love me

月川

LOVE ME

朝ごはんを作るため、

政宗はみんなより早く起きる。


冬の朝の冷たい空気の中、

キッチンに向った。


用意に入る前に誰もいないダイニングで

一服しようと電子タバコに火をつけた。


そのとき、

あるものが飛び込んできた。


棚の上に置いてある、

小さな銀色の缶箱。


政宗は手を伸ばし、

それをテーブルの上に置いた。


電子タバコを口にくわえたまま、

缶に手をかけた。


缶特有の金属音がして、蓋が開いた。


そこには、

無くしたと思ってたライター、

見覚えのあるタオル、

政宗と同じ色の髪の毛、

タバコの吸殻などが

入っていた。


「俺の?」

政宗は思わず声を出した。

秒が進むごとに確信に変わっていった。


全部自分のものだという確信に。


政宗の思考回路が一瞬止まる。

視覚では見えているのに、

その情報が内部までたどり着くのに時間がかかった。



「三成だ」

政宗は立ち上がり、

男部屋に向った。


ドアを静かにあけて、

三成のベッドの横に立った。


「三成…」

サンジは小さく呼びかけた。


「ん・・ん・・・」

寝返りを打ったが三成は目覚めなかった。

政宗は淑郎たちが寝てることを確かめて、


三成の鼻を指で摘んで、

クチビルを塞いだ。


15秒が過ぎた頃、

三成は息苦しさで目を開けた。


「政…宗?」

「起きた?」

政宗は三成を覗き込んだ。


「なにすんだよ、テメーは!」

三成は言って、起き上がった。


「それはこっちのセリフだ」

政宗は三成の手首を掴んで、

部屋を出た。


「なんだよ、ひっぱんな」

政宗が向かった場所は、

さっき見つけた缶の前だった。



「あッ」

三成の声。


「やっぱり、お前か」


「中、見た?」

三成は動揺しながら聞いた。



「見た」

三成の体温が上昇して・・・

顔を赤らめた。


「勝手に見んな!」

「勝手に人のものを集めるな!」

「お・落ちてたんだよ」

「ふ~ん」

政宗は三成をにらんだ。


沈黙が続いて、

政宗がそれを破った。


「三成」

クチビルが触れ合いそうな程の至近距離で、

政宗に名前を呼ばれた。


蹴りを入れられるのを予想し、

三成が防御姿勢をとった。


そんな三成を見つめて、

政宗は軽く息を吐いた。



「全部あげる・・・俺の全部をお前にやるよ」

政宗は言って、

三成をやさしく抱きしめた。


「だから、お前の全てを俺にくれ」

政宗は抱きしめたまま、

小さな声で言った。



しばらくして。

「もう・・・」

三成が言いにくそうに口を開いた。


「心も躰も、お前のものだろ?」

三成は照れてうつむいたまま告げた。



「じゃ、しよう」

「やっぱ今のなし!」

三成は政宗を殴って、

ダイニングから出て行く。


「あ~眠」

三成はニヤケながらつぶやいた。


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