優しさ!ホッと一息、思いやり汁を!

アロハ天狗

優しさ!ホッと一息、思いやり汁を!

20xx年、世界は大災厄に包まれ、不毛の荒野と化した!


だが…人々は生き残っていた!


「アワワ…」

ボロ布を纏った老人が荒野を必死に走る!

「ヒャーーッハーーー!!待て待てジジイーーー!!」

そこを無法改造三輪バギーで追い回すモヒカンのならず者たち!その数二名!


「ギャッハッハッハー!この荒廃しイネや小麦も育たない世界ではもはや金や芸術に一切の価値はなくただ保存食だけが価値を持つぜ!だが缶詰や乾パンは予想外にも十分に潤沢なストックがあるもののそれにはみんな飽き飽きしており暖かさと旨味たっぷりのインスタントカップ麺が特に高い価値をもっているのだが競合他社製品は今なお解明されていない不思議な理由である日突然世界から消滅してしまったので東洋水産製のカップ麺をみんな血眼で追い求めているって寸法だぜ〜!おいジジイ!お前らが持っているのは…あの…赤いきつねだなぁ〜!?」


「アワワ…」


「ヒャハハ…俺たちはあの方、あそこに見える塔に棲む荒野の支配者…レッド・フォックス様が配下なんだぜぇ〜!?過度に残酷な目に遭わない内に、その赤いきつねを俺たちに適正価格、いや、適正価格の三割り増しで売った方が身のためだぜ〜、ギャッハッハッハ!レッド・フォックスさまに唯一楯突いていた、あの偽善者ヤローも行方しれずになって久しいしよ〜、ギャハハ!この世界に残っている赤いきつねの8割以上はもはやレッド・フォックス様のものなんだよ!赤いきつねは鰹節と昆布のだしを主に利かせた風味豊かなつゆに、 コシのあるうどん、味のしみた大きなお揚げが自慢の手軽に作れて美味しく、栄養も豊富な完全食品だからよぉ~~、レッド・フォックス様が独り占めしたくなるのも納得だぜ!」


「アワワ…」


その時、荒野の果てから現れる一人の肩パッド革ジャン姿の男!

「お、お湯…」


「なんだぁ、てめぇ〜!?邪魔しようってのか…?いや待て見てみろ相棒!ギャッハッハッハァ~、こいつ随分弱ってやがるぜ!もう何日も飲まず食わずみてえだ…!」


「お、お湯…」


「チッ、しかたねぇな、マルちゃん正麺でも食わしてやるか!話はそれからだ!レッド・フォックス様は赤いきつねだけは独占するものの、それ以外のカップ麺や保存食は俺たち配下や周辺の避難民に潤沢に分けてくださるからよ~~~、生麺のようななめらかさと弾力のある麺に旨味のあるスープの組み合わせが魅力のマルちゃん正麺を食って回復したらコイツも過度に暴力的にならねえ程度に痛めつけ甲斐が出るってもんだろ!相棒、魔法瓶を出しな!」

「おうよ!てめえ、何味を喰らいたいんだ!?」

「こ、香味まろ味噌…」

「アワワ…」


しばらく後!

東洋水産のマルちゃん正麺の生麺のようななめらかさと弾力のある麺に旨味と栄養あるスープで身も心もすっかり回復した男はモヒカンたちに言い放つ!

「おい、貴様ら…その老人をどうするつもりだ」

「知れたことよ〜〜!コイツが持っている赤いきつねを全て相場の三割り増しで買い取って、最寄りの村までこのバギーで送り届けてやるのさ、ギャハハ!」

「そうか…なら見過ごしてはおけんな…お前たちの相手には、3分あれば十分だ」

男は、魔法瓶のお湯を懐から取り出した緑の容器に注ぐ。

「ア…!俺たちの魔法瓶…!テメェいつのまに!返しやがれ!」


モヒカンたちが腰にぶら下げていたナイフを構え、男に殺到する!万一のことが起こらないように、刃の部分はゴムでできた威嚇用ナイフである!

「ギャッハッハッハー!!このゴム製ナイフで今まで威嚇されなかった相手はいねぇぜ〜〜!」


だが!


「ドリャー!!」


男が過度に暴力的でない動きで2分半ほどかけてモヒカン達を制圧する!

「な、なんだ、コイツ…!全く痛くはないし怪我もしてねえが強すぎる、俺たちじゃ歯が立たねえぜ!」

「クソ、帰ってレッド・フォックス様に報告だ!なんてこった、始末書は免れねえぜ!」


モヒカンたちは慌ててシートベルトを締めると、無法改造バギーに乗り込み退散していく。


「アワワ…」

男の凄まじい戦い方に腰を抜かした老人に、男が手を差し伸べる。

「もう大丈夫だ」

「アワワ…その拳法…肩パッド…あ、あなたはまさか…かつてレッド・フォックスに唯一立ち向かったというあのグリーン…」

ピピピピピピ!

男の肩パッド型キッチンタイマーから電子音が鳴る。

経ったのだ、3分が、今…!


「話は後だ、爺さん。今は…緑のたぬき天そばを食べる時さ」

「アワワ…」


そして老人は、男が緑のたぬき天そばを食べるところを、最後まで見続けていた…


(おわりです)

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