徒然に優し

藤橋峰妙

500円玉の勇気

*勝手ながら前書きを非公開にしました。ご迷惑をお掛けしてすみません。


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 これはある日の、五百円にまつわるお話です。


 その日、市内のバスに乗り込んで、私はまずお財布の中を確認しました。


 お財布の中には、五千円札と五百円玉と、一円玉が数枚ありました。ほっと息をついて、座席に腰掛け、耳にワイヤレスのイヤフォンを付けたところでバスが出発し、私は学校までの道のりをぼうっとバスに揺られていました。


 学校までの金額は二百円。まあまあお値段がはるなと思いながら、城下町の細道を何度も曲がってゆくこと十五分。ようやく学校に一番近いバス停に到着して、私は席を立ちました。


 毎日バスを利用するのに、定期券や回数券を持っていない私は、バスに備え付けられた両替機で、このとき五百円玉を崩そうと考えていました。

 なんと私が利用しているバスではICカードが使えません。なんてこった。たいてい県外から来る人は、毎度これに引っ掛ります。もう四年も利用しているバスですが、これは四年たっても導入されていません。

 観光地を走るバスなのですから、きっと利用客は地元の人より観光客のほうが多そうなのに。某バス会社さん、お金がないのは知っていますがどうか導入してくださいね。


 というのはさておき、話が脱線しましたが、千円札まで両替ができることは前から知っていたので、両替をして降りようと算段を立てていました。今日は確り五百円玉があることも確認済です。いつも通りだと思って、私は両替機に五百円玉を投入しました。


 ――カラン。


 その絶望の音を、聞いて欲しかった。




 次へ続く

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