第2話 要は幽霊退治
「さ、やりますわよ」
「え?やりますわよって俺も?」
「当たり前ですわ!あなたがやらずに誰がやるんですの!」
「まって!まって!」
「なんですの!」
「俺!幽霊ダメ!」
「…は?」
今までのちょっと怒ってた顔が一気に冷めて、真顔。
というか無表情になった。
モンスターとは話が違うじゃん?
だってあいつら突然現れたり、寝込み襲ったりしないじゃん!
「まって、待ってくださいまし、つまりあなたは除霊には…」
「すこぶる向いてない。」
「最っ悪ですわ!なんで今まで生きてこれましたの!」
「俺が知りたい!」
「兎に角!後ろのソレは良い奴ではないんですの。
どの道除霊は必要ですわよ」
「わ、わかった。早くとって…」
「なんて情けない男ですの…これが私のバディなんて…」
「え?なんて?」
「なんでもありませんわニートは黙って見ていなさい」
よっしゃ、これでちゃちゃっと除霊してもえらえる、と思ってたら。
「で、ソレが現れたのはいつからですの?」
「え?さっきだろ?」
「こんな年季の入ったのがついさっきなわけありませんわ」
「それってずっと俺についてたってこと…?」
「そういう事になりますわ」
朝起きるところから、飯、風呂、ベッドまでこいつとずっと一緒だったってこと?
今さらながらに寒気がしてきた。
「ま、考えないことですわ。
でもそうなると困りましたわね、
除霊にも手順がありますの。
ソレを呼び出すに使ったモノ、現世にしがみつく理由の特定。
そしてモノを返却し、還ってもらう。
これが一通りの手順ですわ。」
「理由の特定なんてどうやって…」
「大体ソレがついていく人物にゆかりがあるものですわ。
つまりあなたに憑いているソレはあなたに何か用事があるとうことですわ」
「え、俺なんか恨まれることしたってこと?数えたらキリがないんだけど」
「あなた仮にも前世は勇者だというのに何をやりましたの」
ジトと軽蔑を含んだ視線を感じる。
日本は嫉妬まみれの国だぞ?恨みを買わずに生きる方が難しい。
「それを差し引いたとしてもニートのあなたに嫉妬する部分なんか一ミリも感じませんわよ」
なんで口に出してないのにばれてんだよ。
「あなたが考えることなんて、家畜の思考を読むより簡単ですのよ。
話が進みませんし、さっさと体だけでも動かしてくださいまし」
それから俺は来た道を戻って結局自分の家を捜索することになった。
けれど何を探せばいいのかさっぱりな俺からすればいつもと変わらない、いつも通りの俺の家だった。
「なぁ本当に俺の家に何かあるのか?」
「わかりませんわ」
「は?!わかんねぇの?!」
「話を最後まで聞きなさい。わかりませんけど、一番可能性が高いのはあなたが長く生活しているここかと思いましたの」
けど違いましたわね。と頭を悩ませている。
もしかしてこいつもまだ新米の部類なのか?
「人を疑ってる暇があるなら記憶でも思い起こしてくださいまし」
「そうは言われてもな…意識があるのは最近からなんだ。
大きなことで言えば過去に親と車に乗っていたら大型トラックと衝突して病院に運ばれたらしい」
「大型トラック…?その相手の運転手、どうなりましたの?」
「その人は飲酒居眠り運転してて懲役12年で…そういえばそろそろ出てくるころだな」
「その人、会いに行きましょう」
「嫌に決まってんだろ!」
「何故ですの!」
「何故ってお前、両親死なせた人間に会いたいなんてどうかしてるだろ!」
「あなたそのころに転生したんではないのでしょう?」
「だーッ!そんな簡単な話じゃねぇの!両親だぞ!」
わからない、という顔をされてはたまったもんじゃない。
ドライすぎるだろ。こいつ前世悪役令嬢なんじゃないか?
……流石にないか。
転生を繰り返した出来損ない勇者はお役御免かと思ったら次は幽霊退治! @asasegawa1215
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