最終話 巡る

 ある港町の学校に。


 俺は転校することになった。


「はじめまして、秋村真一あきむらしんいちっていいます」


 親の急な転勤で。

 高校入学と共にこの街に引っ越すことになった。


 すでに進学が決まっていた地元の学校からも離れ、編入措置をとられて引っ越し先から近くにある学校に通うこととなった。


 昔はもっと田舎だったんだとか。

 でも、今じゃそんな話すら信じられないほどに栄えている。

 店も人も多く、どこで何をするにも何不自由ないそんな街。

 特に学校周りには施設が多く、遊ぶには困らなさそうな場所だ。


 ここで三年間を過ごすのかと思うと、ワクワクする気持ちと緊張で胸が高鳴る。

 クラスメイトも皆、落ち着いた雰囲気だけどこれから誰と友達になって、誰と過ごしていくのか。

 それにこの中に、将来俺と付き合う彼女がいたりなんて。


 そんなことばかりが頭をよぎりながら。


 挨拶を終えるとこれからクラスメイトになるみんなが一斉に俺を見る。

 まあ、転校生なんて珍しいのだろう。

 少し気恥ずかしくなりながらも俺は案内されるままに席に向かう。


 一番後ろの窓際の席。

 外の風がきもちよく吹き込むこの席で俺は、今日から新しい日々が始まる。


 地元もよかったけど。

 こうして知らない人ばかりの土地も悪くない。


 そう思って机の中に教科書を詰めていると視線を感じた。


 隣からの視線。


 顔をあげるとそこには、綺麗な女の子の姿が。

 実に綺麗だ。

 可愛いと綺麗のいいところを両方含んだその容姿には全くの隙がなく、大きな瞳は俺を捉えて離さない。


 そして、彼女はクスっと笑う。

 何か変なことでもしたのか、それとも服装が乱れでもしているのかと自分を見返すも何もなく。


 どういうことだろうと不思議に思いながらももう一度彼女を見ると。


 どうしたものか、彼女のみならずクラスメイトが皆。

 一斉に俺の方を見ていた。


 先生も、前の奴も、その奥にいる奴もみんな。


「え……」


 やっぱり俺が何か注目を浴びるような変な恰好でもしてるのではないかと、慌てて服装を確認するがチャックがあいているわけでもシャツが出ているわけでもなく、寝ぐせだって多分大丈夫なはずで。


 これはなんなのだと、もう一度だけ隣を見ると今度は彼女だけが。

 隣の女の子だけがまた俺の方を向いていて。


 そしてまた、くすっと笑って、俺に言う。

 慣れた様子で、ためらいもなく、真っすぐ俺を見ながら。


 言う。


「ひさしぶりだね、真一君」




 ~ fin ~


 あとがき


 まず、完結までお読みいただきましたみなさま、本当にありがとうございます。


 ホラー小説は短編でいくつか書いたことがありましたが、本格的に連載となるのはこれが初めてのことで、どうなるかと毎回ハラハラしながら書いていましたが無事書き終えることができました。


 元々、ラブコメ恋愛とホラーを掛け合わせてみたいという好奇心から始まった企画でしたが、恋愛の暗い黒い部分というものを私なりに描いてみました。


 そしてコンテストのランキングでずっと一位を獲得させていただくまで応援いただけたこともあり、私にとっても今後に繋がる作品になったと感じています。


 最終話はもっとあれこれ書こうと考えてましたが、終わりこそ語りすぎず、くらいがちょうどいいかなと。


 いつもは恋愛やラブコメばかりで読者の方々も戸惑われたかと思いますが、たまにはこういう趣向のものも挑戦したいと思うので、今後ともよろしくお願いいたします。


 コンテストの結果は出版社の方の審査次第ですが、ランキング一位の作品として、どのような結果が出るか楽しみに待ちたいと思います。


 ここまで沢山の応援をいただいたので、良い結果をご報告できるよう、他作品も含め最後までコンテストを走りきります。


 本当に二ヶ月間ありがとうございました。


 これからも明石龍之介の作品をどうぞあたたかく見守ってください。


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俺の知らない幼なじみが、知らないうちに彼女になっていた件 明石龍之介 @daikibarbara1988

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