心をこめて、美味しい料理を作る。それを口にする幸せが人の心を動かす。とてもシンプルだけれど、慌ただしい日々の中で忘れがちなことではないかと、この物語を読み終えて改めて考えさせられました。
主人公の穂花は、モラハラ夫に「お前の料理はまずい」と貶され続け、自分の料理の味はまずいのだと思い込まされます。そんな彼女の料理を心からおいしいと食べてくれる親友・優奈やMINATOの姿に、穂花は心を救われていきます。穂花の心を込めて作る料理は、MINATOにとって一つ一つが幸せな味そのものだったに違いなく、穂花もまた、料理を喜んでもらえることは自分自身を受け止めてもらえることと同じだったのではないかと想像します。
簡単で手軽に食べられるものが本当に多くなった現代の食卓。カット済の材料を炒めて添付のソースを絡めれば出来上がるもの、レンチンでお店レベルの美味しさが味わえる調理済の食品たち。こういう生活の中で、「自分だけの自慢の味は?」と聞かれたら、ちゃんと答えられるのか。すぐには浮かんでこない自分に、すっと青ざめます。
大切な人のために丁寧に下ごしらえをし、ひとつひとつ味をつけ、美味しく仕上げる。そういう相手への思いのこもった仕事こそが、愛情や幸せを作っていくのだと、大切なことを気づかせてもらった気がします。
本当に人を愛することを知り始めた人気アイドルと、彼との出会いで深い心の傷が癒えていく主人公。二人の心のやりとりは、とても暖かく、細やかな優しさに満ちています。ほっと安らぐ幸せがいっぱいの、素敵な物語。おすすめです。
主人公の女性は離婚調停中だ。夫に主人公が作った料理が馬鹿にされ、「不味い」、「食えたもんじゃない」と食べてすらもらえなかった。そんな毎日が続き、ついに離婚を申し入れたのだが、夫は判を押してくれなかった。弁護士で友人の女性の父の紹介で、セキュリティ万全の家に引っ越すが、そこで隣の男性がアイドルグループの一人だと知ってしまう。口止め料に、「好きなことしてやる」と言われた主人公は、思わず、「自分の料理を食べてほしい」と願い出る。
夫のせいで自分の料理に自信がなかった主人公だったが、アイドル男性は主人公の料理が「美味い」と言って気に入り、毎日食べてくれるようになる。
しかし主人公は、相手が人気急上昇中のアイドルだったことから、自分の存在が邪魔にならないようにと、一歩引いて応援していた。
ところがある日、夫とアイドル男性が鉢合わせして……⁉
果たして、主人公は無事に離婚できるのか?
そして男性が所属するアイドルグループの行く末は?
これを読んだら、きっと誰かとご飯が食べたくなる!
空腹厳禁の、アイドルとの禁断ごはん!
是非、御一読下さい。