいた。
「宿泊かい? 一泊一人銀貨2枚だよ」
「三部屋、一泊頼む」
「あいよ、銀貨6枚だよ。 階段上がって左一番奥から三部屋だよ。鍵に番号が書いてあるからそれを見ておくれ」
ルファスは代金を女性に渡し、鍵を受け取ら二人に渡した。。
「さて、食事にするか」
レオとティアは頷き、獣人の少女の方へ向かった。
「お食事ですね? 三名様こちらはどうぞ」
テーブルに案内され水を置かれた。周りを見渡すと結構賑わっていた。三人はメニューに目を通して各自メニューを決めた。
「すみませーん。 注文いいですか?」
「はーい。 どうぞ」
「おれはボアのステーキのセット」
「私はエールと野菜とベーコンのソテー」
「わしはクプレを5個」
「ぶはぁ クプレ5個!?」
ティアの注文に水を飲んでいたレオは思わず吹き出してしまった。ルファスも咳き込んだ。
「あの味が忘れらないのじゃ……」
ティアは眼を輝かせながら思いに耽っていた。
「食事が済んだらさっさと寝て明日に備えるぞ」
「あぁ」
「うむ」
食事を済ました三人は満足な顔をしながら部屋へ向かった。
「私が早朝起こしに行く。その後支度をし食堂で集合だ。わかったな」
「了解。飯も美味かったし、明日は万全だ」
「クプレを食し、布団でぬくぬくとは全く贅沢じゃ〜」
三人は明日に備え、部屋に入っていった。
拾われた少年と封印された力 @mioshio
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