シレア国長編三作目。
いつものことだが、シレア(とテハイザ)は自然が美しい。
清々しい緑に満ちたシレア、爽やかな海風の吹くテハイザが目の前に展開される。
今回のテーマは『力』の偏りだろうか。
集権と分散。権力を中央に集めるか、敢えて分けるか。
権力が一カ所に集中することで起こる弊害があるために、意図してそれを分離する。
秤の分銅をどこに置くかという問題である。
だが、時として力を合わせることも必要だ。それを教えるのは盟友テハイザ国王。
——力というものは下手に集まると厄介だが、逆に一処に集めなければならない時もある。
彼らがどのように謎を解き、どうやって問題を解決していくか、その目で確かめて欲しい。
シレアシリーズ長編三作目の本作。
今回は、冒頭から何やら陰謀の気配がむんむんしております。
さらに、想定外の現象が起こり、いつも凛としている主人公二人も体調不良、さらに隣国にも影響が出ていて、ハラハラどきどきの連続です。
そして、なんだか怪しい新キャラの登場に、この女は味方なのか敵なのか、と疑い続けながら読んでいったのですが……。
が。
いや、まじか。
……という、シレア再入国組も、そうでない読者も驚く事実が待っているのですが、そちらは最後の楽しみとしまして。
丁寧で華やかな描写と上品なキャラクターが魅力の作品。
世界観に深く浸り方、おすすめです。