500円玉に思うこと
情けは人のためならず
善因善果。
因果応報。
One good turn deserves another.
なにはともあれ、誰かに行った良いことは巡り廻って自分にもかえってくるという意味であったと思います。「情けをかけることはその人のためにならない」という意味として捉えている方もいらっしゃるようですが、「人のためだけではなく、自分のためにもなる」だそう。
まあなんとも簡単な言葉ではありますが、実際に誰かに対して無条件に優しいことを簡単にできる人って、果たしてどれほどいるのでしょう。友人や家族が相手ならまだしも、見返りなんて得られるはずもない、初対面の人に対して。もし同じようにバスでそんな場面に遭遇した時、「この五百円玉と交換するぜ!」と、私は声を上げられるのか。いや、きっと、あの日の出来事がなければ、できなかったと思います(そもそも財布の中に五百円玉がなければダメですけどね)。
電車で席を譲ったことはあります!
そんな電車で席を譲るにしたって、まずは声をかける勇気が必要ですよね。「かけようかな」「や……っぱりはずかしい」「他の人がかけてくれるかな」「かけ……あっ、タイミング……」――あくまでも私にとってしたらですが、葛藤を経て初めて、私は私の優しさを発揮できるのです。きっとこれは誰もが一度は経験してそう思ったこともあるかもしれませんが、誰かに優しいことをするためには、まず勇気が必要なのかもしれないと。そしてその勇気が優しさとなって伝染し、やがて誰かの勇気が私に帰ってくるのかもしれないですね。優しさは勇気。まるでどこぞの少年漫画みたいな言葉ですけれど。
ところで、誰かのために優しくすることは、その裏に利己的な動機があるとよく言いますよね。確かに、よこしまな――といったらなんだか言葉が違うような気もしますけれど、そういう思考を持つことが必ずしもゼロではないと言い切れません。
そもそも「情けは人のためならず」という言葉だって、そこには「きっと自分に返ってくる!」「だから優しいこと、しようね!」という意味が少なからずとも含まれていますから……うーん、もし私が「情けは人のためならず!」を座右の銘にしているとしたら、それって、「私は誰かに優しくして、それがきっと自分に戻ってくるんだって、信じてます!」みたいに捉えられるのかな、とか……なんか捻くれてますね、これ!笑
あ、決して自分のためを思って誰かに優しいことをするのが悪いことだと思っていません。寧ろその方が普通だと思います。人であれ、動物であれ、まずは我が身を大切にしようとする生き物なのかなと。生存本能といいますか。
まあ、その人の頭の中を覗いて見ない限り、利己的なのか否かを確かめることは難しいでしょう。
思考が観測されるまでは、相手を思ってやったことか、自分を思ってやってことか、二つの状態が重なった状態。なんだかシュレディンガーの猫みたく言ってみましたけど、や、違っていたらすみません。あれは量子力学の話ですものね。蓋を開けるまで猫が死んでいるのか生きているのか分からない。頭の中を覗くまで、人の思考は分からない。うーん。止めましょ。
そんなことを考えていたら、「もし世界が優しさで溢れたら」という思考に至りました。
誰もが他人に対して優しいことをする世界になったら。誰もが電車で席を譲り、誰かのために行動をして、誰かのためになるのならと、みんなが利他的になる(この時「利己的思考」は考慮しないとして)。そんな理想的で優しい世界になったとしたら。お金の価値と同じように、優しさという行為の価値が暴落して、当たり前になって、誰もが優しさを失ってしまうのでしょうか。それとも優しくすることが義務になって、優しいことをしない人は周りから白い目で見られるのでしょうか。「優しさ」の価値って、変わるのでしょうか。どんどんハードルが上がっていくのでしょうか。
そもそも、「優しさ」って、なんなのでしょう。
マ、こんな踏み込んだ本質に対する答えというのも人によって異なるのでしょうし、私は自分の答えを持ち合わせていません。(人に聞いておいて、なんてやつでしょうね笑)
例のごとく、すっちゃかめっちゃかな思考をとりとめもなく書いておいて、いったいここで何が言いたいのかと言いますと、貰ったやさしさを、いつか誰かに伝えたい、誰かに返したいなということだけです(結論)。一番はあのおじいさんにお返しできたらよかったのですけれど、恐らく二度と、お会い出来そうにないかなと。
あの五百円の優しさをいただいた時、私は、自分も誰かのために勇気を出せる人になろうと、そう思いました。
名も知らず、顔も覚えられなかったあの時のおじいさん、ありがとうございます。
あのおじいさんに、何か良いことがありますように。
そしてバスの両替機が、せめて新しい500円玉を受け付けるよう、なりますように(できればICカードも)。
藤橋のひとりごと日記 一ページ目
おしまい。
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