11
今日も今日とて、俺は朝の王都を駆け抜けていた。入学から1ヶ月間は頑張って早起きしていたのだ。しかし、学園生活に慣れていく内にほんのちょっとだけ、弛んでしまったのだ。
後ろからレイドの足音が段々近付いてくるのを感じる。
「おーーーい、ロアン!今日も寝坊か?」
「お前もな!」
「今日の俺は寝坊では無い、遅刻だ!!」
「つまり?」
「朝方から勉強していたら凄い時間になっていてな、気付いた時には即行で支度して駆け出していた。」
「1組は大変だなぁ。」
「なんだ、今更負け惜しみか?」
「違うわボケ。」
「5組に落ちたボケに言われたくないね。」
駄弁に戯れながらも、お互いに全速力で校舎を目指す、何とかギリギリ間に合いそうな予感を胸にして。
「おはようございます、レイドさん。」
「アインガーナ様、おはようございます。」
ギリギリ定刻前に駆け込んだ1組の教室内で、自分如きに声を掛けてくれるアインガーナ様の心遣いをヒシヒシと感じる。これもホウ先輩がこの御方に自分を紹介してくれたお蔭なのだろうか。そうだとしたらあの人には頭が上がらない。男爵家出身の分際で王族の方とお近づきになれるなど本当であれば有り得ない話なのだ。
まぁしかし、あんまりあの先輩と話した事はないのだが。
「あぁ、そういえばレイドさん。」
「何でしょうか?」
「編入生の事知ってますか?どうやら今日、このクラスに配属されるらしいのですけど。」
「この時期に編入生ですか?珍しいですね。」
「やっぱり初耳でしたか。編入生が来る事は数日前から皆知っていたのですが。」
「うっ…い、いやぁでも楽しみですね。どんな方何でしょうね?編入生。」
このクラスでこの御方しか自分と会話してくれないのを気にしつつ、再度質問する。
「何やら公国の姫君ということ見たいです。」
「公国の姫君ですか。…あぁ、なるほど。」
「えぇ、きっと避難してきたのでしょう。公国は今、魔王軍に半ば侵略され掛けていますからね。」
公国、スパン。ここサクメンから少し北に位置する小国だ。勇者を派遣した帝国の隣に位置し、魔王軍の本拠地があると予想されるデール山脈からも近い。
現在は帝国攻略の足掛かりとして、周囲の国々と共に魔王の進行を受けている。
「しかし、どうしてこの国に。」
「恐らく、ホウ=ウィンチの影響でしょう。」
「ホウ先輩?」
「えぇ、サクメンにホウ=ウィンチ在り。国外の方々とお会いした際によく言われる言葉です。」
「あの人って外の国にまで名が知れ渡ってるんですか!?」
「はい。この前も数日間、勇者殿の援軍に駆けつけ大きな戦果を上げた見たいですよ。」
「へ、へぇ………。」
やっぱり凄いな、あの人。
「さぁ、もう時間ですよ。席に着きましょう。」
「はい、それでは。」
「スパンから来ました、メイシア=スパンです。色々と分からない事だらけなのでお教え頂けると幸いです。これからどうぞ宜しくお願いします。」
(へぇ、こりゃ驚いた。カッカッカッおもしれぇ。)
…綺麗な銀髪と、ブルーの瞳。凛とした美しい顔立ちに、華奢な体が壊れそうな程大きな胸と尻。誰もが見惚れているその美貌の中に自分は彼女の恐怖や不安をなんとなくだが感じていた。恐らく俺だけだろう、そんな感情を彼女から感じるのは。しかし昔から人の心を感じ取るのは得意だ。外した試しがなかった。そんな俺の目の先に彼女はした。先日走る馬車の中に見掛けた、俺の性癖ドストライクな美女が。
…メイシアっていうのか。
勇者が魔王を倒す世界で、生物の始祖たちが殺し合いを始めるらしい。 @guruguru99
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