時を溶かす人々

Tacey・Ocean

時を溶かす人々。

彼らは時を溶かし、きんを産み出す。生きる為だ。

時は溶かせば金になる。そう教えられたのだ。時を溶かす人々に。



春が終わる頃からか。もうちょっと前かも知れない。初めて時を溶かしたのは。

ドキドキしながら受け取った。小さく光ったその金は、熱くたぎったものだった。


夏の光が突き刺さる。辛く苦しく時溶かす。戻らないと知りながら、早く終われと今日思う。

疲れた心で受け取った。黒く大きなその金は、重く重いものだった。


秋の風が吹く頃も。変わらず時を溶かしては。変わらぬ金を産み出した。

気づけばさっき受け取った。羽ばたき飛んだその金は、軽く虚しいものだった。


冬の寒い日が続く。溶かす時が無くなれば、金を眺めるだけだった。

今も手元にあるだけだ。使う事もできなくて、残りの時が崩れゆく。



僕らは時を溶かし、きんを産み出す。何の為だ?

時は溶かせば金になる。それしか教わってこなかった。時を溶かす人々に。



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