第23話 おべべ、あべべ

なんか、マンガとかで主人公が重要なとこで名前を言いがちというプレイもできた。なんの感慨もなかったけど。

そろそろ終わりだろ!

けど、全然終わりは訪れなかった。

「ねえ、なんかおかしくない?」

「そうですねえ」

ハナさんも不思議顔だ。

「終わらせてやるよ」

俺の上の方から声がした。反射的に空を見る。

けど、そこには空があるばかりで、声の主がいるはずもなかった。

「ここだよ、ここ」

「えっ?」

どこだ?と思う間もなく、頭が膨張していく感覚が訪れた。痛くはなかった。ただただ頭の皮膚が引っ張られて、乾燥大豆がそら豆に一気になったようなイメージが浮かんだ。そら豆は皮を内側から破り、さらにその中から電動こけしみたいにうねうねとなにやら飛び出した。問題は、そのそら豆が俺の頭だということで、「にゃがが」と俺の口からは不随意な声が漏れていた。

びゅぽん!

俺の頭、前に傷を負って閉じていたはずのところから、男が出てきた。あの男だ。ハナさんの仲間の。

どこから出てくるんだ?とかなんだこれ、宇宙人だからか?とか疑問に思うよりもショック症状じみた感じに俺はなっていた。男が頭から出てくるという事実は、初めて味わうそら豆感覚と共に余韻を残していた。

「何しに来たの?」

ハナさんが言った。

「申請不許可だ」

男は言うが早いか、ハナさんを丸かじりした。男の口が急に風船みたいに膨らんで、ハナさんの上半身を食べてしまった。

残された彼女の下半身からはぴゅーぴゅーと赤い血が吹き出して顔にかかった。

「びゃばばばばば」

男は俺の脳天を鉄槌で殴った。俺は失神した。



『は~い、こちらが自分の同胞をすべて殺して正義漢ぶって、挙句の果てに博物館に展示されている猿。ニンゲンですよ〜』


俺は気づくと宇宙人たちの博物館らしきところに展示されていた。まだ生きている。ハムスターみたいに外からエサがくるから、それを食べているし、カラカラみたいに運動するのもあるから走ってる。

さっきのナレーションは四六時中鳴る音にアテレコしてみたものだ。

どうやら箱の前にボタンがあるらしくて、それを押すと流れるから、説明コメントだろうと推測した。

だいたいこんなことを言っているのだろう。

宇宙人たちはヘンテコリンな見かけをしていた。というか、いろいろな形をしていて、統一性がない。けむくじゃらだったり、アメーバだったり、人型、動物型のかわいいのもいた。

気づくべきだった。

人間は善くないね、という価値判断を最初にしている連中なのだ。

善悪の枠組みがあるということで、人間と似たようなことをするということだ。


『馬鹿ですね〜。人間のいなくなった地球は美味しく我々が再利用のリゾート地にでもしてあげますよ〜。宇宙法に則り、現地人に判断させてあげるなんて、なんて優しいんでしょう!コツは馬鹿に判断させること!これに限ります!』


今では幻聴かどうかもわからない。

なぜなら異常行動が出始めているから。

オデコは壁にぶち当てすぎてザラザラだ。

でも、止めることができない。

動物園で異常行動する動物の気持ちがわかったぞ。

ニヤニヤしてみる。

ニヤニヤ、ニヤニヤ……。


『ニヤニヤして生きていくしか彼には残されていません!さあ!みんなで見守りましょう!たまにはオナニーの一発もみられますよ!見世物としては悪くな〜い!』


おべべ、あべべ……。

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